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猫将軍

 気がつくとボクは草原にいました。

 そこはボクの知らない場所でした。

 ボクは不安になってヌイグルミを抱きしめながら、あてもなくテクテクと歩きました。

 しばらく歩くと三毛猫さんがいました。

 三毛猫さんはボクを見ると話しかけてきました。


「ずいぶん珍しい猫だな。なにかあったのかい? 綺麗な銀毛が萎れているじゃないか」


「ボクは猫じゃないのです。迷子になってしまったのです……ここはどこですか?」


「それだけの魔力なのに猫じゃないだって? おかしなことを言うじゃないか! まあいいや。ここはウルタールの街のはずれだ」


「ウルタール? ここは埼玉じゃないのですか?」


「埼玉? それはなんだい?」


「はて? 埼玉は埼玉ですよ?」


 ボクは首を傾げました。

 埼玉は埼玉なのです。


「……この意味不明さ。やはり君も猫だな」


「そうなんですか?」


「そうなの。僕らはみんな意味不明なの。どうやらウルタールは初めてのようだね。ついておいで」


「どこに行くんですか?」


「閣下の所」


 ボクは三毛猫さんの後ろを着いていくことにしました。



「ここがドリームランドの入り口か……」


 サラがつぶやいた。

 それを見ていたクトゥグアが鼻息を荒くした。


「ああそうだ! こここそがビックサイト!!! 年に二回邪教を讃えるドリーム儀式が行われる大きいお友達派教会の聖地だ!!!」


「テケリ、それは同人誌即売会じゃ……」


 ショゴスのツッコミは完全スルーでクトゥグアは続ける。


「普通の世界の住民はここから入らないとならないのだよ! っふ! そこで今回はまーくん謹製の銀の鍵も装備ぃッ!!! さあ来いUMAよ!!!」


 完全に人の話を聞かないモードに入ったクトゥグア。

 それを見たにゃーくんは露骨に嫌そうな顔をしていた。

 悪化する空気を読んだクレアがわざとらしくクトゥグアに質問をした。


「まーくん謹製って社長といつ仲良くなられたんですか?」


「……それは話すと長くなるが……一言で言うと……一緒に狩りに行った!!! 鍵は送ってもらったのだよ!!!」


 狩りとはオンラインゲームである。


「あー……」


 クレアは「また、まーくんの被害者が……」と一瞬思ったが、次の瞬間には考えるのをやめた。


「さあ行くぞ!!! クトゥグア探検隊!!!」


 バカがノリノリで叫んだ。



 三毛猫さんに案内された宮殿につきました。

 中に入るとたくさん猫さん達がボクを見ていました。

 その中でふわふわした毛の長い猫さんがボクに言いました。


「やあやあ猫族の仲間よ?」


「はいな?」


「キミは猫だよね?」


「猫みたいです?」


 よくわかりませんが猫らしいです。


「合言葉は?」


「日光江○村?」


「うん。猫だ」


「そうなんですか?」


「そうそう。意味不明なのが猫なの」


 よくわかりませんがボクは猫だそうです。

 仲間と認められたボクは将軍様の所へ案内されました。

 なんでも猫さんの将軍閣下がいるそうです。


「げふー。き、キミが新しい猫ですか。ぎゅふふふ」


 将軍閣下はショッピングセンターの黒ウニのチノパンに黒ウニのチェックシャツ、おもちゃ売り場で売っている猫耳カチューシャをつけた人間さんのオジサンでした。


「はて?」


「将軍閣下!!! 新入りを連れて参りました!!!」


「げ、げひゅ! ちちちち、チミかわいいねえ。げひゅひゅひゅひゅ?」


 眼鏡がきらりと光りました。

 ボクは一応聞いてみました。


「人間さんですよね?」


 ボクの何気ない一言に場が凍り付きました。

 なにかまずいことを言ってしまったかもしれません。


「閣下が人間?」


「だっていつも『ガン○ムに例えると』とか意味不明なことを言ってるよ。ズーグとの戦争のときだって『銀○伝なら……』とか言ってたし!」


「そうだよ! 意味不明だから猫だよ」


「そうなんですか?」


「そうだよ!」


「はいな」


 おもちゃ売り場に毎日やってくる人たちは猫さんだったのですね。

 ボクは納得しました。


