第四章: 火の国への使命
レンとカナは、風を切りながら火の国へと向かっていた。
レンは鷹に変身し、カナは彼の背中に乗る。
風の力を操り、二人の速度はどんどん増していった。
遠くの地平線には、火の国の輪郭が徐々に大きくなっていく。
「火の国、もうすぐだね。」
カナがレンの背中の上で声を弾ませる。
「うん、ここからが本当の挑戦だ。」
鷹の姿になったレンが、鋭い目で地平線を見据える。
火の国の姿は、徐々にはっきりとしてきた。
街の中に足を踏み入れると、南アジアを思わせる陽気な音楽が流れ、色鮮やかな衣服をまとった人々が活気に満ちた笑顔で行き交っている。
しかし、その華やかさの裏には、魔法の国との緊張関係が潜んでいることを二人は知っていた。
「こんなに明るい国なのに、魔法の国とは敵対しているんだよね。」
レンがつぶやく。
「そう。だからこそ、彼らの協力が必要なの。」
カナが真剣な表情で応じた。
二人は火の国の王宮を目指す。
王宮は、炎の魔法を駆使した防御と、ドワーフが鍛えた武器によって厳重に守られており、その堅牢さは一目で分かるほどだった。
王宮に到着すると、レンとカナは火の国の王子への謁見を求めた。
案内された先にいたのは、国の活気そのものを体現するような、情熱に満ちた若き王子だった。
「風の国からの使者か。何の用だ?」
王子の目が二人を鋭く見据える。
「東の壁の向こうにある魔の国の扉が開いたことを、ご存じですか?」
レンが一歩前に出る。
「私たちはその危機を世界に伝え、各国の力を結集して対抗しようとしています。」
「魔法の国は、魔力を持たぬ国々を見下し、周辺諸国への圧力を強めています。」
カナが続ける。
「魔法に頼らない火の国の力が必要なんです。」
王子はしばらく考え込んだ。
やがて、深く頷く。
「確かに、魔法の国の姿勢は我々も問題視している。君たちの使命は理解した。」
しかし――
王子はニヤリと笑う。
「その前に、君たちの実力を見せてもらおう。」