第二話
手術が失敗した者には最後の食事と成ろう晩御飯の時間となった。
ユウタらは今日は研究機関より好きな者を食して良いとの通達を受け、其々好きな物を事前に通達をしていた。
ユウタは勿論、普段食べられない者を頼んだ。
(ふふふ。まさか好きな者をなんでも食べられるとは。・・・じゅるり。・・ああ、いかんいかん。ヨダレがっ。勿論、千年前は食卓に上がる程度の物だったらしいのだが、現在高級品となった魚を食すに決まっている。俺には未知の味だ。)
当然、皆が何を頼んだのか気になり、
「みんなは何を頼んだんだ?」
「ユキはパフェ3キロなのじゃー。」
皆は少しは驚いたが、特にいつも通りとばかりに軽く流す程度である。
何故なら、ユキは普段から大食漢ーー否、大食女だからである。
その小さな身体のどこにそんな入るのか甚だ疑問であるが、何時ものメンバーであるユウタ達から言わせれば、『ユキだから』の一言で返されるのみである。
「ほう。アイトはどうせ肉だろーし。ナギとアズサは?」
背後から、アイトのような声で決めつけるなっ!おれは野菜も食べれるんだ!などど聞いてもいないのに野菜食べれるアピールをしてきているのは空耳だろう。
「 私はトリュフを使ったコース料理を頼んだな。なんでも1,000年前でもかなりの高級品だったらしい。気になって仕方がなかったからな」
「私は高級卵料理って頼んだよ。1,000年前に三ツ星レストランでも使われていたのと同じ品種の鳥さんから取れたやつなんだそうだよ!あー楽しみっ」
(ほうほう。やっぱりナギとアズサは分かってるな。食とは人間の三大欲求なのであるから、ここを疎かにしては、人生を無駄にしているも同然だ)
「いいな。俺は魚だ。其れもクエだったりヒラメだったり金持ちでも年一回食べるかってほどの高級魚を頼んだ」
俺の返答に、アイトが声を荒げる。
「なっ!みんなそんなもん頼んだのかよ!俺なんかステーキの一文字しか書いてねえっ。これってもしかして、やっちまったか?」
アイトの声に皆一様に頷く。
パフェのユキでさえも頷く。
「ああっ。そんなあ・・・いつも遠慮しねえのにこんな時に遠慮しちまうなんて・・・。いや、まだ希望はあるっ!もしかしたら極上のステー気がくるかも知んねえ」
少し元気を取り戻したかのように見えたアイトに現実というものが思い知らされる。
そう、料理が運ばれてきたのだ。
「高級素材をふんだんに使った巨大パフェでございます」
まずユキ。
言葉通りユキの身長の半分はあろうかというほどのパフェで、色とりどりのフルーツ等が散りばめられている。
その後も、やたらと長ったらしい素材の説明がつき、其れが四人目まで続いた。
そして来たるアイトのステーキ。
「こちらが、ステーキとなります」
其処にはステーキがあった。普通の。
「では、失礼いたします」
無残にも、ステーキには、なんの説明もなかった。
「あ、あのー?ステーキの説明は?」
「ああ、申し訳ございません。こちらのステーキはですね、豚肉が使用されております」
「そ、其れで?」
「以上でございます。では今度こそ、失礼致しました。」
「アイト」
アイトの名を呼んだユキの手がアイトの肩におかれる。
その時のアイトの顔は絶望そのものであった。
「豚肉ってっ・・豚肉って・・・せめて牛・・・」
何やらブツブツと呟き、目に水分を普段より溜めている者を尻目に、その周りでは、料理の美味しさに満面の笑みを浮かべていた。