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昔日
嗚呼、何てつまらないのだらう。
私は足許の石礫を蹴飛ばした。
からからと坂下へ転がつて行く石礫を眺め乍ら亦呟く。
嗚呼、何てつまらないのだらう。
私は足許を眺めて唯独りで対話を続ける。
死とは如何なるものか。
生とは如何なるものか。
死と生の挟間に存在するものとは一体如何なるものか。
私は細く長い月を見上げて未だ独りで対話を続ける。
死して猶蒼き希望とは如何なるものか。
絶望の淵より覗く紅き欲望とは如何なるものか。
在って猶猛き絶望とは如何なるものか。
私は恐い。
死して在らぬと云う事が。
私は恐い。
在らぬ者に成り得ると云う事が。
死して猶蒼き希望と絶望の淵より覗く紅き欲望。
此処に己が居ると云う事は、
此処に居ぬと云う事を内包し、
此処に己が居ぬと云う事は、
此処に居ると云う事を内包するのであらう。
其れは在ると云う事の意味を我等に享受させむ。
嗚呼、如何なる時も、
私は生ける屍。