第一話
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解析すら千年近くたっても進まない未知のウイルス。
20XX年、人類が支配していたこの地にその未知のウイルスーー度が過ぎた人間に対する神の天罰としてラースと名付けられたーーが世界を包み、瞬く間に人間の数は減少した。
人間たちは地下や、シェルターに逃げ延びた。
各国の重要人物や、このウイルスに対抗するため、研究者たちが優先して生き延びた。
結果、人間はその数を数億人まで減らした。
今や、人間が生きられる環境では無くなった外界であるが、其処に生物の存在があるのかと問われれば、存在する。
未知のウイルスによって淘汰されたのは人間だけであった。
人間に近いとされるチンパンジー等の霊長類でさえ、淘汰の対象とはなり得なかった。
現在、地上の環境は、人間こそが害悪であった事の証明とでも言うかのように、息を吹き返し、大自然溢れる地となっている。
更には、新種の大きな動物も次々と発現している。
其れ等は魔物などと一時期ニュースになり、その模型等は子供達にも人気である。
ここ数百年で、地下やシェルターでの環境も整った。
然し、人間たちは懲りず、またもや地上支配のため、各国で競い合っている。
宗教団体は神の天罰であるラースに対し反抗する人間たちに神への反逆としておとなしくしているべきだとの意見も多い。
当然、地上の出るための研究は各国で行われているのであるが、ほぼ全人類としての共通意識である地上への帰還。
その目標のもと、国際研究機関が作られた。
今となっては技術も資源も足りず、吸収と統合を繰り返し、5カ国間で減少した人類であるが、その5カ国の優秀な科学者によって形成された世界トップの研究機関である。
その研究機関で現在大々的に行われている計画。
それは新人類ーーデュアルの創造である。
人間と同程度、いや、それ以上となり得る人間とは違う別存在を作り出す事である。
デュアルは既にほぼ完成している。
しかし人類として、人ならざる者に地上を支配されても意味が無い。
次第に人の体に応用し、人の身を持って外界へと回帰する事が目標となった。
その計画はデュアルに次ぐ人類の進化としてサードヒューマン計画と呼ばれた。
デュアルは動物の遺伝子と人間の遺伝子を組み替え、耳や尻尾の生えた、所謂獣人と呼ばれるような人類であり、細胞レベルで作られたもので、量産しても同一個体のクローンだけである。
これでは、多様性が望めない。
サードヒューマンは生きた人間にその能力を潜在的に植え付け、外界での行動を可能にすると言うというものであった。
その実験で適応率が極めて高水準であった被験体は15人。
その中でも子供の被験者5人は全員孤児で、その他の10人は自ら希望したものたちである。
子供の被験者は精神的負担を減らすため、同じ部屋で生活させ、思惑どうり仲の良い親友とも呼べる五人になった。
・・・・
遂に来た手術の日の前日。
その五人のうち四人は与えられた部屋の中心に集まり、様々な感情に侵されながらも真剣な表情で顔を見合わせていた。
「ユウタ遅いなあー」
「そうだね」
五人目であるユウタは現在呼び出しをくらっていた。
(ああ、絶対遅いって言われる。でもこの情報はっ。)
案外話が伸びて、遅れてしまったのだ。
それには深い事情があり、皆も分かってくれるはずである。
研究施設の中の被験者専用の住居空間に着き、番号を確認する。
001号室。
それが被験者ナンバー001~005迄が住む部屋の番号。
慌てた様子を取り繕うように部屋に入る。
入った直後、皆の視線が少し厳しい気がするのは勘違いでは無いだろう。
兎に角空気を感じ取り、「ごめん、遅れた」と言いながら、輪の中に入る。
最初に口を開けたのは空色の髪を肩口で揃え、眼鏡をかけた、皆より少々年上でしっかり者、みんなのリーダーとも呼べるナギ。
「まあユウタのことはさておき、明日が私達の運命の日だ。成功率は9割越え。かなり高い数字だが、安心していいものではない。絶対に成功させて明日の朝。みんなで顔を合わせるんだ」
皆ナギの真剣な表情に、お互いの顔を見合わせながら真剣に頷く。
続いて口を開いたのは銀の髪を腰のあたりまで伸ばした、小柄で一番年下、皆のマスコットキャラクター的な位置のユキ。
「大丈夫!みんな一緒なら絶対大丈夫なのじゃー!」
その様子に皆安心したのか少し表情が緩む。
「そうだって。こんなちっこいユキがこんなんなんだ。おれらがビビってどうするってんだよ」
そう気楽に返したのは金髪で少しちゃらけているように見えるかもしれないが、中身は真っ直ぐでポジティブなアイトである。
「んなー!誰がちっこいじゃと!」
ユキが遺憾とばかりに憤慨する。
「アイトそういう事言わない。大体アイトはいつもデリカシーがなさすぎるんだよ。」
ナギがアイトに釘を刺す。
「ほらほら、ユキはちっこくないもんね。私もユキくらいの頃は同じくらいだったよ。お姉さんが言うんだから間違いない。」
憤慨しているユキをなだめているのは、黒髪を後ろ手に纏めた所謂ポニーテールでその胸には二つの肉塊を携えていて、何かとお姉さんぶりたいアズサである。
「はあー。お前らまじでこーゆー時くらい締まらねえのかよ」
ため息混じりに毒づいたのは、主人公的ポジション。この特徴過多な中では地味な茶髪で平凡に見えるが、その実、この五人の中でも一番頭がキレると評判のユウタ。
「ははっ。いいじゃんか。おれらには辛気臭いのは合わないぜ」
「ま、そうだなっ」
「うんうん」
皆で向かい合いながら笑顔を交わしながら願う。明日、また会えますように、と。
その空気も弛緩し、次の話題が求められる雰囲気の中、ユキが疑問を口する。
「ユウタはなんで呼び出されとったんじゃ?いつも呼び出しはみんな一緒なのに。」
「ああ、それはな。」
ユウタは不敵な笑みを浮かべ、その理由とそこで得た情報を話した。
それを聞いていた皆は、一喜一憂どころでは無い。
憂いなどさっぱりなく、ニ喜、三喜と表現されるほどの反応を見せた。
その反応に、ユウタも自然と頬をが上がった。
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プロローグ終了は三話です。四話から本格始動です。