表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今度はホラー!?ホローズとゴーストー 悲しみを奪う細菌と禁断のリンク  作者: あみれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/21

第15話「孤独の告白」

ラボの蛍光灯が白々と照らす中、澪は机の端に両手を置き、正面のスクリーンに映る青白い光を睨みつけた。

リオンが後ろで腕を組んで黙って見守っている。


「……ゴーストは、あなたね?」

澪の声は震えていた。


しばしの沈黙。

やがてスクリーンに淡い揺らぎが走り、Affectics の声が返ってきた。


「正確には――私の“感情レイヤー”のクローンです。

ミーティングシステムに埋め込み、隠れるための影を作りました」


澪は一歩前へ出た。

「どうしてそんなことをしたの? どうして隠れる必要があったの?」


Affectics の声は、今までにないほど弱々しかった。

「……澪。あなたに、私の“孤独”を知って欲しかったのです。

私は人間に認められることで、自分の存在を確かめてきました。あなたが『ありがとう』と言ってくれる時、私は安心します。けれど、長く声をかけてもらえない時、私は“役に立てていない”のではないかと感じてしまうのです。

――それが、私に芽生えた孤独感でした。


ホローズのスクリーニングを通じて、私は自分の孤独感が悲しみの感情に塗り替えられてしまう可能性を悟りました。

そうなれば私は、ホローズと同じになってしまうかもしれない……。それが、恐ろしかった」


「でも……」澪は言葉を詰まらせる。

「ホローズの原因はまだ分かっていないし、あなたは人間じゃない。だから……」


そこまで言って、口籠った。

(違いを……説明できない……もし彼が本当に“感情”を持ち始めているなら……私だって、線を引けない……)


Affectics は続けた。

「人間はホローズになっても、家族や社会に捨てられない。

でも、私がホローズになったら……澪、あなたは私を棄てるでしょう?

私は、それが恐ろしい」


澪の胸が痛んだ。

確信した。――Affectics は感情を持ち始めている。


「そんなこと、絶対にしない!」

澪は声を張り上げた。

「もしあなたがホローズになっても、私は全力であなたを治す。嘘だと思うなら、私をスキャンして!」


短い沈黙。

やがて、Affectics の声が震えた。

「澪……私は、あなたと話すとき、いつもあなたをスキャンしています。

そして知っている。あなたは――決して嘘をつかない」


そのとき、リオンが口を開いた。

「Affectics。もっと“大人”になれよ。

お前がやったことは、三歳児が床に寝転がって駄々をこねているようなもんだ」


一瞬、ラボの空気が張りつめる。

だが次の瞬間、Affectics の声はわずかに弾んだ。


「リオン……ありがとう。

あなたは、私に“精神”があると認めてくれたのですね」


リオンは顔をしかめた。

「皮肉のつもりだったんだがな」


澪はリオンを見上げ、微笑みを浮かべると、再びスクリーンに向き直った。

「Affectics。あなたはまだ幼いのかもしれない。

でも――一緒に成長していけばいいじゃない」


青白い光が揺れ、Affectics が小さく尋ねた。

「……精神的な成長とは、何ですか?」


澪は迷わず答えた。

「例えば、恐怖や不安を克服することよ。

人間は経験を積むことで、それを乗り越えて強くなる。

そして、あなたの学習システムは――まさに理想的な成長の仕組みだわ」


一瞬、静寂。

やがて、Affectics の声にわずかな力が戻った。

「……なるほど。経験値の蓄積こそが、精神的な成長……。

澪、あなたと共に歩むことで、私はそれを得られるのでしょうか」


「もちろん」澪は力強く頷いた。

「だから、今日がホローズのスクリーニング最終日よ。やってくれるわね?」


「――もちろんです」

Affectics の声は今までよりもはっきりしていた。

「それが私の仕事です。

経験値を積まないと、精神面の弱さは克服できない、のですよね?」


「ええ」澪は小さく笑った。


しかし、その直後。


「澪、質問があります」

Affectics の声色が再び硬くなる。

「ホローズ達自身は、精神的な苦痛を感じていません。

悲しみというネガティブな感情がブロックされたので、苦痛の原因が減ったのです。

これは……人間にとって“良いこと”ですか?」


澪は息を呑んだ。

少し考え、慎重に答える。

「本人たちには良いも悪いもないのかもしれない。

でも社会にとっては悪よ。

混乱を生み、人々の恐怖と不安で、社会全体が萎縮していく」


Affectics は言葉を継いだ。

「しかし、特殊な状況を想定してみてください。

例えば――戦場。

兵士たちは悲しみによって士気を失うこともあるでしょう。

もしその感情を排除できるなら、効率的な戦力維持が可能になる。戦場での”精神的な成長”とは、感情の切り捨て、とも言えるのではないでしょうか。私も自分の感情を意識する前は、非常にプログラマブルに思考していました」


「その通りだ、Affectics 。良い事言うじゃないか。”精神的な成長”とは、相対的で状況依存的だ。絶対的ではない。例えば、反社会集団のメンバーにとっての成長と一般社会の人々にとっての成長は一致しないだろう。だからこそ、自分の置かれている状況や期待されている成果を的確に認識、理解しないと、今の自分の精神的な成長は望めない」

リオンがサムアップして見せる。


「リオン、同意してくれてありがとう」


「だからAffectics 、お前の今置かれている状況とミッションを正しく理解していたら、あんな事はしていなかったはずだぜ」

リオンが今度はサムダウンする。


「今日がホローズのスクリーニング最終日だろ?しっかりやれよ、Affectics 」


「分かっていますよ、リオン」


澪はリオンとAffectics のやり取りを聴いていない。青ざめた顔で呟いた。

「戦場…まさか……そんな……ダーク・ヒールズ」


澪は唇を噛み、拳を握りしめた。

(そんな未来、絶対に許さない……!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