「デュフフ。そう私は猫ですが。なにか?」


「はいな」


 ボクはオジサンを見つめました。

 「人の目を見て話しなさい」と、にいちゃにいつも言われているからです。

 じー。


「へ、へぶ……あまり見つめないで、ぎゅふふ」


 じー。

 すると将軍閣下は大量の汗をかき始めました。


「ぎゅふ……キミはどこからやってきたのかな?」


 じー。


「埼玉なのです」


「ぎゃふ! 埼玉! もしかしてカワグッチーかい?」


「はいな」


「ショッピングセンターかい?」


「はいな。ボクはそこの子なのです」


「それがどうしてこんなところに……ビックサイトからしか入れないはず……」


「ビックサイト?」


 じー。


「そういやショッピングセンターで見たことが……いやゴホンッ!」


 じー。


「ゆ、勇敢なる猫たちよ! こ、この子を最大限サポートするのだ!!! はいこれで終わり!!!」


 将軍閣下はそう言って逃げるようにどこかへ行ってしまいました。

 こうしておうちに帰るのを猫さんが手伝ってくれることになりました。



「ぼく達は凄いんだよ! ズーグたちを追い払ったんだ!」


「凄いのです!」


「月にも行けるんだよ!」


 ボクはその言葉を聞いて嬉しくなってしまい、ぴょこたんぴょこたんと飛び跳ねました。


「す、凄いのです! 宇宙なのです!!!」


「キミもこの世界に馴れたら行けるよ。猫だからね!」


「うわあああああい!!!」


 ボクは嬉しくなってグルグルとまわりました。


「やっぱり猫だ」


 ボクは猫だったようです?


「埼玉? への帰り道だっけ?」


「はいな!」


「将軍様が仰るにはカダテロンに一般向けの出入り口があるんだって」


「はいな?」


 カダテロン?

 うーん……千葉でしょうか?


「とにかく行くよー! 行くぞお前らー!」


「おー!!!」


「ところで……歩くんですか? ボク歩くの苦手なのです」


 ボクはそろそろ限界でした。


「んー。現代っ子だなあ」


「現代っ子ってなんですか?」


「よくわからない」


「そうですか」


「じゃあ空飛ぶ船で行くよ」


 ボクは猫さん達に案内されて船着き場へ行きました。

 そこはなぜか人型に白線が引かれていて、そこに『ロケットの炎』と書かれていました。

 ボクが首をひねると猫さんが言いました。


「これが僕らの船だよ!!!」


 そこには『たー○る号』という船がありました。


「亀?」


「うん。ブラスター装備のやつ」


「ブラスター?」


「将軍閣下がツッコミを入れちゃダメだって」


「はーい!」


 よくわかりませんが、そういうモノみたいです。


「行くぜレ○ィ!」


 こうしてボクは猫さん達と一緒にカダテロンに向かいました。

 ところで船の中に『水晶男の怪』って書いてあるんですが、これはなんですか?

 あと『キャベツ男真っ二つ』。

 はてなんでしょう?



 魔法の森

 縦に割れた口を持つ異形の怪物が殴り飛ばされた。

 魔法の森の地下に住む怪物であるガグだ。

 ガグは三回バウンドして動かなくなった。


「あ、あのサラさん……」


「ふしゅるー。ふしゅるー」


「あ、あの……」


 サラの殺気に当てられたのかシャンタク鳥が逃げていく。

 そこに空気を読めないネズミの化け物であるズーグが一斉に襲いかかるが、一瞬にして蹴散らされた。


「あ、あのね……クトゥグア探検隊として」


 クトゥグアがサラに抗議しようとした。


「なんだ?」


 サラが今までにないほどの殺気を発した。


「いや罪のない動物を……」


「ああ? 先に襲ってきたのはあっちだろうが!!!」


「いえ、全くその通りでございます」


 こうして魔法の森に魔王が降臨した。

 横で焦っている本物の魔王ことではない。

 サラという魔王が幻夢境(ドリームランド)に降臨したのである。

 魔王は幻夢境の魔物達を薙ぎ倒して進んだ。

 幻夢境の怪物達は街中で宮本武蔵に会ったヤンキーのように蹴散らされていったのである。

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