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白い子供の狼が歩いて行った先には、小さな川が流れていた。
その小さな川の上流のほうには黒い森があった。
「お水がある。それに森にはなにか食べるものがあるかもしれない」白い子供の狼の背中の上でドナは言った。
「どうもありがとう」
とドナが耳元で言うと、白い子供の狼は、ぐるる、と嬉しそうな声で言った。
白い子供の狼は黒い森の入り口あたりの小さな川のところでそっと座り込んで、ドナを大地の上に下ろした。
ドナは小さな川で、水を飲んで、(白い子供の狼も一緒に水を飲んだ)それから怪我をした左足を川の中に入れた。
そのまま白い子供の狼の体に寄りかかりながら、ふとドナは、名前。名前か。
そうか。この子には、まだ『名前』がないのだ。とそんなことを優しい青色の瞳で、じっと自分を見ている白い子供の狼を見ながらドナは思った。
「ねえ。君の名前はなんて言うの?」とドナは言った。
そのドナの言葉に白い子供の狼は、ぐるると一度、小さく唸っただけだった。
ドナはくすっと笑ってから、「私はドナって言うの。助けたくれてありがとう」と白い子供の狼の体を撫でながら言った。
「君の名前。私が名付けてもいい?」とドナは言う。
白い子供の狼はまたさっきと同じように、ぐるると小さく一度、唸った。