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第四話

意地を張ったところでどうにもならないので、お茶は充分冷めてからいただくことにする。

せっかく美女メイドさんがいれてくれたのを飲まないのはもったいないしね。

他に食べられないものがないかアマンダさんに問い詰められたので、ヨシノさんに知識を総浚いしてもらうことになった。

とりあえず、元が植物なのであんまり暑かったり寒かったりするのがダメなことと、病気にかかりやすい(ソメイヨシノだからな)事、食べるものに関してはソレに含まれる魔力のようなものを栄養としているため毒物などでない限り大丈夫だということを話した。

基本、常温の食べ物でないと受け付けない体のようだ。

一応、日光浴ときれいな水さえ与えられれば経口栄養を取らなくても最低限の生命維持はできると伝えておいた。

桜は水はけのいい柔らかい土壌にしか育たないけれど、王子様の魔力によって作られたこのサクラさんのアバターが土壌の役割を果たしてくれている。

最悪、陽の光や綺麗な水がなくても、実は王子様がサクラさんのアバターに魔力を補給してくれれば生きていくことはできそうだった。

魔力を補給する時には《共有》の魔法を使った時のように接触する必要がありそうだったから言わない。

じゃあ毎食ソレで、とか言われたら泣く。

何が悲しくて三食メイドさんの介助付きご飯が、(いくら可愛くても!)男と手をつないでランデブー状態にならないといけないんだ。


俺の素の知識と桜の木が散文的に溜め込んだ知識、後ついでに王子様の知識まで調べ上げるまで二十分以上かかった。

湯気を立てていたお茶が俺にだって飲めちゃうくらいの温さに冷めるくらいの時間。

PCという目指すものの完成形を知っている身からすればイラつくほどの遅さ。

検索したらぱっと出てこないと困る。

疑問に思うまで答えが返ってこないのも、唇に火傷を負うまでそれが危険なものだと気付かなかったのも大変問題だ。

しかも、危険だという知識は持っていたにも関わらず、だ。

知識の中にあるのに必要な時に使えないなんて、宝の持ち腐れ以外の何者でもないじゃないか。

危険が危ないものに関しては、飲んだり食べたり近くに接近する前に警告が出るようにしておかないと。

それから、検索機能をもうちょっとグレードアップして、関連項目の欄も付け加えておくか?

ついでによく検索する項目はショートカットできるようにブックマーク機能でも付け加えておこう!

なんだかちょっと楽しくなってきたぞ。




救急で脳内整理しつつ楽しく構想を広げていると、何やら王子様たちが微妙な顔で俺を見た。

「…そうか。じゃあ、サクラは何が得意なの?」

何が?

王子様の質問の意図がわからず、首をかしげる。

「えっと。例えば、お母様の熾天使は神聖魔法が得意で、お母様が使うときにも補助してくれるんだ」

天使だから、それはそうだろう。

頷いて、考える。

俺のできること?

ヨシノさんに聞いてみたが、エラー。

俺の性能をステータス風に解析して見ようとして失敗した。

ステータスって、この世界のありとあらゆる動植物の膨大なデータがないと算出できないんじゃないか!

この世界にいる生物で辛うじてデータを入手できたのって王子様だけだし。

王子様の中にある他の生物データといえばunknownの箇所が多すぎて使えない。

王子様と比較して特に何ができるかってことでも言えばいいのか?

「元が“樹木”なのだから盾くらいしか使い道がないのでは?」

思い悩んでいると、嫌味な侍従くんが笑い含みに言ってきた。

「ああでも、木の盾では一般兵の剣すら受け止めきれませんね」

「ウィル!」

王子様が声を荒らげて侍従くんを叱る。

侍従くんは大人しく王子様に向かって頭を下げたが、俺には一瞥もくれなかった。

別にいいけどね。

子供の嫌味に傷つくほど弱くない…いや、本当のことだからってグサッとなんて来てないよ!

ただし、これだけは言っておかないと。

「残念ながら盾になれるほどの強度はありません。樫などよりよほど柔らかいので。傷が付いたら病むか、当たり所が悪ければ死んでしまいますし」

“桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿”ともいうように、桜はよほど上手く剪定しないと傷口から腐って枯れてしまう。

傷つくのが決定事項の盾職なんて死ねというのと同義だ。

「じゃあ、魔法は?“神樹”なんだし、神聖魔法が得意とか。それとも土?」

「魔法…」

魔法、魔法か。

そういえばこの世界では普通に魔法使いがいるんだった。

目の前の王子様は風火水土に光と闇の全属性、特に光に属する神聖魔法に適性が高いんだっけ。

侍従くんは攻撃系に特化した火と風属性が高い。

アマンダさんは、謎だ。


この世界に存在する全ての生き物が魔法を使えるというわけではないようだが、王族貴族の血が濃いほど魔力量が多いようなので必然的に魔法が使える者も多い。

魔力の多いやつと代々婚姻して来たのか、魔力の多いやつから爵位を与えたのか。

平民と一般的な貴族との魔力の保有量は大きく違うらしい。

具体的な数字は王子様のデータにはなかった。

アマンダさんは伯爵位の貴族の次女だったから、何かしらの魔法は使えると思うのだが、王子様が知らなかったので保留。


俺は使えるのか?

この世界の魔法は魔法陣を描いたり、呪文を唱えてそれらに魔力を込めると発動する方式だ。

呪文や魔法陣の知識はある。

王子様GJ!

とても六歳とは思えないほどの魔法の理論や術式や呪文の数々がデータの中にある。

だが、これに魔力を込めるってどうやればいいの?

王子様もそこのところを苦戦しているらしく、成功例が検索されない。

いや、辛うじて俺をこのサクラさんというアバターに定着させて契約を結んだ時がそうか。

あー、どこが違うんだ?

キラキラか?

あの黄昏色の空間にいっぱい広がってた光。

失敗例では王子様の掌から雲散霧消していったあの光。

そういえば王子様と《共有》した時にも瞼に映写機の光みたいにぴかっとした気がする。

そのせいで映画見た気分になっていたんだった。

ポップコーンとコーラ欲しいな…じゃなくて。

えーっと。光、光…。

ぼんやり視線を彷徨わせつつ目の焦点をずらすと、キラキラが見えた。

うん、これが推定魔力だろう!

ライトノベルのこういうのの王道で言ったらそうに違いない。

で?

これを掌に集めて…うーむ、もや●もん的に「あつまれー」って感じで…っと、うまくいった。

掌の上にキラキラを集めて、ピンポン玉くらいの大きさにまとめる。

意外に簡単だ。

火…は危ないから水に変換。エイチツーオーな。

化学式がこうで、えーっと、状態的には分子が普通に活動できるくらいで…。

魔法式的にはこれか?

■■■が化学式に該当して、こっちが状態かな?

ばしゃ。

掌に集めた魔力が光を失い、透明な水になって手を濡らして床にこぼれて絨毯に染みを作っている。

結構簡単に出来た。

しかも、呪文唱えるの忘れてたわ。

…ライトノベルの知識って馬鹿にしちゃいけないんだな。

魔法の術式を分析してオリジナル魔法を生み出して魔法無双する小説を、読んだことがあったからやってみたら出来た。

アレ、出来るんじゃね?

今まで読んたり見たりしたことのある魔法、出来るんじゃ…?

ヨシノさーん、王子様の魔術分類するとき一緒に解析して元素記号とかに対する変換式一覧作っちゃって!

ちょっとワクワクしてきたぞ。


機械語もできませんし、物理もとってなかったのでいろいろ見苦しい点がボロボロ…すみません

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