【はじめてのたたかい】
【紀元前百世紀ころ―――銀河諸種族連合歴マイナス十二年 銀河系 辺境惑星】
―――KYURRRRRRRRRRIIIIIIIIII!
まるで、何百もの金属が無理やり捩じ切られる音。それを何十倍にも拡大したかのような不協和音だった。
たった今生命を終えた巨体は、高層建築にも匹敵する大きさ。それを荒野に横たえ、夕日に照らされる姿はまるで死んだクジラを思わせる。
荒れ果てた星だった。
鉄分を多く含んだ土は赤茶け、空は老いた太陽が赤く巨大化して見える。
住民が退去して久しい土地であった。
生命も絶滅しつつあり、住まうのは物好きな山師の集団くらいのもの。
そして今。
山師の集団―――商業種族と呼ばれるひとびとからなる―――と、そして高度機械生命体との戦いの第一ラウンドが終了したところだった。
金属生命体の亡骸を取り囲む者どもは小柄である。彼らの身を包む装甲宇宙服は戦闘用ではない。あくまでも危険な作業を行う際に身を守るための、ささやかな装甲しか持ち合わせてはおらず、携行しているのも工具だった。
ささやかなのは装甲だけではない。けむくじゃらで、二足歩行するカワウソにも似る彼らは臆病で、困難へ立ち向かう勇気にも欠けていた。
彼らを叱咤し、奮い立たせ、励まし、そしてまとめ上げたのは、リーダーたる若者のひとり。
そして、その傍らにいる、巨躯の青年だった。
装甲宇宙服をまとったその身長は、他の者の倍近くはある。
彼はバイザーを跳ね上げ、天を見上げた。
今は遠き地となった故郷を。物理的にだけではない。時間的にも永劫の彼方へと隔てられた場所へと。
外気にさらされたその顔は、毛に覆われていなかった。人類だった。
これから忙しくなる。銀河の命運をかけた戦いを始めるために、あらゆる勢力を糾合し、宇宙最強の軍勢を作り上げるという大仕事が、彼には待っていた。
バイザーを下すと、彼は仲間たちへ視線を戻した。
郷愁を断ち切るように。