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第8話 探索者試験①

『謎の探索者、単独でボス討伐か』『仮面の男の正体は?各地で情報提供呼びかけ』『映像解析でも特定できず』——専門家「異常な戦闘能力」


画面が切り替わる。

スタジオ。


「……率直に、どう見ますか」


キャスターが問いかける。

向かいに座る男が、わずかに間を置いた。


「現時点では断定はできませんが——」


視線がモニターへ向く。

そこには、仮面の男の映像。


「少なくとも、通常の人間の動きではありません」


空気がわずかに張り詰める。


「では、スキルによるものだと?」


別のコメンテーターが口を挟む。


「その可能性は高いでしょう。ただ——それでも説明がつかない部分がある」


沈黙。

キャスターが小さく息を吐く。


「……つまり」


視線がカメラに向く。


「“異常”ということですか?」


専門家の男は否定できなかった。


△◇△◇


——同時刻、日本。


「例の件はどうだ」


暗い部屋の中、モニターの光だけが机を照らしていた。

そこに座る一人の男——ダンジョン対策室局長、工藤勝くどうまさるが口を開く。


「本当に要るんですかね、高校生の中に」


軽く肩をすくめながら聞かれた工藤は、端に立つ男に声をかける。


「……白峰」


名前を呼ばれ、白峰玲は視線を上げる。


「はい、可能性の話でいいなら、体格や話し方からして高校生…それもかなりの訓練を積んだ者かとおもわれます。」


白峰の言葉に納得いかないのか、体面に座る男が声を上げた。


「根拠は?高校生にあのような動きができるとは考えにくいが。」


「ありません。ですが、今現在この世界には、レベルやスキルといった未知のものがあります。例えばの話ですが、ランダムスキルで、強力なスキルなどを確保した可能性などもあり——」


「 議論は不要だ。それよりもだ、あの映像は各国へも流れ始めている。これが何を意味するか分からんほど馬鹿ではなかろう?」


白峰の反論を遮るかのように、机を強くたたきながら工藤は言う。


「はい…早急に身柄を特定し、日本国の戦力として迎え入れます。」


「まったく、ただでさえダンジョンだの資源だので手が回らんというのに……」


「お気持ちお察しします。明日例の学校で探索者試験が実施されます。私の予想が正しければ、仮面は必ずそこに現れると思われます。」


△◇△◇


——同時刻、アメリカ合衆国。


「例の仮面はどうだ?」


大型モニターには、日本のダンジョンの映像が映し出されていた。


「依然、特定には至っていません。ですが、日本側の動きから高校生である可能性が高いと考えられます」


短い沈黙。


「……確保は」


「困難です。現在、日本側で情報の統制が行われています」


モニターが止まり、画面が切り替わる。


「会議中のところ済まない。最優先事項だ。JPNの件も重要だが——我が国でもダンジョンの攻略者が出た。今はそちらを優先してくれ」


画面に映し出された男——アレクサンダー・グラント合衆国大統領。

その言葉に、その場にいた全員がすぐさま、広げていた仮面の資料を隅へと追いやり新たな資料を広げるのだった。


△◇△◇


——同時刻、中国。


煙が充満する部屋。薄暗い照明の下、数人の男たちが無言で立っていた。

目の前の机には写真が広げられており、その隣には、血に濡れた床と、動かない人影。


「……違うな」


低い声。


中国本土に根を張る裏組織——天羅てんら。その頭、林凱りんがいが写真を見下ろし、隣の男を見る。


「に、日本人の顔は似ていて…すみません。」


「そうかよ、連れてけ」


興味なさそうに呟くと、部下であろう者が男の肩をつかみ何処かへと消えていく。

短い悲鳴の後、すぐに静けさが戻る。


「世界がこんなに楽しくなったってのに、気に入らねえよな。」


林凱は目の前の写真を指で弾く。床に落ちたそれには、仮面の男と腕のない少女が映っている。


「俺たちより、この世界に馴染んでるやつがいるってのは。」


ドン、と鈍い音。机にひびが入る。


「今すぐ日本に行くぞ」


「はい、すでに準備は整っております。」


林凱の言葉にすぐさま、別の男がキャリーケースを持ってくる。


「ならいい、こいつは仲間に入れる。もし拒否したら——殺せ」


その言葉に、誰も逆らわない。

林凱は煙草を揉み消し、立ち上がる。


「ですがボス、仮面の正体が——」


「仮面はどうでもいい、だがその女は別だろ?」


林凱の指の先、そこにあるのは写真に写る早坂彩乃だった。


「そいつを使えばいい、女に口を割らせる方法なんていくらでもある」


笑いとともに、呟いた言葉。

その目はわずかに、赤く染まっていた。


△◇△◇


小さく息を吐いて、目が覚める。


「そういや……」


レベルが上がってスキルポイントをもらっていたことを思い出す。だが少しだけ考え、表示を開きかけて、そのまま閉じた。


以前、気配感知は自然に手に入った。なら、振らなくても増える可能性はある。


それに——


「ギリギリの方が面白い」


小さく呟く。

必要な書類を手に取り、動きやすい服に着替えそのまま家を出た。


試験会場に着くと、すでに人は集まっていた。昨日とは違い、無駄な会話は少ない。緊張と、少しの期待。


そのまま中へ入り、誘導に従い列に並ぶ。

並びながら、昨日の説明を思い出す。


曰く、試験は筆記と実技。

曰く、実技は近くのダンジョンでモンスターを狩る

最後に、合格者には面接を実施する。


列が進み、順番が回ってくる。簡単な確認を終え受験番号を受け取と、そのまま教室へと案内された。

机と椅子が並ぶ見慣れた光景。


「これより筆記試験を開始します」


試験官と思わしき自衛官の声。

用紙が配られ、開始の合図が鳴る。

紙をめくり軽く読む。


ダンジョンに関する基礎知識。安全行動。判断問題。


問一、ゴブリンの攻撃パターンは?

Q.棍棒の振り上げからの振り下ろし攻撃


問二、複数のモンスターと遭遇した際の適切な対処は?

Q. 攻撃範囲外を維持し、複数体の場合は分断を優先する



その後も同じような問題が続き、ラスト問題で目が留まる。


問十一、仲間が負傷し、モンスターが接近している場合の最優先行動は?


「……」


一瞬だけ考える。

助けるか、逃げるか。


「違うな」


小さく呟く。


——先にモンスターを処理する。

そのまま答えを書き込む。


軽く見直し、用紙を伏せる。

その直後。


「——そこまで」


試験官の声。

一斉にペンが止まる。


「答案を回収します。そのまま席で待機してください」


足音とともに、紙が回収されていく。


「これより実技試験に移行します。指示に従って移動してください」


周りの空気が変わる。緊張と、わずかな高揚。

教室を出ると、そのまま外へ誘導される。


校門の前には、数台のバスが並んでいた。


「各自、指示された車両に乗車してください。ダンジョン付近まで移動します」


そのまま列に並び、バスへ乗り込む。

車内は静かだった。誰も大きな声を出さない。

緊張しているやつ、落ち着かないやつ。

視線を外へ向けると景色が流れていった。


しばらくして、バスが止まる。


「到着しました。降りてください」


立ち上がり、外へ出る。


目の前にあるのはダンジョンの入口。

肌を切り裂くような不穏な雰囲気が漂ってきて、心をくすぐる。


ダンジョン前に並べ慣れた僕たちに、試験官が説明を開始した。

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