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ンガイの森 (埼玉出張所)燃ゆる

 大人の汚い陰謀を巡らせて大満足のにゃーくんが家へ帰ってくるとそこは消し炭だった。


「ノオオオオオオオオオオォッ! ミーの神社(おうち)が!!!」


 ンガイの森 (埼玉出張所)も大半が延焼。

 そこは酷い有様であった。


「ミーが何をしたアアアアアアアぁッ!」


 にゃーくんが叫ぶ。

 そこに何かがひらひらと舞い降りた。

 にゃーくんがその何かを手に取る。

 それは名刺ほどの大きさの紙だった。

 そこに書かれた文字を見てにゃーくんが目を見開く。



 君の瞳にばきゅーん



 わけわかんねえ!!!

 あまりの理不尽!

 あまりの電波!

 理不尽と電波はミーのモノなのに……

 新たな電波の出現に自身のキャラ付けを見失いそうになるにゃーくんだった。



「というわけでホームレスになったのね。おうちプリーズ」


 にゃーくんが生活費をつぎ込んだパチンコに負けて帰ってきたダメ人間のようにマクスウェルに土下座すると、サラが拳をボキボキと鳴らしながらやってきた。


「来やがったな! お前のせいでこっちは大変だったぞ! マクスウェルが……」


「おっとそれ以上ミーを追い詰めたらたいへんな事になるのね」


「たいへんな事?」


「……死ぬのねん」


 にゃーくんの目は濁っていた。

 神社を壊されてにゃーくん自身も壊れてしまったようだ。


「にゃーくん。にゃーくん」


 マクスウェルがにゃーくんの袖を引っ張った。


「おう。マイサン! なんですか!」


 どさくさ紛れに息子認定をするにゃーくん。


「ころにーおとし手伝ってください!」


 今、ありえないレベルの物騒な話が聞こえたようだ。

 にゃーくんは耳をほじくった。


「もう一度プリーズ?」


「ころにー落とし手伝ってください!」


 はて?

 いま40億人くらいを抹殺する兵器の話が出たが気のせいだろう。

 だってミーが頼んだのは衛星からのレーザー兵器であって……

 持っていれば相手もうかつに手を出せないはずだったのに。

 そもそもマンハッタン計画を煽った時も後始末が面倒くさくなったあげくに後で逆襲されて後始末でたいへんな目に……

 にゃーくんはだから……


「はわわ。まーくん凄いですぅッ☆」


 きらんッ☆

 アニメ声を出して誤魔化す事にした。

 よし! 誤魔化せた!

 にゃーくんは心の中でガッツポーズをしながら横目でサラを見た。

 にゃーくんの目に映るのはスポーツ売り場の金属バットを素振りするサラの姿。


「話し合おう。マイラバー」


「やだ」


 一本足打法。

 かっきーん!

