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【再会と出会い】

【2014年2月27日午前 地球・日本・兵庫県神戸市須磨区 板宿駅近辺】



片側三車線の道路。

車が無数に行き交うその両側に広がる街並みは、家屋や小さなビル、商店などまちまちだ。

地方都市の標準的な光景であると言ってもよいだろう。

その歩道を、とぼとぼと歩いている少年の姿があった。

歳のほどは小学生程度か。十歳行くか行かぬか。

目尻はキリリとしており、顔立ちは美形である。将来が楽しみと言えるだろう。

服装は短ズボンに紺色のシャツ。公園ででも遊んできたのか、汚れている。

と。


「角田博人だな?」


声がかけられた。

少年が顔を上げ、声の方へ向くと―――車道のド真ん中で、一人の少女が仁王立ちをしていた。

クラクションが鳴らされ、罵声が投げかけられてくがどこ吹く風だ。

年のころは十台後半か?

信じがたい―――本当に人間とは思えぬほど美しい少女であった。

小顔で、瞳はぱっちりとしており、唇はほんのりと桜色。

腰まで届く銀の髪。

右目を覆っている眼帯は、時代劇で見たような刀の鍔だ。

身に着けているのは白いワンピース。

だが、何よりも印象的なのは彼女が纏っている雰囲気。

野生の獣のような―――否。

最大級の破壊兵器を、更に研ぎ澄ませたような、完成された刃のごとき威圧感。

危険であるが故の美だ。

少年は、姉の教えを思い出した。

『いい、ヒロト?危ない人にはついて行ってはいけないのよ?』

少年は姉に忠実であった。

よって返答は決まっていた。


「いいえ、違います」


即答であった。

「そうか。それは失礼したな。―――なんていうと思ったかぁ!?」

キレた。少女はブチ切れた。般若の形相であった。

怖い。

少女は右腕を振り上げた。

―――信じがたい光景が出現した。

振り上げられた右腕は、無数の線がその表面に走った。

次いで、その線に沿って、皮膚が分割された。

内側に隠されていた複雑怪奇な機械が、広がって行った。

組み合わさり、スライドし、変形する。

ほんの一瞬が、少年には何十分にも思えた。

似たようなものを、少年は映画で見たことがあった。

ビームガン。

殺人アンドロイドが体内に内蔵していた。

今、目の前で起きている事はそれとそっくりであった。

少女の腕が変形を終え、少年へ向けてその砲口が向けられる。

駄目だ。死ぬ。あれを前に生き延びることなどできようはずがない。

少年は直感した。

と。

「あ」

あるものが目に入った。珍しくもない―――というほどではないが、そこそこには見かけるもの。

「危ないですよ」

自分の方がたぶん危ない状況ではあったが、ついつい少年はそう声をかけた。少女へと。

基本的に人がいいのだ。

「ふん。何を言っている?危ないのはお前―――」

ごっすん(SE

巨大な質量が、少女の肉体―――本当に肉でできているかははなはだ疑問であるが―――に激突。そのまま押しつぶし、引きずり、進んでいく。

ずりずりずりと。

「……だから言ったのに」

ダンプトラックであった。

何十tあるのだろうか。デカい。

この巨大な質量に抗し得るものなどあるはずもない。

「……へ?」

停車したダンプ。人ひとり轢いているのだから当然であろう。そのドアが開こうとした瞬間。

腕が、見えた。

動いている。

車の真下から伸びた二本の腕が、自らを押しつぶしているダンプを掴むと、そのままぐい、と持ち上げる。いともあっさり。

嘘やん!?

少年の内心を知ってか知らずか、自分の何千倍も重量がありそうな巨体を持ち上げ、少女が立ち上がった。

運転手のおっちゃんが落下する。

「ふう。思わず興奮しすぎてしまった」

そういう問題でもない。

よっこいしょ、とダンプを横にどかすと、少女は改めて少年に向き直った。

「不覚を取ったが、今度こそ仕留めてくれる。我らが仇敵め!」

美しい顔を凶悪にゆがめ、少女は言い放った。

「あー。これは純粋な興味で聞くんですけど、一体何が」

少年の疑問。

わけがわからない。事情くらいは聞かないと殺すも殺されるもない。

少女は、意外にも少年へと、こう返事を返した。

「長くなるぞ」

「じゃあそこの喫茶店でお茶を飲みながらでも。あ、もちろんあなたのおごりで」

「よかろう。……なんで私のおごりなんだ!?」

あ、突っ込むところそこなんだ。

「いいからいいから」

「……いいのかなあ?」

案外いい人かもしれない。


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