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第2話 初ダンジョン攻略

ダンジョン出現の一時間前。頭の奥で、小さな電子音が鳴った。次の瞬間、視界の端に半透明のウィンドウが浮かび上がる。そこに表示されたのは地図だった。日本地図。その上に、無数の赤い光点が浮かんでいる。


ーーーーーーーーーーーーーーー

【SYSTEM】


ダンジョン出現マップ


出現まで残り時間:01:00:00

ーーーーーーーーーーーーーーー


「……多すぎだろ」


思わず呟いた。東京、大阪、名古屋、福岡。大都市には特に大きな光点が表示されている。その周囲にも小さな点がびっしり並んでいた。日本だけでも、軽く数百か所はある。


ニュースをつけると、すでに緊急会見が始まっていた。


「政府は現在、世界各地で確認されている“ダンジョン現象”に対し、自衛隊および警察による対応を進めています。国民の皆様には、決してダンジョンへ近づかないよう強く要請します」


画面の中の官房長官は落ち着いた声でそう言った。だが、その言葉を聞いた瞬間、僕は思わず笑ってしまった。


「無理だろ」


地図に表示されている光点は、日本だけでも数百か所。世界規模なら何千か所あるかもしれない。それを自衛隊だけで管理するなんて、どう考えても不可能だった。


僕の視線が一つの光点で止まる。

学校。そこにも小さな赤い光点が表示されている。


「……ちょうどいいな」


動きやすい服に着替え、家を出る。騒いでいる人が多かった。どうやらこのマップは世界中の人間に表示されているらしい。


SNSも完全にその話題だった。


『マップ出た!?』 『ダンジョンの場所全部表示されてる』 『これ日本だけで何百個あるんだ』 『自衛隊じゃ絶対足りないだろ』 『うちの学校にも出るんだが』


僕はその投稿を眺めながら歩く。


どうやら今日は、かなり面白い日になりそうだった。

そして学校に着いた時すでに校庭には、人だかりができていた。


△◇△◇


校庭の中央。そこだけ、空間がゆっくり歪んでいた。まるで空気がねじれているみたいに、景色が揺れている。まだ穴は開いていない。だが、そこに何かが生まれようとしているのは誰の目にも明らかだった。


その時だった。


「噓月?」


後ろから声をかけられる。振り返ると、同じクラスの男子が立っていた。


「お前も来てたのか」


「まあな。ちょっと見に来ただけだ」


僕はそう答えながら、もう一度校庭を見る。周囲には同じように様子を見に来た生徒たちが集まっていた。本来なら今日は休校だ。だが、学校にダンジョンが出ると分かれば話は別だった。


