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「ドミノ」とドナは言った。
「ドミノ。君の名前は、ドミノ。どう? いいお名前でしょ?」とドナは言った。
すると、『ドミノ』はさっきまでと同じように、ぐるると一度、小さく唸った。
それからドミノは赤い舌でドナのほっぺたを舐めた。
そんなドミノを見て、ドナは(とても珍しく)とても子供っぽい、無邪気な顔で笑うと「これからもよろしくね、ドミノ」と嬉しそうな声で言った。
ドナはドミノの背中にのせてもらって、黒い森の中に入って行った。
黒い森に入ってすぐのところに木の枝やつるや葉っぱがたくさん落ちているところがあったので、そこでドナは丈夫な葉っぱとつるを使って、靴を作ってそれをはいた。靴をはいたことで、ドナはようやく大地の上を歩けるようになった。(嬉しかった)
ドナはドミノと一緒に歩きながら黒い森の中を奥に奥にと進んで行った。
黒い森の中の風景に変化はなかった。ただ、少しずつ、森の闇が深く、濃くなっていくだけだった。
ドナとドミノは、黒い森の中を流れている小さな川の横を歩いている。
そして、それからとても長い時間が流れて、世界は真っ暗な夜になった。
その暗い夜の中で、ドナとドミノの姿は真っ暗な闇の中にのまれて、まったく見えなくなってしまった。