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大隕石襲来っ!? 3

ごくりと、僕は唾を飲む。

「そうですね・・・僕の人生で一番不幸な出来事を教えてあげましょう。僕のフられ回数が100回を記録した時のことです。流石の僕でも三桁の人にフられるともう自分自身の存在意義が見出せなくなります。このまま死んでしまおうかとも考えたんです。しかし、そこで僕は思いました。今僕が死んだら悲しむ人がいるんじゃないかって。そう、家族です。だからやっぱり僕の家に帰ることにしました」

ごく、とさつきさんも唾を飲む。審査員のように鋭い目が怖い。さあ、僕の不幸を存分に笑うがいいさ。

「家に戻って、僕は部屋に入りました。しかし、何となく違和感がある。なんだろうかと思ってみると、僕の部屋から金目のものがすべて消えていました」

「泥棒か、それは追い討ちだな・・・」

「いえ、この話はそれだけでは留まりません。絶望している僕の背後でノックもなく、ドアが開きました。つむぎが入ってきたんです。そして、つむぎは僕に一言―――

「あれ?耕兄、何でまだ生きてるの?と・・・」

「号泣ものだっ!!」

「ええ、そうでしょう。目の前が真っ白になりましたよ。流石の僕も妹に怒鳴り散らしましたよ。泣かせてやりましたよ。兄妹揃って泣いてましたよ。するとつむぎが言ったんです。だって、耕兄もう死ぬから金目のものはすべて持って行っていいって言ったじゃん・・・・・・夢で、とね」

「え、え・・・?あの娘はそんなキャラだったのか?てっきり私はしっかりものの代名詞かと・・・」

「いいえ、あいつはやばいです。たまに僕でもついていけないくらいやばい娘です。しかも、この話にはまだ続きがあるんです」

「まだあるのか・・・」

「僕が怒鳴っている時、ちょうど母さんが帰ってきたんです。その頃には母さんはもう僕のことを信用しなくなってますからね、僕が何を言っても無駄でした。それから3時間、僕は母さんに説教され、しかもつむぎに奪われた金目のものは帰ってきませんでした・・・・・・とさ」

「耕太~~~」小さな子をあやすように、さつきさんは僕に抱きついた。笑わせることはできなかったが、許してくれるらしい。もしかしたらこの人にならあの話をできるかもしれない。

「さつきさん、この話にはまだまだ続きがあるんですよ・・・」

「もういい・・・もう、いいんだ」某漫画の幕末時代の追憶編でのセリフのようにさつきさんは言う。男女逆だが。

「流石にこれ以上聞いたら今度から世界の恵まれない子供たちではなく耕太に募金してしまいそうになる」

というわけで、僕の不幸話の続きは墓の下まで持っていくことになった。どうだろう、あるいは春日井さんなら爆笑しながら聞いてくれるかもしれない。

「ところでさつきさんは何を作っていたんですか?」

僕らの感動的な触れ合いが終わった後で、けろりとしている僕は尋ねた。壊れている僕とは違ってちゃんとした人のさつきさんは精神状態を元に戻すのに少し時間がかかっているようだ。何度か深呼吸をした。

「幽霊の白装束だ。とうとう文化祭は明後日だろう?」

実はついにもう明後日なのだ。明後日なのに僕は仕事がなくてぶらぶらしていたのだ。

「私も実は耕太以外の人を脅かすのは初めての試みでな、今から楽しみで仕方ないのだ」

白装束に袖を通してバレリーナのように一周した。残念ながら着ていた服の上からまとっている。さつきさんの生着替えが見れると思ったのに・・・。

ゴッ

顔を思い切り蹴られた。何も言ってないのに、邪な心中を見透かされてしまったらしい。やっぱり僕はサトラレなのだろうか。

しかし、やっぱりお化け役やりたいのか。まあ、ここまで来て断るとさつきさんの手によって、僕がリアルなお化けの仲間入りしそうになるので断らない。ぶっちゃけ僕もさつきさんの本気を見てみたい。

「そうだ、耕太はお化け役なのだろう?何をやるのかまだ聞いてなかったな」

さつきさんはよほど白装束が気に入ったのか、脱がないままカーペットに座った。真新しいワンピースに見えなくもない。少し糸がほつれているけど。

「そこなんですよ。お化け役という事は僕がトイレに行っている間に勝手に決められていたんですが、もう2日前なのに僕には何をやるのか決められていないんです。それでさっき春日井さんに聞いたんですけど、「話しかけないで」と言われてそれから一時間、下校時刻までたっぷりへこんでいたので結局まだわからないんです」

「・・・なんだ、そのセリフはそんなにトラウマなのか。それは悪いことをしたな。だがしかし、師匠も忙しかったのだろう?」

「師匠っ!?」

「ああ、その女子のことだ。いや、女史か」

「春日井さんのこと師匠って呼んでるの!?」何の師匠だ?

「決まってる。いかに耕太をいじめるかという師匠だ。師匠は凄いぞ。もう本当に耕太をいじめることしか考えていない。耕太がいないときでも周りの友人といかに貶めるかを相談している」

「超ショックだ!」まだ僕をいじめ足りないのか?人生かけるほど足りないのか?

「しかしだな、こう考えることもできないだろうか。つまり、師匠は寝ても醒めても耕太のことしか考えていない、と」

「それはめちゃくちゃ嬉しいですけど、内容がいかに僕を生殺しにするかですからね」

ちょうどその時だった。僕の携帯が鳴った。購入当時から変えていない実に面白みのない着信音。すぐ鳴り止んだので、これはメールだ。確認してみると、春日井さんだった。何てタイムリーな・・・。まさかこの部屋の中に潜んでいてタイミングを窺ってたりしないよな。

『ゆうて いみや おうきむ こうほ りいゆ うじとり やまあ きらぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺ』

「最強パスワードっ!?」

説明しよう。ドラゴ○クエスト2のファミコン版では、ロードにパスワードを必要とする。そこでこのパスワードを入力すると能力値がとてつもなく高い状態から始められるのだ。

でもなんで今っ!?しかもメール本文にこれ以外の文がない!めちゃくちゃ意味がわからない!!

「・・・・・・さすが師匠だな」ごくり、とさつきさんは僕の携帯を覗き込んで喉を鳴らした。どうやらさつきさんには意味がわかるらしい。

とりあえず僕は突っ込みと、当たり障りない程度の文を返信する。

「まあ、明日は前日なので、明日になれば何役をやるのか教えてくれると思います」

「ああ、耕太がどんなむごい姿になるのか楽しみだな」

「・・・・・・」

「ああ、違った。どんな怖い姿になるのか、だ。あっ、違う。どんなひどい姿になるのか、だ」

「あってるよ!!」

「ひどいが、か?」

「むごいが!・・・じゃない!怖い、だ!」自分で言い間違えちゃった!!

今日も今日とて僕の心はズタズタになり、明日に備えて早めに寝ることにした。

返信はなかった。




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