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 すると、奇跡が起こった。

 黒い狼の毛が、一瞬で真っ白な毛に生え変わるようにして、変わっていったのだった。『黒い狼は、真っ白な狼』になった。

 その変化がなにを意味しているのか、それはドナにはよくわからなかった。ただ事実として言い伝えに伝わる死者の魂を運ぶ黒い狼はドナの前からいなくなったて、そのかわりにとても神々しくて美しい白い狼があわられた。

「まあ」

 そう言って、目を丸くしてドナは驚いた。

 それから少しして、そんな白い狼を見て、くすくすとドナは一人で笑い出した。なんだかおかしくておかしくて仕方がなかった。(いろんな不思議なことが起きて、今までの村での、生贄になるためだけのなにも変わらない生活とはあまりにも違いすぎていたからかもしれない)

 そんな(目に涙を浮かべて)楽しそうに笑っているドナを見て、白い狼はなんだか安心したように、とても優しい目をしてドナのことをじっと見つめている。

 よく見ると、その白い狼は『子供の狼』であるように思えた。

 そのドナの考えが当たっているかのように、生まれ変わった白い子供の狼は、その顔をまるで母親に甘えてくる生まれたばかりの赤ん坊のようにそっとまた、ドナの小さな胸に埋めるようにして甘えてきた。

 そんな甘えん坊な狼をみて、ドナはまたくすくすと笑った。

「よしよし」とドナは言った。

「あなたもひとりぼっちなの? なら、私と一緒だね」白い狼の毛を撫でながら(それはとても安心する優しい手つきだった)ドナはいった。

 この朽ちた神殿の中には、ドナと白い子供の狼以外に、命と呼べるものは存在していなかった。

 ドナはひとりぼっち。

 ……そして、白い子供の狼もまた、ひとりぼっちの狼のようだった。

 白い狼はその青色の瞳をドナに向けた。

 それはとても綺麗な色だった。(空のような青色だった)

「綺麗な色」白い狼の瞳を見て、ドナは言った。

 それからドナは立ち上がった。 

 そしてその白い狼の子供と一緒にきょろきょろと部屋の中を見渡しすようにして見ると、自分のいる神殿の部屋の中にある、大きく壁が砕けている場所を見つけた。

 その(自分たちが通れるくらいに)大きく壁が砕けているところを見つけて、なんだかわくわくした気持ちになったドナは「おいで。一緒に行こう」と白い狼に言うと自分に大人しくついてくる白い狼と一緒にその大きな壁の穴からゆっくりと神殿の外に出て行った。

 空が見たいって思ったからだ。

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