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私の肌を見たら、殺すぞ

次に2人が向かった先はゲームセンターだった。シュウ君は良いのか悪いのかごくごく普通の発想の持ち主のようだ。どことなく親近感を覚える。

「ありえない・・・」ついにさつきさんが引いた。ああ、わかってるさ。ジョークさ冗談さポーズさ。僕は普通を愛する異端児さ。立場で言うと妖怪人間さ。早く人間になりたいさ。

「でもあれなんですよ。僕も中学時代はゲーセンスキルを鍛えたもんなんですよ」

そう、いつか彼女ができた時、いいとこ見せるためだけに。

「お陰でクレーンゲームなんか百発百中です。決して財布の悲鳴を聞かない男、それがこの僕、漆根耕太です」

「おお、カッコイイ!」

「まあ、そのために莫大な金を使って帰りの電車賃まで使って泣きながら歩いて帰ったこともあったんですけどね」

「ああ、かっこ悪い・・・」ちなみにこれは言えないが、一度や二度じゃない。ちなみにこの場所から家まで歩いて3時間。近年まれに見る悲惨な出来事だった。・・・ていうか悲惨な少年だった。

「スタンディングリーダーとゲームマスターか・・・」

「確かに響きは無駄にかっこいいけどその実ただのオタクな2人だよっ!」ちなみに僕はここ半年ほどゲーセンに顔を出していない。結局行き着くところまで行き着いたら飽きてしまった。更に、ある日僕は気付いた。

―――彼女ができねぇ、と。

「・・・悲しい現実だ。だがまあそれでも友達とワイワイやるのは良いものだ」な、とさつきさんは僕を見る。彼女としてはフォローのつもりなんだろうが・・・。

「・・・1人でやってました!」凄惨な少年だった。

「号泣ものだ!」あまりの哀れさに、さつきさんはもう僕を直視する事すらかなわないようだ。何て罪深い昔のぼく。・・・といえるほど昔じゃないけど。

「しかしそうすると、新しいものはからきしという事か?例えばあの太鼓なんかはどうだ?」さつきさんが指差したのは音楽に合わせてリズミカルに太鼓を叩くあれだ。僕が中二の頃からあったから少しはやったものだが、確かに極めちゃいない。

「まあ、僕はリズム感がいいですからね、ああいうものは大体得意ですよ。僕は平成のマイケル・ジャクソンと呼ばれてますから」

「あ?なんか言ったか?」・・・さつきさんは突っ込んですらくれない。手厳しい人だった。

「・・・いえ、なんでもないっす」

「ダンレボ、ナイス?あれってまだあったのか?」本当になんて言ったのか聞こえなかったのかもしれない。しかしダンレボか。ない、な。あれは場所をとるし、遊んでいる間に人に見られるのはかなり恥ずかしいから。・・・ちなみに僕は好きだったけど。ウォーター○ーイズ、憧れたなあ。5000円じゃ無理だったけど。「シンクロをやれっ!」って話なんだけど僕ほとんど泳げないし。僕の高校にはプールがないと知って喜びのあまり半狂乱したくらいだ。

「泳げないのか、では川に落ちたとき、大丈夫だったのか?」さつきさんはかなり心配そうな表情だった。

「流石に脛までしかない川じゃ溺れねぇよっ!」ううむ、言葉遣いが悪くなってしまった。反省猛省。ちなみにもう携帯は使っていない。諦めた。

「だから今度マンツーマンで泳ぎ方教えて下さいよ」もちろんこの発言にはもしかしたらさつきさんも水着になってくれるんじゃないかという下心が大いにある。

「私の肌を見たら、殺すぞ」

「僕にここから消えろと!?」法外な要求だった。「肌を見るな」って・・・。逆イスラム。

「しかしあれだな。君に得意分野があるというのは私としては・・・」

必死に目をつぶっていた僕だが、ようやく目を開けた。肌を見てしまったが、別に何も言われなかった。それほどに今から言う言葉が重要なのだろう。

「吐き気がするな。胸糞悪い、ぺっ」もちろん上品なさつきさんは唾を飛ばしたりしないが、その言葉だけで十分僕は死にたくなった。

「それでも読者目線キャラのつもりか!?」

「読者にも得意分野はあるよ!?」・・・それに僕が読者目線キャラだったら日本は一体どうなるんだろう。・・・少なくともほとんどの人がアメリカ辺りに移住しそうだな。高齢化が更に進みそうだ。

「・・・ていうか現実の人間を捕まえてキャラなんていわないで下さいよ」

「・・・う、む。そうだな。言葉を失くした」

「・・・・・・?」

「ああ、失言だった」

「いや、失言ってそういう意味の言葉じゃないですよ」字面は似てるけど。

「言葉を失くした」じゃあこの世界が小説じゃないことを知ってびっくりしたみたいに聞こえる。そんなことあるわけないのに。

「まあ、その話はいいだろう。君以外の人間は実はキャストとして生きている事など君は知る必要はない」

「怖っ!」・・・でも誰しも一度は考えたことあるかもしれないな。自分は体よく騙されているんじゃないか、ってな感じに。僕も昔はそう考えていたが、ある日、傍と思いついた。「僕はエキストラなんだからキャストというなら僕がキャストだ」と。

「嫌な現実だな。君がそれを気付いたとなると・・・2年前くらいか?」

「いえ、5歳の時です」

「嫌な子供だっ!君はあれか、得意だったことをことごとく否定された過去でもあるのか?」

「・・・・・・」ある。すげえある。幼稚園でもあるし、小学校でもあるし、妹にもあるしもちろん中学でも高校でもある。とにかく僕は「ランキングにすら乗れない」男なのだ。

ずっと前から分かってた、自分のための世界じゃない。漆根耕太は全国の才能人を応援します。

・・・だから、寝てても良いですか?

「・・・起きろっ!・・・まったく、君はもう少し前向きには生きられないのか?」

「なんと!さつきさん、それはいけない。その発言はいささかデリカシーにかけていますよ。卑屈さを除いたら僕に何が残るって言うんですか!」

僕-卑屈=0、よって僕=卑屈。

・・・いや過ぎる方程式だった。でも、卑屈であること、それが僕のアイデンティティ。

「そんなものは捨ててしまえ!」さつきさんが久々に本気で怒鳴った。風圧で後ろに倒れるかと思った。

「やれやれ。ああ、疲れた。しかしこれでわかったな、耕太。そんなものはゴミ箱にぽい、だ」

・・・うわぁ、表現が古い。

「いや、でも僕と卑屈は同じなんですから、ついでに僕もごみ箱にぽいされますよ」

「良いではないか、地球のためだ!」

「僕は生きているだけで有害なんですかっ!?」ひどい物言いだ。ああ、でも当てはまるかも。春日井さんにも言われそうだな。・・・明日辺りに。

「いや、お湯うがいだな」

「?」

「だから、お湯うがいだ。ちょっとイントネーションを変えると、『おっ、有害』になる」さつきさんはしたり顔だった。別に上手く言えてない。というか意味がわからない。

僕は生きてるだけで「お湯うがい」なのか。僕の傍にいるだけで喉がやられてきてお湯うがいをしなければならないのか・・・。

「・・・って、それって有害って事じゃないですかっ!!」

「ちっ、気付いてしまったか。・・・おや、耕太、あれは?」雑談が長すぎて、危うく忘れるところだったが、僕たちはつむぎの尾行に来ているのだった。そして、今まで楽しく遊んでいた2人に変化が訪れた。



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