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桃瀬、方針を決める

 戦闘を行った日から数日が経った。

 本日、再び皆が会議室に集まり、今後の基本方針を決めることになったのだ。

 高藤桃瀬もまた、パーティーメンバーと共に会議室へとやって来ていた。


「む? まだ1班が来てないな」


「そろそろ時間よ?」


 中井出勧の言葉に元道真廣が答える。剣道部の彼女は時間にルーズな1班にイラッと来ているらしく、組んだ腕の右人差し指で左の肘上をとんとん叩いている。


「あいつら魔王倒すつもりも無いみたいだし、自由行動してるんじゃないかな? 真廣さんもだけど俺もあまり待つの好きじゃねぇし、初めていいんじゃないか?」


「そうねぇ。どうせ男ばっかの役立たず組だもの、放置でいいと思うわ」


 桜坂美与が珍しく毒を吐く、この世界に来てから彼女は少しずつ極悪さというか、毒のある部分を見せ始めている。女性優遇、男性蔑視が目立ち始めたのだ。

 御蔭で天音達のパーティーも時折ぎくしゃくとしている。


 それだけじゃない。基本急造のパーティーなのだ。

 そのおかげでどのパーティーも脆い部分が時々顔を出す。

 桃瀬のパーティーも例外じゃなかった。


 西瓜の卑屈さと稲葉の気の強さ、楽観的過ぎる涙亞と廚二病の痛い発言で徐々に溝を作りつつあるロア。一緒に来てくれているセシリアもこのパーティーで大丈夫だろうかと桃瀬に何度か忠告をして来ている。

 戦闘面でこそ協力は出来ているが、正直一抹の不安がない訳ではない。


「そうだな。そろそろ始めよう」


 勧は時間を過ぎても来る様子の無い1班を放置することを決めて、他のパーティーを見る。

 1から6まであるパーティを班分けし、何故か俺ら1班な。と1にこだわった坂上たちを1班にして、自分たちの班を2班、攻略組になる桃瀬の班を3班。天音達の班を4班、スポーツ組を5班、待機組を6班として呼びやすくしておいたのである。


 なので、今来ているのは2から6班。

 今後は全員ではなくリーダーだけ集まるようにしてもいいか。と思いながら勧は羊皮紙を配る。


「これは?」


「この国周辺の地図だ。といってもこの国の領土しか書かれてないけどな」


「なんでまた? こんだけ……」


「領地ごとに地図は存在するらしいが領土を越えると敵地だったりするからな。同盟国ならまだしもいつ敵になるか分からない相手国と地図の共有はしたくないらしい」


「なるほど」


「で、この地図どーすんの?」


 パーティーごとに配られた地図を皆で覗き込みつつ稲葉が尋ねると、勧は話は順序だってする。と嗜める。


「まず、真ん中を見てくれ。ここがこの国だ。つまり現在地だな」


「結構内陸なのねロスタリス王国」


「いろんな境界が交わってるな。近くにあるのは街が三つと、辺境の村コーライ?」


「うむ。街の名はクローア、ラコステ、ヘコキウタ」


「屁こき歌?」


「街の名前だ。そういうことは言うなジョージ」


「オゥ、ソーリィ」


「まずは情報を集めたい。そこでパーティーごとにこの四つの街で情報を得ようと思う」


「ヘコキウタ、ヘコキウタってどんな歌~HAーHAHAっ」


「ジョージ気に入り過ぎ……」


「と、とにかく、この四つの街に情報収集に向かう。目標は1週間。行き帰りに最高二日掛かるからそのくらいが妥当だろう。一番遠い西のラコステには我々が向かおう」


「2班はラコステね。それじゃ北のクローアを調べてみるわ」


「ふむ。では5班はコーライになるのか」


「オゥ、ヘーコキヘーコキヘコキウタ~」


「やだ。ウタの場所行きたくない」


 ジョージが気に入ったみたいなので真廣は4班にヘコキウタ行きを譲ったつもりだったのだが、天音が嫌がったことで美与も即座にヘコキウタ行きを却下し始める。

 どっち行きでもいい兎月とヘンドリックは溜息を吐いて真廣を見た。


「分かった。5班がヘコキウタに向かう。4班はコーライに向かってくれ」


「了解」


「一応伝えておくがこのコーライ周辺はアウレリスの森側とドルアグスの森というのに別れている」


「ん。二体のボスがいる?」


「それもあるが領地境になるんだ。ドルアグス側から先は魔族領になる。人間を敵視する種族らしいからお互い不干渉を貫いてるらしい。下手に近づくと要らない争いに巻き込まれるからドルアグスの森から外には出ないようにしてくれ」


「ドルアグスの森までは行っていいんだ?」


「ああ、そこは不干渉地帯のグレーゾーンだそうだ。でも人族が森を抜けたらいろいろ問題が出てくるらしい。余程の事がない限り行かない方が良いだろう」


「了解」


 こうしてこれからの行動方針が定まった。

 桃瀬率いるパーティーは北にあるクローアへ、中井出たち2班がラコステ、4班がコーライ、5班がヘコキウタへ行くことが決まったのであった。

 ジョージが凄く残念がっていたが、誰も彼に声を掛ける者はいなかった。

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