第四章~復活の香織! そして……~
皆さんこんにちは。お久しぶり、です?
前回までのあらすじは、こんな感じですかね? 運悪く落ちる気でいた高校に受かってしまった響介。入学式当日に退学届を何故か生徒会の香織に渡し、即却下されてしまう。しかし決闘して響介が勝てば、退学を認めると言われ喜んで飛びついた響介。
そして、結党直後にあっさりと香織を倒した響介はそのまま帰ろうとした。がしかし! 香織ちゃんファンクラブの男たちに行く手を阻まれ、その間に香織が目を覚ましてしまった!!
復活してパワーアップをした香織の魔手によってピンチに陥った響介がとった奥の手とは!?
それでは第五章、お楽しみください。
香織は紅葉と青葉の姉弟に介抱されている所に目を覚ました。
「あっ香織ちゃん、起きた?」
紅葉は香織が目を覚ましたことに気づき話しかける。
「う、っつ~~……」
香織は起き上ろうとし、ズキンッと頭が痛み顔を歪める。
「面をつけていたとはいってもああも思い切り頭蹴られちゃ痛いでしょ」
そういって紅葉は氷嚢を香織の頭に付ける。まるで病人だ。
「ん。ありがと、紅葉さん。少し楽になった」
そういって香織は氷嚢を紅葉から貰い、自分で患部を冷やす。
「あだっ⁉」
だんだんと痛みが引いてきたころ、裏口の方から、鈍い音と共に、短い悲鳴が上がった。
驚き三人は(注・三人目は影の薄い青葉である)声のした方を見ると、サンダルを傍らに響介が倒れていた。
「……サン、ダル?」
サンダルを見て裕也はアホ面下げて呟いた。
「うーい。そこ、喧嘩止めろー」
片方だけサンダルを履いた税金泥棒な無気力教師、中山修平が気だるげに呟く。
修平は響介の元まで行くと、サンダルを取ってはいた。
「え、あれ? 何で中山先生が……?」
香織は放心したようにそう呟く。
そのまま響介、哲也、修平の三人が会話をしていく。
「えっと、あれ? 何がどうなって……」
響介に――面越とはいえ――頭を思い切り強打されたところで気絶したため、今がどういう状況なのかよく分かっていない。
「あのね、香織ちゃん……(状況説明中)」
紅葉は、香織が気を失っていた間の事を簡潔に説明した。
「何でそんな事になったのよ?」
自分のカリスマ性に全く気付いていない香織は何故野次馬の生徒が響介に怒りを表したのかよく分からない感じであった。つまり香織はバカである
「なんか今、もの凄くムカつくこと言われた気がするわね」
ムッとした顔をする香織。……本当、勘のいい奴め。
「そう? よく分からないけど」
不思議そうに紅葉は呟く。
「まぁ良いわ。それより紅葉さん、私の木刀あるかしら?」
「あの、それなら僕が持ってきました」
いつからそこに居たのか、青葉はそう言って香織に朱塗りの木刀を渡す。
「ありがと、須藤クン。いつからそこに居たの?」
「ずっと居ましたよ! 会長が目を覚ました時からずっと‼」
必死にそう叫ぶ青葉。正直、全く気付かなかった。
「そ、そう? ごめんね、気づかなかったわ」
香織は苦い笑みを浮かべてそう言った。
「それで、どうする気なの?」
紅葉は、答えなど解かってはいたが、それでも訊ねる。
「決まっているでしょ。まだ気絶しただけで、負けたワケじゃないんだから、行ってくるわ」
対し香織は、笑顔でそう答える。
気を失えばその時点で負けであろうが、お嬢様気質な香織はそれを認めない。
「ハッ!」
そのまま一気に跳躍し、背中を向けている響介に木刀で殴りかかる。
「油断してたいら足元掬われるぞ?」
中山は香織を一瞥して、そのまま響介にそう言った。
「何言って……、⁉」
響介はこちらに気付き、そのまま横へ跳ぶ。
――ガンッ!
