小説家になろうで自作自演はダメ
友人から「小説家になろう」を紹介された。
正確には友人の書いている小説を読んで褒めるコメントをするよう強要された。
正直、その話はクソつまらなかった。
だけど、その友人には日頃から世話になってたし、まあそのくらいならと、絶賛コメントを書いてあげた。
それから、3日後のことだった。
友人が焦った様子で俺のところにやってきた。
どうやら自作自演がバレて、炎上してしまったらしかった。
頻繁になろうのアクセス解析とコメントを確認していた友人は、誰かが小説のコメントに書き込んだことにすぐに気が付いた。
「こんなクソつまらんものを面白いっていう奴がいるなんてなw
自作自演か」
そのコメントを友人に見せてもらいながら、内心、図星だもんなぁと思っていた。
そんなコメントを無視すれば良かったものを、友人は反論してしまった。
「面白くないわけがない。
これを面白くないと思うのはお前のセンスがないだけだ。」
互いにヒートアップするうちに、友人はぽろっと言ってしまっていた。
「そのコメントは自分が書いたんじゃないってさっきから言ってるだろ!
だって、友人に書いてもらったんだから」
そこからは、他の人も加わって、完全に炎上してしまっていた。
どうにかしてもらおうと、俺に助けを求めにきたらしい。
なんて滑稽なんだ。
あの炎上こそ俺の自作自演だよ。
なんでも頼ってくる友人が(まあ、俺は友人とは思ってないけど)ウザくて、ちょっと嫌がらせさせてやろうと思っただけだ。
内心そう思いながらも、必死で笑いを堪え、心配そうな顔を演じ「俺がなんとかしてやるよ」と言った。
焦ったあいつの顔、見ものだったなあ。
当然、俺が炎上を鎮火する筈もなく、火に油を注ぎまくってやった。
俺がヒントを書き込んで、あいつの身元も特定された。
もちろん俺だとバレないように。
それから数日後、友人から「小説家になろう」をやめたと言われた。
これでやっとウザい小説自慢も無くなる。
もそろそろ、こいつとも手を切ろうかな。
友人を避け、話しかけられても無視するようにした。
その内、あいつは話しかけなくなった。
あいつは俺に付きまとわなくなった。
それから俺は、ウザいあいつがいなくなったことだし、暇つぶしに「小説家になろう」で小説でも書き始めた。
まあ大して話も面白くないから閲覧者も1桁、コメント0の日々が続いた。
そんなある日のことだった。
俺を褒め称えるコメントをする奴が出た。
素直に嬉しかったが、自分でもそこまでいい出来とは思わなかっただけに気恥ずかしい気分であった。
すると、次に「自作自演」を指摘するコメントが来た。
まるであいつの時みたいだな。
俺はあの時のあいつの顔を思い出し、笑った。
俺は面白がって、わざと荒れるように返信してやった。
案の定、コメント欄は荒れ、炎上していった。
その内、俺を特定する流れになった。
だが、プロフィールにも小説内にも俺を特定できるようなものは何一つない。
前のあいつの時みたいに、俺を知っている人がこの中にいない限りは。
そうタカを括っていたが、次第に特定が進み、ついに俺の学校名、本名と顔写真までがネット上に流出してしまった。
そこで初めて俺は恐怖した。
「お前のところ行くからな」
「こんな駄作、同級生に知られたら、どうなるかな」
「キモメンwww」
ただの文字の羅列に心が抉れていった。
だけど、おかしい。
妙な違和感を感じた。
あいつの件でも分かっていることだが、炎上っていうのは意外と中々起きない。
俺が荒らして荒らしまくってようやく炎上したという状態だった。
特定に関しても同じだ。
ということは、誰かが意図的に俺を嵌めた?
そこまで俺に恨みを抱き、さらに俺が小説家になろうで小説を書いていることを知っている身近な人物。
一人しか思い浮かばなかった。
あいつだ。
だが、それは有り得ない。
だって、あいつは、俺のせいで自殺したんだから。