goofball─ここが誰の場所だか、誰も知らない。
「何やってる?」
足元に転がる死体───いや、目は虚ろだが生きてるから、屍とは言い難い。
「うぃー」
「ああ?」
「眠いんだ」
「眠いか」
「寝ろ。永眠でも構わんぞ」
転がるサワをリィは、軽く蹴飛ばした。
否。
軽くは無い。
「痛い」
「痛いか。生きてる証拠だっ」
頭を擦り起き上がるサワ。その様を横目で捕らえ、リィは笑いながら洗濯物を干しにベランダへ向かう。
「リィ」
「ん?」
「腹減った」
「冷蔵庫入ってんよ、冷凍食品」
萎んだサワを眺めつつ、リィは素知らぬ顔で洗濯を次々干して行く。やがて萎み切って回復したサワは、飛び付くようにリィに抱き着いた。
「リィー……」
「……。あーはいはい」
溜め息一つ空気に戻し、リィはキッチンへ降りて行った。
「仕方ないなぁ、ったく」
リィは卵をボウルに放つ。手際良く牛乳、生クリーム少々、砂糖と掻き混ぜる。掻き回し、泡立てる。片やフライパンをあたため始め、ボウルにはホットケーキミックスを混ぜ始める。リィが作業する傍ら、サワはうきうきとしながら待っている。サワはまるで餌を待つ仔猫か仔犬のようだったが、リィはそのものだと不意に笑った。
陽は高く、洗濯物は気持ち良くはためいた。
穏やかな空間。サワはパンケーキ待ち、リィは焼く。
二人の常。日常。
今日も快晴。二人は平和。
【Fin.】