響介に躱され、そのまま床を破壊する。間近にいた裕也は、それを見て驚愕する。
「おぉお~~~。危ねぇ危ねぇ。まさか会長ちゃんがこうも早く目ぇ覚ますとはな。狸寝入りでもしていたのかい?」
冷や汗を垂らしながら、響介は軽口をたたく。
「生憎ね。私は寝覚めが良いタイプなのよ」
香織は凛とした笑みを浮かべ、そう答える。
「そーかい。それじゃ、今度は永眠させてやんよ」
そういって響介はさらに後ろへと逃げる。
「あら、大口叩く割には逃げているだけじゃない」
響介へ軽く挑発をする。
「悪いねぇ。尊敬する動物は節足動物のクモ類全般なんで」
ヘラヘラと訳の分からない事を言って返す響介。
「満を持して、安全に得物を狩る。……最高だと思わない?」
香織の攻撃を躱し続けながらそう訊ねる。
「あら残念ね。私は蜘蛛が大っっっっ嫌いなのよ。だから……全く理解できないわ、ねぇ‼」
力強く踏み込み足を狙う。
「おっと! 危ねぇな……。のわっ⁉」
紙一重で避けたと思うと、木刀は途中で軌道を変えて切り上げてきた。
「やっべ、ちょっとカスった」
響介はそういって、腕をさする。
「今のを避けるなんて、やるじゃない」
攻撃の手を休めず、感心したように言う香織。
「ああもう、面倒だな」
そう呟いて、響介は一枚のタロットカードのようなものを取り出すと、
「――Set Оn. material」
小さく呟く。
「何、それで占でもしてくれるのかしら?」
「まさか」
香織の問いを、鼻で笑い、否定する響介。
「ただまぁ、」
響介はカードを強く握りしめる。
「死んでも恨むなよ!」
先ほど永眠させてやるとかいっておいてそう言うか。響介はカードを持った手を長柄の得物でも扱うように振る。
「なっ⁉」
香織はカードの変化に一瞬早く気付き、二・三、後ろへさがった。
「おやおやおやおや? 驚きだなぁオイ。今のフェイントを避けるなんてヨォ」
「驚きなのはこっちよ。まさかカードが武器になるなんてね」
そう言って香織はイヤな笑みを浮かべる響介の手に持っている物を見る。先ほどまでカードを持っていたその手には、薙刀が握られていた。
「それ、何かの手品かしら?」
「あんまし驚かねーのな……。ま、似たようなもんだ」
香織と問いに曖昧に答える響介。
周りの皆も驚きこそすれ、騒ぎ立てる者は一人もいなかった。やはりこういった事に慣れているのだろうか。
「詳しい事はお前の墓前ででもしてやるとして」
響介は言うなり薙刀を両手で構える。
「いやー。胴衣の下はサラシとか、分ってるね~、会長ちゃん」
ヘラヘラと笑いながら香織の胸元へ視線を向ける響介。
「へ? ……ひゃっ⁉」
響介の言葉に香織は胸元へと視線を下ろし。直後、顔を真っ赤にして胸元を隠した。
先程の響介の奇襲で香織の胴衣が胸元の辺りを丁度良く切り裂いていたのだ。
「いやいや。成る程ねー。サラシ巻いてたから時間掛かったんだ~。へー」
ニヤニヤと悪意のある笑みを浮かべる響介。
「あ、ああああアナタねぇ‼ ワザとやったの⁉」
顔を真っ赤にして叫ぶ香織。
「いやまさか。ワザとやるならそんな中途半端にヤんねーって」
大笑いしながら、ナイナイと手を振る響介。
「むしろ全裸にひん剥いてやんよ」
発言がいろいろ最低である。
「でもイイじゃねーか。サラシなんて見せる為のブラとおんなしだろ?」
悪びれる気は一切なかった。
「良くないわよ‼ 大体見せる為に付けてる訳ないじゃない‼」
そんな響介の発言に怒鳴り返す香織。相手にするだけ無駄に疲れるのに。
「まーまー。それよかさっさと終わらせようや? これ以上続けんのもめんどわぅちっ⁉」
響介が言い切る前に香織は攻撃を再開させる。
「言われなくても、やってやるわよ‼」
羞恥で赤くした顔を怒りで更に朱にさせがら香織は叫ぶ。
「そう来なくっちゃな‼」
薙刀を一閃、香織の木刀を真っ二つに叩っ切るつもりで振り下ろす。
――ガキンッ!
