8・密談
ある女子寮の二階の一番奥の部屋。親がそれなりの地位でなければ与えられることのない部屋に三人の女子生徒はいた。
一人は部屋の主。椅子に座っている。
二人目はその前で立って報告している。
三人目は少し離れたところでその様子を観察していた。
「……ということで、会長の予想した通り、精神的には追い詰めることに成功したと思います。しかし、まだ決定的ではないので……」
「まあまあ、焦りは禁物ですの。私にいい考えがあります」
それから二人目は一人目……会長から『いい考え』を聞いて、部屋から出て行った。そして、そのタイミングで三人目が会長に声をかける。
「私に一体何の用かしら、会長様?」
「あらあら、貴方まで会長と呼ばなくていいのよ? 貴方は会員でもないし、なにより私は貴方と対等な関係を結びたいのよ」
三人目の皮肉的な口調を全く気にしない様子で会長は話を続ける。
「それに、是非貴方とは一度お話しして見たかったのよ。ねえ、お嬢様?」
三人目……お嬢様と呼ばれた女子生徒は胡散臭そうに会長を見る。
「貴方と私は敵よ、相容れないわ」
「ふふっ、いえ、それは違いますよ。同じ心を持っている『同士』ですわよ」
「同士?」
「ええ、その通りです。それに、敵の敵は味方ですよ?」
会長はおどけるように言う。それに対してお嬢様は少しの苛立ちを見せながら疑問を口にする。
「敵……誰のことかしら、私にはわかりませんわ」
「それは勿論……」
会長はか穏やかだった雰囲気がスッと冷たくなり、目を細める。
「彼女ですわ」
「…………」
「彼女さえいなければ…………いえ、やめておきましょう」
「……貴方は、何をしたいの?」
「これから、少なくとも十年以内で戦争が起こります」
会長が急に関係のないような話を始めた為ににお嬢様は不思議がる。
「戦争で負ければ国が滅びます。しかし、勝てばどうでしょうか? きっと騎士の権力が強まり私の家などは没落してしまいます。私の家がそうならない為の手段は一つしかありません」
「……騎士の家に嫁ぐ」
「いいえ、『優秀な騎士の家』にです」
「だから、彼女が邪魔というわけですの?」
「ええ、その通りです。それは貴方も同じでしょう? 貴方は一度」
プライドを傷つけられている。
会長はゆっくりと立ち上がりお嬢様の前に立つ。
「貴方にも協力して欲しいわ。そうすれば、貴方の望みもきっと叶う」
会長は、月の光とも劣らぬ綺麗な笑顔を浮かべた。少しの無邪気さと、悪意の入り混じった、とても綺麗な……。




