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向こうの学校に行っても友達でいてくれるよね 6

全てが終わってしまえば後片付けなるものをやらなければならない。僕もその例にもれずダンボールを回収場所まで運んでいた。

「はあ・・・」

ため息交じりにもなる。まさに全校生徒に恥をさらしてしまったわけだ。それもお化け屋敷に来なかった生徒たちにまで強制的に。これで落ち込まないやつがいたらそいつは真正のMだ。

「君ではないかっ!!」

「ちゃうわい!」

関西弁になってしまった。そういえば関西人でもないやつが関西弁を無理して使うのって結構ださいよな。まあ、今の僕なんだけど。

「まあそう落ち込むな、耕太。おもしろかったぞ」

さつきさんなりに慰めてくれているらしい。ならば僕も大人にならなければならないのかもしれない。

「君の慌てふためく様子がこう、な?」

「本人に同意を求めるなっ!」相変わらず。

しばらく忙しかったので距離感を忘れかけていたけれど、たしかこんな感じだった。

「やれやれ、マングース並みの脳みそだな。この私の性格を忘れるなど」

「・・・・・・」

マングース。沖縄のハブ対策に持ち込まれた哺乳類だ。

「蛇と言えば私はヤマカガシが好きだな。あの毒々しい色は一度見たら忘れられん。かなり前の話になるが私に向かって鎌首をもたげられれた時はさすがにビビったな」

「アウトドア派だったんですね・・・」回収場所にダンボールを置き、再び教室に戻る。

「耕太、先に帰っていいか?私はさすがに疲れたぞ」

疲れるらしい。幽霊なのに。これも相変わらず。

「いいですよ。今日は片付けだけですし」

ちなみにこの学校には後夜祭がない。何年か前に延焼事件があってなくなってしまったらしい。火を使わなければいいだけなんじゃないかとか思うのだが、そこはそれ、お堅い大人たちの考えることである。そして当日の打ち上げはだめ、とかいう意味のわからない校則まである。当日のテンションで行かれると事件になりやすいということだろうか。というわけで僕は片付けが終わったら家に帰らなくてはならない。

さつきさんは白装束を翻して行ってしまった。これが彼女の白装束姿を見る最後だと思うと後姿だけでも凝視しておこうと思う。それとも来年のクラスでもお化け屋敷にしようか・・・。

そこまで考えてふと思う。来年は僕らにあるのだろうか?さつきさんと過ごしてもう2カ月が経つ。この幸せはいつまで続くのだろうか。前に50年くらいかけて捜すと言ったが、あれが冗談なのはお互い承知の上だ。来年もこの幸せは続いているのだろうか。そして、僕にとってのこの幸せは、彼女にとっての本当の幸せなのだろうか・・・。

「蛇の道は蛇って感じでほかの幽霊さんとかがいれば何かわかりそうなんだけどな」

霊媒師の方にでも相談してみようか。いやだめだ。さつきさんが強制的に成仏させられてしまったらどうする。

「蛇か。ヤマカガシが好きってどんな女だよ・・・」別にいいのか。

あれ?そういえば・・・。

僕以外の存在。人間だけではなく犬も猫も鳥もさつきさんには反応しない。僕はそれを知っている。それなのに蛇は鎌首をもたげたのか。かなり前の話になると言っていた。だとしたらそれは生前の話になるのではないだろうか。

「漆根君。そこに立っていられると非常に邪魔なのだけれど」

「あ、ごめん」春日井さんは相変わらず忙しそうに指示を出している。できる女性だ。

「春日井さん、ヤマカガシって好き?」なんとなく聞いてみたが、どんな質問だこれは。

「そうね。漆根君よりは存在を許せるかもしれないわね」

「・・・・・・」

知ってた。僕こうなるって知ってた。まさに藪蛇。

「そもそも見たことないわ。昔は田んぼに結構いたらしいけどもうこのあたりにいないんじゃないかしら」

一応ちゃんと答えてくれた。

「環境が変わってしまったせいね。つまりは漆根君のせいよ」

「何でもかんでも僕のせいにするな!」

春日井さんはそんな突っ込みを無視してまた忙しそうに歩きだした。

結局何も分からずじまいだ。さつきさんがこのあたりに住んでいた人なら結構昔ということになるが、そもそも出身がわからないのでどうしようもない。

ふと顔を上げると春日井さんが立ち止って深く考え込むしぐさをしていた。

「どうしたの・・・?」あまりにも神妙な面持ちだったので、僕もつい恐る恐る尋ねてみる。

「漆根君もなんていうか、板についてきたっていうか。まさか鞄にヤマカガシを入れてほしいなんて自分から言ってくるなんて・・・」

「言ってねえ!」どんな拷問だ!

え?なに?フリだと思ったの?僕ってそんなこと突然フるようなキャラの位置づけだったの!?

「そうよね、もし漆根君に6の力でジャブを入れられたら私としては1000の力でロードローラーを持ちだすしかないわね」

「全力投球過ぎる・・・」何倍返しだ?

「目にはナイフを、歯には砲丸を、よ」

「それじゃただの拷問法の紹介だ!」何ムラビ法典だよ!!

「そう言えば拷問と言えば・・・」

「やめてやめて!春日井さんの口から『拷問と言えば・・・』から続く言葉を聞きたくない!」

聞いちゃいけない気がする。多分呪いのビデオよりも怖いだろうよ。

「そう、残念ね。ぱふぱふとは一体どのような行為なのかについて考察を深めていこうと思っていたのに・・・」

「・・・・・・」

なんだろう、この若干残念な感じ。しかしぱふぱふって春日井さんの中では拷問に入るのか?

「あれってかっこよさが上がるじゃない?私は実は顔を思いっきり殴って逆に色男にする妙技のことだと思うのよね」

「ドラ○エの主人公全員ドMかっ!?」

あの人たち魔物にやられて気持ちよさのあまり1ターン何もできないんだよ!?やだよ、顔変形するくらい殴られて喜ぶ勇者は!そんな奴に世界を救ってほしくない。

「結局自分を救えるのは自分だけっていう教訓ね。さすがスク○ア・エニックス。奥が深いわ・・・」

「なぜそんな大事なメッセージをぱふぱふに隠したんだ・・・?」

ま、それはそれ。あんまり鵜呑みにしないように。

「ああ、そうそう、漆根君。明日は日曜日だけど予定開けておいてね」

ん?

どういうこと?・・・ってあれ?説明もせずに行っちゃうの?せめて時間とか言っておいいてほしい。なんか用事があるってことはわかったんだけど、どうするんだよ、その用事が夜9時くらいに電話をするっていうものだったら。僕の一日が大変もったいないことになるよ。

まあ、日曜日はだいたいいつも暇だけど。



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