第八章~力の真価~
ー前回までのあらすじー
でっかい氷がドーン!
――――轟っっっっっっ‼
激しい音と共に、分厚い氷の壁ができる。謙之が投げた凶器は、尽く響介に触れることも、カードに戻されることもなく、分厚い氷の壁に阻まれた。
「なっ……なんだ、こりゃあ」
響介は目の前のソレを見つめ、驚愕の声を漏らす。透明度の高いソレは、向こう側の謙之を容易に認識できた。
「人に手伝えとか言っておきながら、蚊帳の外にしたままなんてお前、何がしたいんだよ?」
氷の壁、その端に立っている飛鳥が、呆れた風に嘆息する。
「おいおいおいおいおい。お嬢ちゃん、今のはまさか」
「お嬢ちゃんというな。……ああ、私だ。私の作ったこの刀の力だ」
「刀の力……? どういうこった」
響介がそう訊ねる。飛鳥が、その問いに答えようとしたところに、咆哮がそれを遮る。 謙之は標的を響介から邪魔をした飛鳥へと変更し、殴りかかる。
「人が話しているところを、邪魔するな‼」
飛鳥が距離が離れすぎているというのに、謙之に向けて刀を切りつける。飛鳥が放った斬撃は、巨大な氷の塊を生みだし、肉薄する謙之を呑み込む。
巨大な氷に包まれた謙之は、それ自体がひとつのオブジェのように綺麗に固まった。
「……うっわ、怖ェ~。なにあの子、怒ったらこんなことやらかすの?」
響介は、頬に冷や汗をたらし、ひきつった笑みを浮かべながら訪ねる。
「っていうかこれ、ダメじゃね? あいつ凍死するって」
「……あ」
響介の言葉に飛鳥は、はっと我に帰り、しまったっ言いたげな顔をする。
「あーあ」
「い、いや! だだだだって、今のは謙之さんが……」
飛鳥は、呆れた顔をする響介に必死で弁明をするが、余計響介を呆れさせている。
――――ピシッ!
氷づけにされた謙之の氷に、甲高い音を立てて亀裂が走る。
「⁉」
「おっ」
その耳を劈く音に飛鳥と響介は体ごと謙之の方へ顔を向ける。
謙之の氷はそのまま激しい音と共に砕け散った。
「■■■■■■■■■■■―――――‼」
バラバラと音を立てて崩れ落ちる氷塊。
「ッ…………!」
その光景を見た飛鳥は驚きのあまり口をパクパクとしている。
「良かったじゃねェの、殺してなかったじゃん」
謙之から目を逸らさずに響介は飛鳥にそう軽口をたたく。
「いや、まぁ……確かに良かったと言えば良かったが」
たらり、と冷や汗をかきながら飛鳥はそう響介の方に顔を向けずに答える。
「……」
飛鳥は、景気の悪い顔を浮かべながら考える。
響介はそう気軽に言うが、実際のところ、この状況はかなり、よろしくない。飛鳥の刀の能
力(武器)は、奇襲だったからこそ通用したものだし、響助のかくし球であるあの紅い閃光は
殺傷能力を上げれば未来予視により察知されかわされてしまう。先程放った紅い弾丸のようなものも、次はかわされるだろう。それに、飛鳥の刀は――――
「■■■■■■■■■■■――――‼」
そんなことを考えていると、謙之がまた迫りくる!
「っ!」
飛鳥は、即座に対応し、鋒を振るう。今度は、斬撃で氷塊ではなく、氷の礫を生み出す。
広範囲に飛散するそれは、ケンスケの退路を無くす。
「■■■■■■■■■■■――――⁉」
無数の礫は謙之の肢体を容赦なく殴り付ける。が、やはり決定的なダメージを負わせることはなかった。
「――――クッ!」
飛鳥はもう一度刀を振るうが、何も起きない。
「な、しまっ――――」
どころか、刀は砕け散り、大量の破片をまき散らした。
「■■■■■■■■■■■―――――‼」
得物を失った飛鳥の都合などお構いなしに、謙之は襲い掛かる。
ヴォン‼ という音と共にサッカーボールほどの大きさの拳が飛鳥の横っ腹を殴る。
「がっ! ――――か、はっ」
飛鳥はノーバウンドで数メートル飛ばされる。
謙之は止めにと倒れた飛鳥に殴りかかる。
が、何かに気付くように謙之は一瞬体を震わすと、一気に横へと飛び退く。直後、
ズババババババババババンッ! という無数の空を切る音と共に大量の紅い閃光が迸る。
「――――全三〇〇弾、一斉掃射完了」
いつの間にか氷の壁のこちら側へと来ていた響介が弓を構えるような格好でそう呟く。
「ったく、もっと練度上げろ。効率よくプログラムを立てろ。力を使い切った後から消失するまでのタイムラグが大きすぎだ、阿呆」
響介は飛鳥にダメ出しをしながらこちらへと歩いてくる。
「おら、立てよ」
そう言って手を掴む。
「あ、ああ……済まない――って、阿呆とはなんだ⁉」
「阿呆に阿呆と行って何が悪い阿呆。阿呆と言われたくないのなら、もう少し自分の能力を考えて使えこの阿呆」
「アホアホ言うなー!」
計六回、響介の阿呆に阿呆と言われ、ご立腹の飛鳥。
「というか、さっきの口ぶりだとやはり自分の能力を知っているんじゃないか」
「知らねーよ。さっき言った事は嘘だとしても、お前の能力は毛ほども知らねぇ。お前の能力がどういった側に付くのかだけは知っているし、その力の使い方、従え方を、誰よりも知っているだけだよ」
飛鳥の問いにそう答える響介。
「それより、ちいとばかし話がある。あの氷の壁の方に一旦退くぞ」
「あ、ああ」
訝しく思いながらも、響介の言葉に飛鳥は頷く。それを見て響介は一言つぶやく。
「突破口を見つけた」
飽きずに読んで下さった方、今日は。今回読んで下さった方ははじめまして。轟工務店の者です。
節分も終わり、次に来るはバレンタイン。チョコを渡す予定のある人、貰う予定のある人、どちらの予定もない非リア充の皆さん、バレンタインの予定はもうお決まりですか? 私はそんな事より次の日が誕生日なのでそっちに気持ちがはしります。ケーキとか誕生日プレゼントとかいらないんで、お金下さい。
まあ冗談はさておき、あと少しで入学編終わりです。どうぞ、次回も読んでください。
ご意見、ご感想がありましたらいつでもどうぞ。お待ちしております。