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じっと突っ立ってるから粗大ごみかと思ったわ 5

「・・・ふむ、それは残念だな。そんな面白い場面がこの家にあると知っていたのなら立ち読み・・・いやスタンディングリードを打ち切ってでも帰ってきたのに!」

と、さつきさんは予告どおり夜遅くに帰ってきて僕の愚痴を聞くなりそう言った。面白いかどうかはさておき、1つ突っ込んでおきたい。

英語で言い直した意味がわからねえ。

「いやいや、大事だぞ名称は。私はよく知らないが最近巷で流行の『モンスターハンター』というゲームがあるだろう?」

ああ、そうらしい。僕は良く知らないけど。ゲームとかあんまり好きじゃないし。

「ふん、無趣味が。・・・まあいい。しかしどうだ、あのゲームの名称がもし『魔物の狩人』だったらあそこまで流行っただろうか、いや流行らない」反語だった。最近漢文の授業で習ったやつだ。あの時はさつきさんも教室にいたから使ってみたかったのかもしれない。反語って結構かっこいい言葉の響きなんだけど日常じゃ使いにくいんだよな。

「・・・確かに、流行らなかったかもしれないですね。でも立ち読みは立ち読みでも良いでしょう」そもそもかっこよさを追求する必要はないんだし。

ちっちっち、と指を振るさつきさん。

「ある言葉を流行らせるには常にその言葉を使っている必要がある。少しずつ回りの人間を感化させていくのだ」だから流行らせたい理由が分からない。ダメだ、本格的に言葉が通じない。

「ふん、もういい。・・・ところで話の途中だったな。一体全体どうやってつむぎは矛を納めたのだ?」さつきさんはベッドの上に座って白い枕をぎゅっと抱いた。やばい、あの枕使いたい。今度さつきさんがいないときに交換しておこう。・・・いや、だめだ。さつきさんはこう見えて所有欲がかなり強い。僕があげたお菓子でも、絶対分けてくれない人なのだ。もしばれたら天誅ものだ。

「・・・あんまり思い出したくないんですけど。つむぎが包丁を振り下ろそうとし、僕が死を覚悟したその時・・・」

「その時・・・?」さつきさんは真剣な表情でゴクリと唾を飲んだ。ああ、こうして僕の話を真剣に聞いてくれるだけで僕は幸せだ。春日井さんと話してるのも面白いんだけどやたらと神経を削られる。その点さつきさんの包容力は凄い。・・・包容かぁ。ついでに抱擁力のほうも鍛えて欲しい。あ、だめだ。入室してまで鍛えたさばおりが強化される・・・。僕の背骨の危機だ。

「電話が鳴ったんです」

「ほう・・・電話。というとベルが開発したあれだな」

僕は神妙な顔で頷く。

「そうです。昔はダイヤルを回していたあれです。ちなみに僕はダイヤル式の方はかけ方が分かりません」

さつきさんも至極真面目な表情だった。

「確かにあれは難しい。一言で説明出来るものではない。言うならば人をくすぐるのに近いものがある。もしくは指先で地面に穴を掘る感覚だな・・・ってもういい!早く話を進めろ!」

「さつきさんが最初に横道にそらしたんじゃないですか」わがままな人だった。しかし大人な僕は文句を言う事なく続けた。

「するとどういう事でしょう。つむぎの表情がさっと変わったんです。包丁を机の上に置くと電話のほうへ走っていきました」

「ほう・・・それで?」

「僕はその会話まで聞こえた訳ではありません。ただ、決して僕にむけることはないあの嬉しそうな顔とさっきとはまるで違う―――この「さっき」は「先刻」という意味で「殺気」ではありません―――先ほどとはまるで違った、僕が聞いたこともないような明るい声で話していました」

「・・・相手は、誰だったのだ」

「・・・シュウ君、と」僕は目を閉じた。

「・・・間違いないな」

「・・・間違いないです」

「では、明日だな」さつきさんが拳を掲げた。

「ついに計画を実行する時ですね」僕も拳を上げた。僕たちは拳を打ち合う。

ここにつむぎのデート尾行同盟という近年まれに見る暇人たちによる同盟が結成されたのだった。




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