僕をおもいっきり罵倒してくれ。・・・さあ、さあ! 1
「最高のエンターテインメントとは文学である」というモットーに基づいて書かれた小説です。
あくまで「読む側」ではなく「書く側」のエンターテインを追求したものなので、意味不明な表現が多々ありますが、ご容赦ください
―――今でもはっきりと思い出せる。あれは新学期最初の登校日のはずだから確か月曜日。あれ、火曜日だったか?とにかく桜の散り始めた2年前のあの日。僕は・・・
―――見てはいけないあの人に恋をした。
エキセントリック・ビューティ
・・・あるいはそれは何かの間違いだったのかもしれない。いや、今この場なら断言できる。これは間違いだ。そう、僕は間違いだ。
「ごめんなさい、漆根君」
そう、間違い。これは―――僕は、間違えた。夢かとも思ったが違うらしい。いや、「胡蝶の夢」にあるように、今この僕こそが夢の産物なのかもしれないが、もしそうなら僕の夢を見ている人物は16年も寝ている事になる。そのうち僕の、つまり夢の方が長生きという事になるのかもしれない。
などという無駄な考え事にふけっているうちに彼女は僕の目の前から消えていた。
「かかか、お前またフられたのかよ」
教室の後ろでうなだれている僕を及川が勇気付けてくれる・・・はずもなく、僕はただけなされている。ああ、Mになれたらなんてステキなことだろう。
「しっかし、お前の好みも分かりやすいなあ」及川は僕が今まで告白した(中には僕も既に忘れている人もいる)人を時系列順に指折り数えていく。すぐに指の数が足りなくなった。
「・・・って全員綺麗どころで髪長いよな。よっ、面食い!」及川は自分のスキンヘッドの頭をぺちん、と叩いた。
「・・・・・・」
「う~~んそうだな。確かにお前は顔は悪くない。癒し系に見えなくもないしな。不本意だがそれは俺も認めよう。・・・ただ、名前がよくないな。漆根なんて黒っぽくて地味な苗字はダメだろ。言いにくい上に後半は『しね』じゃん?」
「・・・・・・」
「まあ、多分フった子たちはこう思ってるね」
及川は大きく息を吸い込んだ。そこから発せられるのは煉獄火炎よりもダメージを受ける言葉だ。
「『漆根、死ね』」
「・・・・・・」
「婿入りして苗字でも変えればいい。あっ、そうか。婿入りしようにも彼女がいないんだっけ?残念!」再びパチン、と頭を叩く。
「・・・・・・」
「更に、お前のコクりまくり症候群は有名だからな。自分以外に好きな人がめちゃくちゃ多い男になびかないだろ、普通」
「・・・・・・」
涙が出てきた。それも目に少したまる程度ではなく、ドバッと。告ってフられて、友人にけなされ、泣いている僕はさぞかし滑稽に見えるだろう。この場に2人しかいなくて本当に良かった。いや、どうだろう。そもそも僕がここにいる時点で相当最悪なのかもしれない。
「おいおい、泣くなよ。ほら、いいこともあるぞ。他の男子がお前のおかげで玉砕覚悟でコクりに行けるってな。さながらスケープゴート・・・」
「わああああん」
僕は涙を煌めかせ走り去る。教室を出て、昇降口を出て、歩いて10分ほどの家の前を全速力で駆け抜けた。
16歳にもなる高校生が・・・。