 にゃーくんは星になった。

 ……ということもなく、「びにょんびにょん」というわざとらしい音を立てながらバウンドした。


「ううう。ひどいのねん」


「責任とれよ」


「え?」


 どきんッ☆


「そ、それは結婚の申し込み! いやんッ! ばかんッ!」


 身をくねらすにゃーくん。

 その顔にサラの手加減無しのぐーぱんちが炸裂した。


「誤魔化すな」


「うううう。ちょっとしたジョークなのねん……つかマジでラスボスクラスのアタックなのねん! 邪聖剣ネク○マンサーもなしにこの威力!」


「まだ直らないかなこの邪神。叩けば直るはずなんだけどな」


 家電扱いである。


「わかったのねん! 全部責任とるのねん!」


 もの凄く嫌そうな顔で邪神は言ったという。



「で、なんでコロニーを落とそうと思ったのかな?」


 にゃーくんが笑顔で聞いた。


「た、たいようがあまりにも眩しかったからです……」


 マクスウェルが目をそらす。


「うーん……ただ作りたかっただけ。よくわかるにゃー」


 にゃーくんがそう言うと、マクスウェルの表情がぱあっと明るくなった。


「わかりますか!」


「うん。わかるのねー。男のロマンってヤツねー」


 作ってみたかっただけ。

 なんかやってみた。

 研究者やエンジニアにはわりとよくある事である。

 そこに悪意も大義もない。

 だがそれだけで地球破壊装置を作り出すというのは、悪意を持って人々を破滅に追い込むにゃーくんより数倍たちが悪いのである。

 ここで重要なのはマクスウェルの自主性、自立の芽を潰さないようにしながらプロジェクトを止めること。

 それが問題だった。

 にゃーくんは少しだけ「うーん」と考ええると笑顔で言った。


「うん。じゃあ最後まで作るのね♪」


「はい!!!」


 サラが鬼の形相でにゃーくんの頭を掴む。


「お、ま、え、なー!!!」


 クワッ! と邪神の目が開く。


「逆に考えるんだ! 世界なんて滅んじゃえばいいさって」


 サラの手がグワシと邪神の頭を捕む。

 そのままアイアンクローをしながらサラはバックヤードへ消えていった。

 にゃーくんはダンジョン最強生物にヤキを入れられたとさ。



「うう。酷い目にあったのねー」


 ズタボロになりながら邪神はショッピングセンター内のカフェで時間を潰していた。

 ほとぼりが冷めるまでサラから逃げ回っていたのだ。

 邪神はため息をつきながら「コーヒーってなんだっけ?」と言わんばかりの生クリームタワー、下は冷たいコーヒーのデザートなのか飲み物なのかわからない物体を食しながらフードコートの安っぽい椅子に背を預けた。

 ふと辺りを見回すと、赤髪の男が見えた。

 一瞬、火龍かなとにゃーくんは思ったがなんとなく雰囲気が違うのでもう一度見ようとした。

 だが次の瞬間にはにゃーくんの目の前に移動していた。

 にゃーくんが冷や汗を流した。

 二人とも姿は変えられるので外見はあまり意味がない。

 だがお互い雰囲気で誰かわかったのだ。


「久しぶりだなクズ」


「や、やあ。 クトゥグア……元気?」


 クトゥグアはにゃーくんの挨拶をスルー。

 いきなり本題を切り出した。


「アル・アジフ返せ」


 にゃーくんはさらに冷や汗を流す。


「い、いやそれは前向きに検討したいと思う所存でありまして……」


「借りパクは許さない」


 借りパク。

 借りたままの状態を永遠に維持する事。

 『借りてパクる』の短縮形。

 クトゥグアがその言葉を発した瞬間、にゃーくんは床を手で叩いて叫んだ。


「土遁の術!!!」


 なにが起こるんだろうという期待感とともにその場が「しーんッ」と静けさに包まれた。

 その隙を突いてにゃーくんはスライム上の不定形な物体になり通風口に無理矢理押し入った。


「あっばよー! クトゥグアのとっつぁん!」


 マズイ! まずいよ! まずいよ!

 と繰り返しながらにゃーくんはバックヤードへ逃げるのだった。



「サラえもーん!!! クトゥグアが酷いんだー!!!」


「るせー!!!」


 サラのフルスイングのラリアットがにゃーくんを襲った。

 そのまま正座説教コースである。


「……つまりお前が悪いんだな?」


「い、いやね。これには荒川土手よりも深いわけが……」


 にゃーくんの話は簡単だった。

 思い出せないほどの昔、アル・アジフという魔術書をクトゥグアから借りたにゃーくん。

 ところが未だに返してないのである。

 怒ったクトゥグアに命を狙われているということなのだ。


「返せばいいじゃないか」


「それができればどれだけ楽か……」


「もしかして……なくしたのか?」


「HAHAHAHA……そうどこまでも熱かったあの夏の日、ミーはミルクかき氷バーを食べながらアル・アジフを読んでいたのね……そして本にアイスぼっとん。あせったミーは本を処分して全てをなかったことに……」


 どこまでも自業自得である。


「でもね! でもね! ウチの神社焼き払うことはないのねー!」


「……価値は?」


「はい?」


 びくんッっと邪神が震えた。


「だから本の価値は」


 にゃーくんの目が泳ぐ。


「い、いえそれは……」


「本の値段は?」


 笑顔。

 もちろん殺気だけで野生動物が心臓発作を起こすレベルの。


「……国を買えるレベル?」


 サラがボキリボキリと指を鳴らした。


「っちょ、ちょっと待つね!」


 にゃーくんが必死にやめてと手を振る。

 もちろんサラが全力でしばいてもにゃーくんのHPはゼロにならない。

 手加減など無意味だ。


「とりあえず土下座して謝ってこい!」


「ぎゃあああああああああああッ!!!」


 ダークエルフに伝わる一子相伝の暗殺拳でしばかれたにゃーくんだった。

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