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灰色の鳥  作者: 山川 景
2/14

情けは人のためならず

 今日、俺は、翔太に助けられちまった。


 ついさっき、一人で下校してる途中、俺はまた不良に絡まれてしまった。しかも近所でも有名な、ちょっとお馬鹿なやんちゃ高校の皆さんにだ。十二、三人はいたと思う。


 俺はなーんにもしてないのに、何ガンつけてんだ! とかいって絡んできやがって。本当に迷惑な話だ。


 そこに、翔太のやつが割って入ってきてくれた。俺がびっくりしてる内に、あいつは不良たちに絶妙な長広舌をふるい続け、そのまま俺をかっさらっていってしまった。不良たちはポカンとしたまま、追ってはこなかった。


 不良たちから離れ、しばらく歩いてから、俺は翔太に礼を言った。あのまま俺一人だったら、多分相当危なかっただろう。


「いいよいいよ。僕が自分から関わったんだから。それに、裕也のケンカするところは見たくないしね」


 ほっといてくれても良かったのに。俺を助けたって、翔太にいいことなんて一つもないだろ? 


「そんなことないよ? 裕也、いいこと教えてあげるよ。人を助けるとさ、絶対に、あとで自分に恩返しがくるんだよ? 見返りを求めるんじゃないけど、情けは人のためならずってやつさ」


 にっこりと笑って翔太はそう言った。前にも聞いたことがある。これは翔太の持論だった。


「ね。裕也も、人助けしてみたら?」


 翔太は最後にそう言って、俺と別れ、手を振りながら自分の家の方に颯爽(さっそう)と去っていった。


 人助け、ねぇ。俺は普段から、あんまり人と関わろうとしないからなぁ。まぁ、機会があったらやってみるか。

 そんなことを考えながら、俺は一人で家路をテクテクと歩いていった。




 今は夏なので、日が暮れるのも遅い。もう時刻は割と遅いが、まだ太陽は地平線の上に居座っている。最近はカラカラとした晴れが続いているので、よく喉もかわく。

 帰って水が飲みてぇな、なんて思っていると、ふと、何か灰色のものが視界に写った。


 何だ?


 道の真ん中に、それはあった。いや、いた。近づいてからよく見てみると、それは、全身灰色の、一羽の鳥だった。

 手のひらと同じサイズくらいの、小さな鳥。力なく羽を広げて、コンクリートの道の上に、無残に横たわっていた。


 あーあ、かわいそうに。車にでもひかれたか。……と、思ったが、その体に外傷らしきものは全くない。ただ、動く気配も感じられなかった。


 別に、よく見かけるそこら辺の鳥だろうしな。俺は大して気にも留めず、そのままその鳥の横を通り過ぎようとした。あー、喉がかわいた。


 そのとき、何故だかわからないが、頭の中からさっきの翔太の言葉が聞こえてきた。


「裕也も、人助けしてみたら?」


 …………。俺は、足を止めた。そして、道にぐったりと横たわっている鳥の方を見た。


 人、じゃ、ねぇけどなぁ。

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