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灰色の鳥  作者: 山川 景
3/14

ピヨッ

 俺は、小さな灰色の鳥の体を、手のひらでなるべく優しく抱き上げた。

 ほんのりと暖かい。良かった。まだ生きてるみたいだ。

 とりあえず、家の中まで運んでやるかな。


 ……何で俺、こんなことしてんだろうなぁ? いくら何でも、こんな小鳥をいたわったって、なぁ……?


 その灰色の鳥は、俺の手のひらに包まれても、身動き一つしなかった。でも、俺の手のひらを通して(かす)かに、この鳥のはかない脈動が伝わってくる。


 ……生きてるんだな、確かに。その小さな小さな振動は、何故か俺の心を落ち着かせた。


 俺は小鳥の体に少しの衝撃も与えないように、細心の注意を払いながら帰宅した。おかげで、途中自転車にはねられそうになったけど、まぁそれは置いといて。家に帰るなり俺は、洗濯籠から洗い立てのタオルを一つ引っつかみ、自分の部屋に駆け込んだ。もちろん、小鳥の体に気を配りながら。


 そして部屋に入るなり、俺はがっくりした。いや、いつもそうなんだけど、今日は何か特別な。


 理由は、俺の部屋がちらかってるから。机の上からベッドの上まで。全く、小鳥の体置くスペース一つありゃしない。最近テストやら(もよお)し物やら部活の大会やらで、ちょっと忙しかったからなぁ。翔太と友達になれたとはいえ、最近は心のゆとりってもんがない毎日だった。……ま、いい訳か。また落ち着いたら大掃除でもしよう。


 とりあえず俺は、小鳥を手のひらに包んだまま、ひじを使って乱暴に机の上の勉強道具をどかし、スペースを作った。そこに脇に挟んで持ってきたタオルを置いて、その上に、小鳥の体を優しく横たわらせた。


 これでオッケー、かな。ふう……。


 ……さあ、どうしよう。いたわるつもりでこの小鳥を拾ってきちまったが、何をしてやればいいんだ? 衰弱してるようだけど、外傷はないから、腹でも減ってるのかしら? とりあえず、メシかな。鳥って普段何食ってんだ?


 とりあえず、パソコンさんで調べる。ほうほう。ふむふむ。


 俺は冷蔵庫のあり物から、調べた記事に載っていた軽いえさをこしらえた。で、ストローを斜めに切った、(えさ)やり用の道具も作って、ためしにそれで餌をすくって、小鳥のくちばしの前まで持っていってみた。


 すると、どうだ。小鳥は目も開けていなのに、その餌にぱっくりと食いついてきた。おお、何て従順な鳥なんだ。かわいらしいじゃないか。ていうか動けたんだな。やっぱり、腹が減って倒れてたのかな。


 その後も俺は小鳥のくちばしまで餌を運び続けた。小鳥の方も、その勢いを衰えさせることなく、迷いなく餌に喰らいついてくる。気付くと、この鳥は俺の用意した餌を全て腹に収めてしまっていた。ちっちゃいのによく食うなオイ。


 完食後、小鳥は、満足した、と言わんばかりに、「ピヨッ」と、小さく鳴いた。そして、体をもぞもぞと動かして、そのままタオルにくるまってしまった。今度は、何だか寝ているように見える。多分、本当に寝ているのではないだろうか。 


 はいはい、お気に召していただいたようで、良かったよ。俺は、何だか少し、嬉しかった。




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