「これ、本当にダンジョンなんだよな」


同級生が興奮した様子で言う。


「多分な」


歪みはさっきより大きくなっていた。空気が引き裂かれるみたいに、黒い亀裂がゆっくり広がっていく。そして次の瞬間、空間が裂けた。


黒い穴が、校庭の中央に口を開けた。


ざわめきが広がる。


「うわ……」

「マジで出たぞ」


僕はその様子を横目に見ながら、校庭の端へ回り込んだ。

騒ぎの中心から少し離れた位置。誰も見ていない。


「……ちょうどいいな」


小さく呟き、僕はダンジョンへ足を踏み入れた。


視界が一瞬だけ暗くなる。そして、景色が変わっていた。


薄暗い洞窟。湿った岩肌。遠くで水滴の落ちる音が響いている。チュートリアルで入った場所と、よく似ていた。


「……やっぱりか」


その時だった低い唸り声をあげゆっくりと狼が姿を現す。

ただし普通の狼じゃない。体は少し大きく、目が赤く光っている。


僕は小さく呟いた。


「鑑定」


ーーーーーーーーーーーーーーー

【ローウルフ】


Lv:2

ーーーーーーーーーーーーーーー


「狼か」


その背後。さらに小さな影が動く。

緑色の皮膚。手には棍棒。まぎれもないゴブリンだった。


どうやら本番は、チュートリアルより少しだけ難しいらしい。


僕は軽く息を吐き、剣を握り直した。


「……まあいい」


狼とゴブリン二体同時。


「ちょうどいい練習相手だ」


ローウルフが低く唸り、姿勢を落とす。その刹那、一直線に飛び込んでくる。


「くそ早すぎる」


だが、先に倒すのはゴブリンだ。


棍棒を振り上げ、距離を詰めてくる。僕はそちらへ踏み込む。


「いいねぇ! 先にやるのはお前だ!」


そして剣を振る。


刃が肩口を切り裂き緑色の血が飛び散った。


その瞬間、横から影が飛び込んでくる。ローウルフだ。


避けきれないそう思った次の瞬間に牙が腕に食い込んだ。


「っ……!」


強引に振り払い、ローウルフをにらみつける。

ローウルフは地面に着地し、してやったりと言わんばかりに距離を取る。

(くそ、あの狼が厄介だ)

噛まれて出血する右腕を見つめながら深呼吸する。


「焦るな」


洞窟の通路を見渡す。幅はそれほど広くない。岩壁が張り出していて、二体が同時に動くには少し狭い。


「……使えるな」


僕はゆっくり後ろへ下がる。


ローウルフが低く唸りながら距離を詰めてくる。その背後でゴブリンも棍棒を振り上げていた。


二体同時、だが通路は一本だ。


ローウルフが先に地面を蹴った。一直線に飛び込んでくる。

僕は体をずらし、そのままさらに後ろへ下がる。そして奥からゴブリンが棍棒を振り上げて突っ込んできた。


「来たな」


僕はその瞬間、横へ滑るように移動する。振り下ろされた棍棒。


狙いは僕。


だが――


当たったのはローウルフだった。


棍棒が狼の背中を叩いた。ローウルフが小さく吠え体勢を崩した。


「サポート感謝だね」


軽く笑いながら踏み込みローウルフに向かって痛む右腕で剣を振る。刃がローウルフの脇腹を切り裂いた、よろめきながらローウルフが吠え、こちらへ飛びかかってくる。


牙が迫るが紙一重で半歩ずれる。そしてすれ違いざまに剣を振り抜く。

刃が首元を深く切り裂いた。ローウルフの体がぐらりと揺れる。


そのまま地面に倒れ黒い霧となって消えた。


【レベルが上がりました】


突如頭に声が響いた。


「レベルアップあるんだな」


軽くなった体と、さっきまで痛んでいた右腕の痛みが引き実感する。


「次はお前だよ」


剣先をゴブリンに向け、そのままの勢いで突っ込む。

わずかに反応が遅れ、ゴブリンが棍棒を振り上げる。


「遅いっ!」


レベルが上がったおかげか、10秒前では考えられないスピードでゴブリンに詰め寄り剣を振る。

刃が首元を深く切り裂いた。

ゴブリンの体が揺れ、ローウルフと同様に黒い煙となって消え洞窟に静寂が戻る。


その時、足元で小さく光るものが目に入った。拾い上げてみると、小さな黒い石だった。


「鑑定」


視界にウィンドウが浮かぶ。


ーーーーーーーーーーーーーーー

【魔石】


魔物から生成される結晶。

ーーーーーーーーーーーーーーー


「ドロップ品ってやつか」


石を指先で転がす。その瞬間、魔石がふっと消えた。思わず手のひらを見るが石はない。代わりに新しいウィンドウが開いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー

【アイテムボックス】


魔石 ×1

ーーーーーーーーーーーーーーー


「……マジか」


思わず笑いが漏れる。


「アイテムボックスあるのかよ」


ゲームで散々見たやつだ。拾った物を勝手に収納してくれる便利機能。もしこれが本当に使えるなら、荷物の心配はほとんどいらない。


「最高じゃん」

軽く拳を握る。チュートリアルダンジョンをクリアした時、ランダム報酬と表示されていたのを思い出す。おそらくこれのことだろう。

そう考えた瞬間だった。


奥の通路から声が聞こえる。


「く、くそがッ!」


人の悲鳴だった。僕は足を止め、ゆっくり通路の奥を覗き込む。そこには魔物に追い詰められている人影があった。


僕はその光景を、ただ静かに見つめた。


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