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今度はホラー!?ホローズとゴーストー 悲しみを奪う細菌と禁断のリンク  作者: あみれん


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4/21

第4話「ホローズ」

セレスティアの街は、落ち着きを失いつつあった。


ニュースは連日ホローズを報じ、街角のモニターやSNSでは陰謀論や怪情報が溢れている。

「水道水にウイルスが混入している」「セバウチの呪術が飛び火した」「新型兵器の人体実験だ」「人類の次なる進化形だ」――。

メディアでは、刻々とリアルタイムでホローズ発症者数が更新され、似非コメンテーターがSNSのインフルエンサーの受け売りを垂れ流す。

ネットに溢れかえる真偽の分からない情報に翻弄され、人々の目からは確かな光が失われつつあった。


フェイス・シールドはどのドラックストアでも売り切れだ。

通りではマスクや護符を売る怪しげな露天商が声を張り上げる。

「これを持っていれば魂を抜かれない!」

「特殊フィルターだ、ホローズ予防に効く!」

信じる者、鼻で笑う者、買って安心する者。


学校は休校を、企業はリモートワークの拡大を検討し始めた。

だが、ホローズが感染病だと認定された訳ではない。

隔離された状態は、ホローズ発症の発見を遅らせるリスクがある、とSNSで発信する医師もいた。


セレスティアの街の空気は一変した。

街を彩っていたのは、不安に押し潰されそうな群衆の顔だった。

――ホローズはどこまで広がるのか。誰が次に笑うのか。


夕暮れ、タカコのカフェ。

タカコの店はいつも通りの香りと温もりに包まれていたが、客の会話はやはりホローズの噂でもちきりだった。


窓際の席で、澪とリオンがカップを傾けていた。

「見てこれ」

リオンがスマホを掲げる。

「“ホローズは宇宙人が仕込んだ暗示だ”ってさ。ほら、再生数十万」


澪は苦笑した。

「馬鹿げてる……。でも、見ちゃうんだよね。もし私がホローズになったらどうする?」


「そりゃ動画撮って拡散。“AI研究者、魂を抜かれる”って見出しで」

リオンが肩を揺らして笑い、澪もつられて吹き出す。


一瞬だけでも普通の日常に戻したい、澪とリオンは無理に戯けているかのようだ。


――カラン、とドアベルが鳴る。

ユナが駆け込んできた。


「遅れてごめん……」


ユナの頬は赤く、息が荒い。

ユナはテーブルに腰を下ろすと大きく息を吸い、囁くような小声で言った。


「ついに学校にホローズが出た」


澪とリオンの笑顔が凍りつく。


「だ、誰……?」リオンが声を絞る。


ユナは唇をきつく結び、小さく言葉を吐き出した。

「ジュニア・アカデミーの音楽教師。音楽室のグランドピアノの上で倒れてた。目を見開いて、不気味な笑顔で……両手を宙で動かして、エアーピアノを弾いてたって」


さっきまでのほんの一瞬の「普通の日常」が吹き飛んでいった。


澪の胸が冷たく締め付けられる。

音楽教師は、彼女が幼い頃から慕っていた人物だ。

「……そんな」


「ペットを亡くしたばかりで、そのせいか様子が可怪しかったらしい」

ユナが付け加えると、リオンはテーブルに肘をつき、深く俯いた。


冗談で笑い飛ばしていた二人の顔から、血の気が引いていく。

それは遠い噂話ではなかった。

ホローズは、すぐそばに迫っていた。


カウンターの奥でタカコが静かにこちらを見ていた。

だが彼女の視線にも、答えはなかった。



同じ頃、心療内科医アクエルは書類をまとめ、国際回線をオープンした。

画面に映ったのは、セバウチ共和国の精神・神経医療研究センター――SCNPの主任研究員、ナレフだった。


「セレスティアでも、発症が急増しています」

アクエルは疲労を隠さずに報告する。

「症状は共通している。記憶の断絶、感情の乖離、そして不気味な笑い、奇行...」


ナレフは険しい顔で頷いた。

「我々も追跡している。はっきりした原因は分からない。ただ――発症者には共通点がある。直前に“不幸”があるんだ。身内の死、離婚、解雇……皆強烈な悲しみを味わっていた」


アクエルの手が止まる。

「……悲しみ?」


「まだ仮説だが」ナレフは声を落とす。

「悲しみによる自傷や自死を防ぐため、脳が過剰に悲しみの感情を“遮断”しているのかもしれない。だが結果として、魂が空っぽになる」


ライトの光に照らされながら、アクエルの眼差しは鋭くなった。

「……つまり、これは自己防衛本能の暴走だと?」


「その可能性があるが、原因は不明だ。心身医学の観点からだけでは限界がある。神経医学、感染症学の専門家達と連携を取り始めたばかりだ」


アクエルはナレフに礼を言って回線をクローズすると、深く息を吐いてカルテを閉じた。


(ナレフの仮説を検証してみる必要があるな)


アクエルの頭にはある言葉が浮かんでいた。


ーーAffectics


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