が、ただの木でしかない木刀が薙刀の刃を完全に受け止めた。
「な⁉」
その結果に、響介は驚愕を隠せずにいた。
「……アナタ、私の武器を壊そうとしたんでしょうけど、生憎と特別性なのよ」
冷や汗を流しながら香織は笑って言う。
(流石に、防ぎきるとは思っていなかったけど)
どうやら、まぐれだったようだ。
「見た感じ、材質自体は木材と全く変わらなかった……。なら強化した? イヤだが強化魔術であるなら微量でも魔力は帯びていたはず……」
響介は何かブツブツと呟く。
「成る程。お前、能力者だな? 物質の硬化あたりか?」
「……さっきのカードもそうだったけど、アナタ一般人じゃないのかしら? 正解よ」
響介の問いに、したり顔で返す香織。
「ま、な。今は一般人じゃなく、一介の学生やらされてらぁ」
少し……と言うか凄くピントのズレた事を言う響介。
「ちょっと博識なだけよ」
そういって、柄尻で香織を攻撃する。それを紙一重で躱し、そのまま響介の足に切りかかる。
「おっと、危ねぇ」
それを躱せない判断し、と響介は、薙刀で間髪入れずに防ぐ。
――バキッ!
「はい?」
響介は、手元の薙刀の柄が真っ二つにへし折れたのを見て、素っ頓狂な声を上げる。
「おいおいおいおいおいおい。俺のお気に入りが折れちまったぞおい。いくら硬化されているからってコレはないだろ」
「あらあら、ごめんなさいね。まさかそこまで脆いとは思わなかったものだから」
イヤらしい笑みを浮かべ、香織は悪びれた様子もなく謝る。
「あー。もういいよ。いっぺん戻せば治るし」
そういって響介は薙刀をカードの姿に戻して懐に入れる。
「あら? やっぱりそのカードが本体だったの?」
「ちげーよ。コレはあくまでも入れ物だ……っと、――Set」
そう答えながら新しいカードを取り出す響介。すると、またしてもカードが武器になっていた。
次に響介が手にした武器は、同型の短剣二本だった。
「ホント、傍から見たら手品ね。それ」
その一連を見て香織が呆れたように言う。
「まー、そうゆーな。……それじゃ、続きと逝きますか」
漢字がおかしい。それでは三途の川のむこう側へ行く事になる。
響介はそういって少女へと突っ込む。そして香織ではなく香織の持つ得物を重点的に切りつける。
「そォれそれそれぇ! どうした。防戦一方じゃねーの?」
右の短剣を叩きつけ、引きざまに左の短剣を切りつける。この一連の動作を繰り返し、反撃の隙を与えずに切りつける響介。
「うっさい、わね。――くっ、……すぐに、アンタなんか倒してやるわ、よ」
口ではそう言うものの、やはりどうやっても反撃できそうにない。
「粘るねぇ、頑張るねぇ。腕、痺れて来たんじゃない? 何でそこまでがんばんの?」
やっぱり、俺に惚れたか? と手を止めずにふざけて言う響介。
「そんなわけないでしょ! ・・・・・・・・・・・・悔しいからよ‼」
そう言って香織は、右の剣を弾き返し、その反動を利用して左の剣も弾く。
「ワオ、すげぇ。……て、のわっ⁉」
そのまま香織は響介に攻撃を加え、響介はそれを、剣二本を使って辛うじて防ぐ。
「今度は俺が防戦一方ってか? ……で、悔しいって負けたことが? ならイイじゃねか。人は敗北を知り、挫折を知って大人になるって、どっかの偉い人も言ってたと思うよ? うん」
香織の渾身の攻撃を、受け止めながら響介は言う。
「それもあるけど、違うわよ!」
そのまま鍔迫り合いに持って行きグイグイと力技で押しながら、香織はそう言った。
「矛盾してんじゃん、それ。……で、じゃあ何なんだよ。何が悔しいってんだ?」
香織の言葉にツッコみと質問を同時に響介は投げかける。
「――自分の通っている学校を……」
肩を、ワナワナと震わせながら、近くにいる響介にしか聞こえない程度の大きさで、香織は呟く。
「……自分の好きな学校を、新入生が、この学校の良さも知らずに、入学したその日に『来る気がなかったけど合格しちゃったから来ました。でも、面倒臭いから辞めます』なんて言って、笑顔で退学届出されちゃ、悔しくなるに決まっているじゃない……‼」
