食べてね
貴方のために生まれた私は貴方の言う通り生きて来ました。朝早く眠たいけれど働いて、少ないご飯で我慢をして、檻に閉じ込めれられて、それでも貴方のためだから私はいっぱい生きていました。
しかしそれももう終わり。今日には死んで貴方と一緒になれるのです。貴方には何万の一つに過ぎないけれど、それは私の一生なんです。だからお願い、美味しく食べてね。
でもね、私知ってるんだ。私は貴方には食べられない。食べるのはずっと遠くの、顔の知らない誰か。それでもいいんだ。その人の、本当に小さな事かもしれないけど、人生の一部になれるんだから。
やっぱり贅沢は言わない。美味しくなくても構わない。まずいまずい言いながらでいいから、私を食べて。人間の世界には食料廃棄物って言葉があるのは知っている。酷いよね。みんなの一生を、命を廃棄物なんて。つまりゴミでしょ。欺瞞だよ。言葉を軽くしたって、命は軽くならないんだよ。
どこか遠くの、見知らぬ誰かへ。私の命を美味しく食べてね。