第七章~響介の隠し玉~
新年、あけましておめでとうございました。昨年から楽しんでくださっている方は今年もよろしくお願いします。今年から読んでくださっている方は、これから長い付き合いになってくださるよう、お願いします。
前回はたしか響介が圧死する辺りでしたっけ(まあ死んではいませんが)。そこからどうなるかはお楽しみください。
「クソッ――――‼」
響介が謙之に踏み潰される様を見て、裕也は二人の元へ走り出す。
「はい、ストーップ」
「グエッ!」
が、修三に襟を引っ張られ、戻される。
「なっ、何するんですか!」
「あのなぁ、お前があそこに行ったところで状況は変わらんだろう」
いきり立つ裕也に修造は溜め息混じりにそう言う。
「なんら力を持っていない貴方が、あそこへ行って何をする気ですか? ただ無駄死にするのが落ちです」
千歳が至って冷静なまま言う。
「……‼」
千歳に指摘され、裕也は言葉に詰まる。
「そこでいまだに呑気に眠っている樋川さんならともかく、アナタは足手まといでしょう」
そう言って足元で場違いにも気持ち良さそうに寝ている京を一瞥する。
「そんなのっ! やってみ――」
「やってみなくとも結果は目に見えています。そんなもの、時間と命の無駄というものです」
「ぐ……」
何も言えず、押し黙ってしまう。
「それに、そろそろ先パイもやる気を出すでしょう」
「えっ?」
どういう意味かと、裕也が聞こうとする。直後、謙之がその場から唐突に飛び退いた。
――――Interface――――
謙之が踏みつけ、抜けた床から濛々と埃が煙のように辺りに舞っている。
「■■■■■■■■■――――?」
謙之は足元の違和感に猛々しい首を傾げる。
「■■■■■■■■■――――‼」
そして、謙之は何かに気付き、その場から間髪入れずに飛び退く。
それから数秒おいて朱色の光が上に向かって弧を描くように一閃する。
「――――ああ、クソ。やっぱ感覚が鈍ってやがる」
床が抜けてできた穴から、どこか愉しげな声がした。
「ここ最近、ずっと鍛練サボってたからなぁ。タイムラグが一秒以上もあるじゃねぇか」
ケタケタと笑いながら響介は穴から這い出る
「■■■■■■■■■■■■■――――‼」
仕留め損ねたことに対して怒っているのか、謙之は咆哮を上げながら響介に迫る。
それを見て響介はニィ……と、口の端を歪ませる。
「■■■■■■■■■――――⁉」
が、あと一歩で自分の攻撃範囲だという所で謙之はまたも後ろへ飛び退いた。そして、一拍おいてからもう同じくまたも朱い光が一閃、響介の周りに弧を描く。
「あ? 発動までタイムラグがあるにしろ、勘づくのが速すぎねぇか? さっきもそうだが、俺が意識する前に既に回避行動をとってやがるな」
響介は不思議そうにそう言った。
「へい、会長ちゃんー?」
「都合の良い所で頼らないでくれる⁉ ……彼は、能力を二つ持ってるの! 身体強化と、未来予知!」
響介に訊ねられ、文句を垂れながらもちゃんと答える香織。
「チッ、予知系の能力持ちか。面倒だな」
忌々しげに呟くと響介は溜め息を吐く。
「なーんか、一気にやる気なくなった……」
「モチベーション下がるの早っ!」
響介のやる気のない言葉を聞き香織は思わず突っ込む。
まあ響介の方にやる気がなくとも相手である謙之は思いっきりヤル気満々なうえ理性が吹っ飛んでいる訳だから、響介の意見なんてないに等しいのだが。
「■■■■■■■■■――――‼」
言った傍から謙之は突進を仕掛ける。
「何でさっきから突進しかしてこないんだよ。バカなの?」
やる気なさ気に響介が訊ねる。
「って言っても、話し通じてねぇか」
響介は倦怠感を剥き出しにして呟く。
「■■■■■■■■■■■――――ァ‼」
謙之は途中で足を止めると近くにある響介がばら撒いた武器からククリ――刀身がくの字に折れ曲がった内反りのナイフ――を手に取り、おもむろにそれを響介に投げる。
「ぐわっ! マジかよっ?」
虚をつかれた響介は飛来する凶刃に体を引き裂かれる!
「ンな訳ねえだろ! ……今のは流石に驚いたけど」
響介は飛んでくるククリを間一髪カードに戻す。カードは、そのまま響介の袖の中に滑るように入っていった。
「ちっ。まさかあのナリで知性が残っていたとは……予想外だ」
響介は吐き捨てるように言うと右手の人差し指を謙之に突き出す。
「発射ェ――――――‼」
響介の言葉から一拍おいて一瞬、朱色の閃光が迸る。
「■■■■■■■■■■■■■――――――――⁉」
閃光は、謙之の左肩を貫いた。
「っしゃ! 予想通り命中‼」
それを見た響介は子供の様にガッツポーズをとる。
「ちょっ、なにやってるのよ!」
香織が文句を言う。
「なにってアイツにダメージ加えただけだろう。別に死にゃしねえって」
響介はケラケラと笑って返す。
「それに、五体満足のままにしたまま倒せる相手でもないだろう」
そう言って謙之の方へ意識を戻す。謙之はもう一度、今度は複数の武器を響介に投げる。
「芸がねえな。ンなもんいくらやっても結果はおな――――」
――――轟っっっっっっ‼
激しい音と共に、分厚い氷の壁ができる。謙之が投げた凶器は、尽く響介に触れることも、カードに戻されることもなく、分厚い氷の壁に阻まれた。
「なっ……なんだ、こりゃあ」
響介は目の前のソレを見つめ、驚愕の声を漏らす。透明度の高いソレは、向こう側の謙之を容易に認識できた。
アクションシーンなんかで効果音や擬音で漢字使うとやたらとカッコイイですよね。でも扱いが難しいんですよ(笑)。『ズバン!』とかってどうやって漢字にすればいいんだよって話ですし。
今回のお話は楽しんでいただけましたでしょうか? それでは次回でまた会いましょう。
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