表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

 ドナは白い肌をした細身の体に白いローブのような服を着ている。腰まである長くて美しい髪も白い色をしている。

 ドナは子供のころからずっと真っ白だった。

 だからドナは同じように真っ白な白い子供の狼を見て、「おんなじだね」と嬉しそうな顔で笑って言った。

「一緒に歩こう」

 そう白い子供の狼に言ってから、これから私たちはどこに行こうとしているだろう? とそんなことをドナは疑問に思った。

 でも、そんなドナの言葉を聞いて白い子供の狼は嬉しそうな顔をして、ドナのことをじっと見つめていた。(ドナもそんな白い子供の狼を見て、くすくすと笑っていた)

 だから、とりあえず行けるところまで歩いて行ってみようとドナは思った。

 私たちは、自由なのだから。

 これから、どこにだって行けるのだから。

 それからドナは白い狼の子供と一緒に初めて見る世界の中をゆっくりと歩き始める。

 この命が、尽きるときまで。


 残念なことに大きな神殿の外に出ても青色の空は見ることができなかった。空は曇っていた。そして大地には色はなく、命もなかった。やっぱりここは文献で読んだ通りの死の国なのかもしれないとドナは思った。そんな色のない世界をきょろきょろと見ながらドナは歩き続けている。

 それからふとドナは後ろを振り返った。そこには小さく見える、さっきまでドナがいた大きな朽ちた神殿が見えた。その向こうには巨大な谷があり、(まるでそこが生と死の国をわけるような)その谷にあるたった一つだけの古い吊り橋を渡って向こう側にある森の中に戻れば、そこから頑張って一日くらい森の中を歩けば、ドナは自分の生まれた古い村に戻ることもできた。

 でも、そうしようとは思わなかった。

 それは自分を生贄にした村の掟や村のみんなのことが嫌いだからとか、そう言ったことが理由じゃない。

 私はもう『あの村の家族の一人としての資格を失っている』とわかっていたからだった。

 生贄として、神殿に捧げられたときから。私にはもう帰る場所はどこにもないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