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第三話

頑張って毎日投稿続けます。



翌日、ユウタら五人は手術室へと向かう。

手術室へと向かう足が重く感じるのは、五人の精神状態を如実に表しているというものであろう。

手術着に着替える頃には笑顔だった顔も緊張し、不安な顔になり下を向いてしまう。

其れには、周りの大人の緊張感が五人に伝わったこともあるだろう。


一人、また一人と名前が呼ばれ、少しずつ自分の番が近づいてくることを実感し、次は自分だろうかと不安になる。

そんな五人の中でも年長者のナギはユキの手を握る。


「手つないで深呼吸しようか。ほら、みんなも」


「「「「「すうーーーーー。はーーーーー。」」」」」


(やっぱりナギはこういう時先輩だなって感じる)


周りの大人も、合図もなしに息ぴったりの深呼吸に微笑ましいものを感じ、空気が緩む。

当の五人も落ち着いた様子だ。

そして遂に呼ばれる。


「子供達はこちらに来てください」


手術台に乗せられ、周りには白衣を着てマスクをした先生と、その助手のような人が見下ろしている。

五人はお互いを確認できる同じ部屋にしてくれた計らいに感謝しながら、少しの緊張とともに開始を待つ。


「リラックスしてください。麻酔をしますからね。起きたら全て終わってますから安心して」


少しの恐怖はあるが落ち着き、麻酔による影響であるのか少しづつ遠のいていく意識に心地よさを感じながら遂に意識を手放した。




ーーー




数日後。

五人を含め、被験者全員が広い部屋に集められた。

結果として全員が生きて手術を終えることができた。

しかし未だに全員が体を殆ど動かせない状態に陥っていた。

よって部屋に集められたのはカプセルに入ったままの移動である。

部屋の中心にこのプロジェクトの第一人者である老齢でありながら荘厳な雰囲気の研究者が立体映像で映し出される。その人物の名はロイド・アネラルカ。トップでありながら、ユウタの手術を受け持っていた者である。


「まずは被験者の皆様、手術成功おめでとうございます。皆様御存知かとおもいますが、私はロイド・アネラルカです。一人もかけることなく成功したのは喜ばしい限りです。これから、皆様に重要な事を伝えます」


「このプロジェクトでは、被験者の皆様に伝えていなかったことがあります。サードヒューマン計画ですが、この計画には人が何第二も重ねる期間が必要です。しかし、このプロジェクトが始まったのはたかだか数十年前。これがどういう意味か、其れを説明しましょう」


「貴方達の体に埋め込んだもの、其れは地上に現れた魔物とでも言うべき強靭な生き物の遺伝子です。貴方達の遺伝子を組み替えたわけですが、これが浸透し、万全の状態になるまでには気の遠くなる時間が必要となります。よって今から貴方達を凍結保存致します!!」


(凍結保存?え?何の話だよ。ふざけるなじじい)


マッドサイエンティストのような現実味の薄いセリフに数秒間、空気が固まる。

皆の心情と言えば「は?」というのが一番的を射ているだろう。

そのぐらいぶっ飛んだ発言であった。

凍った空気が溶けると、被験者達は必死に講義をしだす。

その内容は「ふざけるな!」と憤慨するものや、「目を覚ました時にはもう家族と会えないじゃないか」と絶望にくれるものと様々であった。

しかし、目の前のマッドサイエンティストは更に追い討ちをかける。

その顔は愉悦だと言わんばかりだ。


「ご安心ください。貴方達の体は凍結保存無くしては拒絶反応を起こし、体が崩壊するのみです。今はクスリで抑えていますがあと一日も経てば激痛でしょう」


被験者の一人が希望を見つけたとばかりに破顔し、問いの声をあげる。


「じゃあ、そのクスリを投与し続ければっ!!」


(そうだそうだ!でもこの研究者の顔を見れば、そんな気さらさら無いことがわかる。多分金を積ませようって魂胆か、マッドサイエンティストのどちらかだと思う。


荘厳な雰囲気が次第に崩れ、その顔は歪み、口は裂けたように吊りあがり、醜いジジイへと一変する。


「ザンネーン。それは出来ません。この薬は高価でしてねえ。それにこの薬は浸透を阻害するものですから、それでは意味がないじゃないですか!貴方達はモルモット同然なのですから!あははっ!!!」


「そんな・・・」


(やっぱりな。でも死ぬよかマシだ)


被験者達は絶望に打ちひしがれ、頭を抱える。


「サアッ・・!!可愛い被験者達よ!・・・・安らかにお眠りくださいっ・・!!私の後を継ぐものが貴方達を見届けてくれることでしょう!」


(あ、でもとおい未来で目を覚ましてその頃に美味しいもん食えるようになってたら、まじ最高じゃね?)


ユウタだけはそんな的外れな感想を抱いていた。

もしかしたらユキあたりもそんなものかもしれない。


「行ってらっしゃいませえ!」


瞬間、被験者達のカプセルに絶対零度の気体が噴き出し視界を白く染める。

皆一様にもがき苦しみながら、然しすぐに意識を手放した。

彼等が次に目を覚ますのは数百年後、遥か未来へと旅立った。

その様を見るマッドサイエンティストは、愉悦とばかりに笑い出す。


「HYAHAHAHAHAHAHAHAHAHA・・・!!!!!」


しばらくの間、白く染まった被験者達のカプセルが並ぶ部屋に狂った笑い声が響き続けた。

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