12・激突
「それにしても、上手く行ったね。ここまで話がスムーズに進むとは思っていなかったよ」
馬車に揺らされながら、シャーニッドはホッとしたように言った。
「……まあ、先方は俺の親父に借りがあったらしいしな。それに、事情が事情だ」
あの手紙を発見してから、シャーニッドと俺はシャノンのことを観察した、まあ、結果は案の定の展開だった。
ただの嫌がらせなどなら、俺やシャーニッドが出張ればいいのだけど、相手は中流とはいえ貴族。それなりの数がいるし、なにより、リーダー格の人物が厄介だ。
強引に解決しても、面倒な展開が待っている。それは、安易に想像がついた。
なにか、根本的な解決方法は無いのか。そう俺達は考えたのだが……まあ、思いつかなかったのだ。
よく考えれば、権力や政治について俺が詳しいわけもなく、シャーニッドも苦手な分野だと苦笑いしていた。
そこで俺達は、仕方なく、本当に仕方なくだが、その辺りに詳しそうな学園長に助言を求めた。
事情を聞いた学園長は『イイ笑顔』で
「私にいい考えがあるわ」
といって、俺達にその考えを教えてくれた。最後に「これは貸しよ」と添えることを忘れずに。
兎に角、俺達はその考えに従って、『とある人物』に交渉しに行ったのであった。冒頭の通り、その交渉は俺の親父の功績のおかげでスムーズに進んだのだ。
これで一番の関門がクリア。少し拍子抜けである。
「っと、着いたようだね」
馬車が止まり、俺達は馬車を降りて、学園の門を潜った。太陽は真上にある、今はお昼休みだろうか。
そう思い、視線を周囲に向けたら見覚えのある金髪のゆるふわロングが目に入った。俺が声をかけようとする前にシャーニッドが「妹よ!」と走り出す。
あ、殴られた。
シャーニッドの脇腹に見事な拳をめり込ませたアイリスはこちらに気づき、なにやら焦った様子で駆け寄ってくる。
「ぎ、ギルバートさん!」
「どうし「シャノンが中庭で上級生に囲まれて!」」
刹那、全速力で走り出す。後ろからシャーニッドがなにかいっていたが、聞こえない。いや、聞く余裕なんて少しもなかった。
間に合え、間に合ってくれ。そうひたすら祈りながら走った。多分、今まで生きていた中で最高速度を出していると確信する。移り変わる風景、強烈な風、驚く生徒達を無視して、とにかく、走った。
そして
「……辿り着いた!」
今、俺が走っている所と中庭は柵で阻まれているが……いちいち迂回している暇はない。
俺は走りながら加速し、左足に目一杯の力を入れて、柵を飛び越えた。
そして、シャノンがいた地点の近くにある木に頭から激突。唖然とした表情のシャノンと、見知らぬ女子生徒達。
シャノンに目立った外傷はない。よかった、手遅れでは無いようだ。
安堵の気持ちが胸一杯に広がっていった。それと同時に目眩が襲ってくる、我ながら情けない。そう思ったがとりあえず
「助けにきた」
精一杯、格好つけよう。




