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そこに込められているのは敬意じゃなく僕への刑罰だ! 4

というわけで、僕は大した悪態もつけずに階段を2階分下りて校舎をぐるぐる回り、途中で4回休みながら倉庫にたどり着いた。鍵を開け、中に入ると、西日が差し込んでいた。急がないと危ないかもしれない。そういえば先週僕と春日井さんがここに8時近くまで閉じ込められていたんだけどそれはいいのだろうか。まあ、ばれなきゃいいのか。

積んだ机やら椅子やらはあの後あらかた解体したが、若干散らかっている。

「・・・うわあ、赤い」ちゃんと僕の額の血付き椅子もご健存でいらっしゃった。床にも少し点々としている。僕は額の絆創膏をさすった。目立つのでそろそろ取りたいのだが、まだ傷がくっきりと残っているので、迷うところだ。ううむ、今更僕はなに人の目を気にしているんだろう。

僕はすぐさま踵を返して教室に戻る。こんな状況になったのは誰のせいかと言えばやっぱり僕のせいなのだろう。

「あれ?」教室に戻る前に、僕ははたと立ち止まった。薄暗い学校の廊下を向こう側から2人の人物が歩いてくる。ああ、そうか。春日井さんと委員長か。注意事項が終わってこれから帰るところなのか。まあ、僕はこれからもう一回重い荷物を運ぶんですけどね。・・・そう思っていた僕は、すぐに自分の間違いを思い知ることになる。

「リアカー・・・じゃなかった、漆根君。重いのだけれど」感激だった。春日井さんと委員長は2人でアクリル製の箱を持ってこちらに歩いてきているのだった。この際僕の名前をどう間違えようが気にしない。僕は堰が切れて暴走しそうになる涙腺を何とか抑えた。

「遅いよー。じゃあ私はこれで。鍵ちゃんと返してね」二人で箱を僕に押し付けるようにして、自由になった委員長は手を振った。

「あ、委員長」僕が声をかける。委員長は立ち止まったが、立ち止まっただけで、僕の方を見なかった。

「えっと、2年前でしたよね・・・あの、なんていうか、その・・・すいませんでした」

謝るのも変な話だが、それでも僕は謝るべきなのだろう。純粋に一人の人を好きになったわけではなく、ある人の代替を求めていただけなのだから。それは人の人格を一切無視したと言う事で、ならば僕は『畜』じゃなくて『鬼畜』なのかもしれない。

「何の話かな?」委員長は笑顔で振り返った。あれ?覚えてないのか?いや、違う違う。額にちゃんと怒りマークが見える。あれは怒りながらも必死で笑顔を取り繕っている顔だ。だって眼鏡の向こうの目が笑ってないもの。委員長もそれに気づいたのだろう、僕のほうに身体を向けた。

「んん~、別に怒ってないよ」やっぱり目が笑ってない。この人は案外自分に嘘がつけない人なのかもしれなかった。

「怒ってない、怒ってない。完全無欠、富士山の噴火なみに怒ってないよ」

・・・かなり怒っていらっしゃる。はいは一回だが、怒ってないも一回なのだ。日本語って難しい。

「猪木ぐらい怒ってないよ。亀田くらい怒ってない」

「格闘技ファン!?」・・・しかもどれも激怒しているの代名詞だ。亀田は最近更正したみたいだけど。ここで長州を出してこないあたり相当キレている事が分かる。僕の驚愕の表情を見て、委員長は「あはは」と快活に笑った。

「うん、怒ってたけどね」

「やっぱりっ!?」なんだ、この人。

6回も「怒ってない」って言っておいて、急に掌を返した。まあ、怒るのも当たり前か。

「君と同じ空気を吸うだけで頭の血管切れそうだったよ」

「・・・・・・」

そこまでですか。なんだろう、僕は毛穴という毛穴から有害物質でも出ているのだろうか。

「被害者の会で追い込みかけようとしてるくらい」

「ねぇ、ほんとにあんの!?」素早く春日井さんを見ると目をそらされた。

「今は構成人数530人くらいかな」

「多っ!!」

流石の僕もそこまでは・・・。

「リーダーは猿なんだけどね」

「濡れ衣だっ!」誰だ、そいつ。どう考えても便乗じゃないか。

猿・・・いなかった・・・・・・よな?

「・・・でも謝ったから許したげる。・・・投げっぱなしジャーマン4回で」

「死ねる!それは死ねる!」絶対許してねぇ!!

「あはは、冗談冗談。じゃあね、後はよろしく」そう言って委員長は踵を返し、行ってしまった。

結局ジャーマンが冗談なのか、許すのが冗談なのかは分からずじまいだった。

「早く行くわよ、私のガスマスクもそろそろ限界がきそうだわ」

「やっぱり僕から出てるのか!?・・・って、春日井さん手伝ってくれるの?」先に歩き出した春日井さんに並ぶ。ずっと持っていたが、もともと後半は軽くしておいたので、何とかなりそうだ。それでもきついけど。

「まったく、切腹ものの犯罪者ね。漆根君が破ったら私も迷惑なのよ」

そりゃあそうなのだろうし、僕が武士だったらあまりの恥に切腹しててもおかしくないとは思うけど。でもあんまり関係ないんじゃないかな。稼げる時間はせいぜい僕一人だったら脇に箱を置いて、鍵を開けるくらいの若干のタイムラグぐらいだし。

「・・・馬鹿ね。私が言ったのは時間を破ることじゃなく法律を破ることの方よ。・・・どうせまた、女の子を連れ込むつもりなのでしょう?」

「そこだけは、断じて僕の、せいじゃない」あ、五,七,五だ。

「ところで漆根君、ヘンリー君って誰?」

「ぐわっ!!」やめてくれ、そんな昔のめちゃくちゃ滑ったギャグを持ち出さないでくれ!あれはほんの一瞬の気の迷いだったんだ。

「いえいえ、爆笑だったわ。滑っておたおたしている漆根君の姿を見るのわね」

「くっ」・・・勝てない、刃向かうのはやめておこう。どう頑張っても僕の傷が広がるだけだ。

でも、爆笑するならそのガスマスク取れよっ!外見は無表情のまま爆笑するな!



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