ポロポロと涙を流し、嗚咽を漏らしながら、訴えかけるように香織は叫ぶ。
「……」
響介は、そんな少女の訴えに、黙って心の中で呟く。
(……所どころ支離滅裂な部分もあるが、何を言いたいかは……まぁ、分りたくなくとも分るわな)
泣きながらも全く手を緩めない香織に押されながら響介は心の中でそう呟く。
「……」
そして、その話を遠巻きから聞いている少年がいた。聴覚だけは無駄に良い哲也も、香織の言葉を聞いていた。
「そーかい。ま、内容はいまいち理解出来んが、要約すりゃ『テメーの好きな学校がその学校の良さを一つも知らない野郎に馬鹿にされた感じで悔しい』って所か」
響介が嘘を交えて言うと、香織は小さくコクッと肯く。
「……、それも踏まえてお前、に……一言うぞ」
弱まるどころか強まってきている香織の押しに、腕をプルプルと震えさせながら耐える響介は、そう言った。
「何よ?」
下を向いたまま、ぶっきらぼうに訊ねる香織。
「知るかよンなモン――――――‼」
大声で叫び、あっさりと一蹴した。
「……⁉」
「(ズルッ)」
予想外の発言に、目を見開き顔を上げる香織とズッコケそうになる哲也。
「よっと。……俺には全く興味がねー。そういった事ぁ漫画や小説の中だけで十分だ。現実世界に持ち込むモンじゃねーだろ」
響介は相手の力が少し緩んだのを見計らって後ろへ跳び、間合いを取ると、そう言った。
(ま、響介の性格を鑑みればこういう結果になるのは当然っつったら当然だな)
一人、状況の分る哲也は、心の中で格好つけたことを呟いていた。
それに、と響介は付け足す。
「お前、俺が来る前に今年は退学の早さ更新する奴が来るかって楽しんでたじゃねーか。それはどーした?」
「なッ! 聞いてたの⁉」
香織は赤面しつつ訊ねる。響介はそれにイヤらしい笑みを浮かべて頷く。どうやらしっかり聞いていたらしい。
「つーわけで、もう面倒だ‼ やい、野次馬共! どーせ、ココで会長ちゃんを倒したら、また何かしらのイチャモン付けんだろ」
響介がいきなり大声で周りの野次馬に話しかける。
「それは俺としては死ぬほど面倒なので、お前ら全員、かかってきやがれ‼ 会長ちゃん共々ブッ殺してやらぁ‼」
香織を含めた周囲の人間が、響介の発言に唖然とする。
「まただ。また始まったよ」
裕也はそう呟くと、こめかみに手を当てる。
小学校の時にもよくあった事だ。ああやって何かしらの理由でタガが外れて暴走する戦闘狂みたいなもので、ブッ殺すと言っている時点でもう完全にスイッチが入っている。
「つーわけで、三十秒だけ待ってやる。その間に会長ちゃんに加勢するかそのまま帰るか決めろ!」
皆がポカンとしているのも気にせず、響介はそう言う。
「はい十ー」
『はや⁉』
その場にいる他の人も、みんな一斉に響介にツッコんだ。
「はい二十ー」
これでは一秒の内に十数えている事になる。
「はぁ……」
隣りで哲也が同じくこめかみを押さえながらため息を吐いていた。
「Zzzz……」
いつの間にか京は裕也の足にカバンを置いて、それを枕にして寝ていた。
「はい三十ー。それじゃ、喧嘩を再開しますかー」
そうこうしているうちにもう三十数えていた(実質、三秒程だ)。
「なっ、ちょ。ま、待ってよ!」
いまいち状況を掴めていないのか、香織は挙動が不審だった。
「だが断る」
言うと響介は、いまだに要領を得ない香織に向かって特攻をかける。
「えっ? ま、ちょっ、うわぁっ⁉」
響介は、自分の間合いまで詰め寄ると、両手の短剣で袈裟切りにせんと腕を振り上げる。
「ドバイッ⁉」
が、直前に何者かに横から顔面に蹴りを入れられ、そのまま何度かバウンドし、数メートルほど飛んだ。
――――to be continued――――
響介「奥の手? ンなもんまだ出すかよ」
だそうです。奥の手の代わりに、変なのが出てきましたね。そして響介があっさりと破れました。よっわーい。
さて、次回は響介をぶっ飛ばした人が誰か明らかになります。それではまた今度。