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せんせい  作者: そら
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養護教諭・新岡聡先生

 せんせえ、と甘だるい声を出しても振り返ってはくれなかった。


 職員室に居座って働く先生らの横顔と後姿をひたすらに眺めるのが趣味である。というとなかなか変人に思われるのだが、本当に変人であるから否定の仕様がない。授業中も職員室にいるという、中学二年生にしてあほらしく学校公認のサボりをくらわして、私有川みさとは今日も職員室にいた。

 私は毎週自分の中で適当に先生を決めて、一週間学校でその先生と行動するというパターンで動いている。今週は保健室の養護教諭・新岡聡(にいおかさとし)先生。

 いまどき珍しいコスプレのような白衣を羽織って、生徒が来たとき意外は趣味のパソコンをずっとやっている、三十五歳独身。声が低くてひっそり学校内の声フェチ女子には結構な人気を保っている。顔も少したれた目がパンダのようで愛らしいと騒ぐ美術部員がいるが、この教師の問題はなんでもない、中身だ。

 片付けはできない上にややロリコンなところがある。ショタコンではない。女子贔屓なところがあるが、きちっとした真面目なシーンではきちんと女子男子平等に扱う器用なところがあって、うらみたくてもうらめない。適当で、恋愛が下手で、時間にルーズ。見た目はいいのだから彼女は過去にいたことがあるらしいけれど、まあなんだ、私の先生情報の中に、先生がうまく恋愛できたという過去のデーターはない。

 すごく、いろいろと「惜しい」人間だ。

「さとしてんてー。使ったものは片付けるんですよーぅ」

「ああ、うん、お前今週俺なんだろう。ほかの先生みたいにお前に文句たれてないんだから、お前が片付けろ」

「はー? 私二日前片付けたんですー。こんな汚くてきる才能はきっとやばいっすよ、なんかの遺産に登録できますって」

「一生楽して過ごせる保障つきだったらそんな変な遺産になってやってもいいかもな」

 いいながら、狭苦しい保健室の隅に置かれた机のいすから立ち上がる。

 どこいくんすか、さぼりっすか、私もいく。ベッドに腰掛けた体を持ち上げないままたずねた。ちげえよと声は返ってきたけれど、その足が向かうのはやっぱりこの保健室の外で、さぼりだと勝手にきめつけて私もベッドから降りた。かくいう私も授業をサボtっているわけだが、そこはなんら問題もない。

「トイレだ、あほ。ついてくんな」

「トイレは右っすよー。なにしに左にまがるんすか。えーなに、今年で四年目なのにいまだに学校のトイレの場所すらわかんないの? えー、二年と少しの私でもわかるのに。だっさ」

「うっぜー。まじうっぜー」

 そのままついていくと、向かっていたのは職員室だった。物でも取ってくるんだろうかと思って、ドアの前で足を止めた。顔だけなかに入れる感じで先生の後姿を見つめる。

 机の上に上がっていたメモと書類を持って、先生はもどってきた。

「なんすか、それ」

「三組の田中、今日休みだってよ」

「田中ってあの、万年学年二位のあいつ? へー、ガリベンっぽいきのこ頭っしょ。うーん、いろいろかげ薄いですよね」

「そ、お前に毎回負けてるあの田中君。つか、お前その男子の使う下手な敬語みたいなしゃべり方やめたらどうよ。変だぞ」

「先生に対して敬語使おうって気持ちあるだけよくないすか? さとし先生に敬語つかってくれんのなんて、あの美術部部員だけでしょ」

 は、と乾いた笑いだけ返ってきた。

「うっわ、せんせ、携帯持ってたんですね」

「あー? そりゃまあ、三十すぎてるけどよ、必要だろこれは。生活必需品だ」

「えー、メアド、メアド交換しましょ」

 やりかたしらねえし、といいながらこっちに投げつけられた少し古い黒い携帯を受け取り、かちかちとボタンを操作する。

「せんせ、メアド初期設定のまま」

「変え方がわかんなかったんだよ。うっせー」

 な行に加わった名前をみて満足して、せんせえわたしねまあすとけだるい声をだしてベッドにダイブした。



***

続きは少しいやらしくなってしまったので自重しました。

有川さんが「せんせい」と仲良くする様子をつらつらとかけたらいいなとおもいます。更新は不定期です。一ヶ月くらいは更新はなかなかのスペースであると思います。

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