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蒔田内寝子は普通が欲しい  作者: 八垣佐伽
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化け猫少女

 私は猫である。名前は蒔田内まだない。蒔田内寝子ねこだ。


 


どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。私はここで人間というものに拾われた。しかもあとで知るにそれは蒔田内一家という人間中で一番仁徳の人であったそうだ。この蒔田内一家というのは私が人の姿を真似し、化け猫と判明しようと見捨てなかったという話である。その当時は私も幼かったから別段何も思わなかったが、知識を付けた今となっては深く感謝している。


 

 寝子は冗談ともつかぬ、意味の分からぬ事を考えた。


 

 日本人離れした新雪を思わす真白の毛に、猫の金色の瞳を持つ少女である。年の頃は十六。高校一年生のJKであった。


 


 けれど、彼女の学校生活は順風満帆とは言い難かった。


 


 誓って言うが、寝子は己の容姿を好いている。家族からしきりに褒められるのだから、自然とそうなってしまった。けれど、認めることばかりはできない。



 寝子の髪はあまりに美し過ぎる。黒の中にぽつり存在する白というだけで目立つには十分。それが干したての羽毛布団のようなふわふわさと、新雪の艶やかさを兼ね揃えていれば、どれほど人の目を惹くことか。


 

 妖という生き物は人を魅了するものであるから、その容貌も悪くない。目鼻立ちはくっきりと整っており、けれど幼さも残しており、あどけなさと妖艶さが同居している。


 

 けれども、この瞳は良くない。黄金の瞳に、縦に裂けた瞳孔。



 嘗てこれを見たものは、寝子を悪魔だと罵った。なるほど、道理である。天使と見紛う異様に整った容姿に、酷く醜悪な目。まさに悪魔である。



 加えて言うならば、寝子は化け猫であるから、人よりも遥かに優れた身体能力を持っていた。それもまた、人外だという説を補強する要因になったのだろう。



 何にせよ、そういうわけで寝子は真面な学校生活を送れたことがない。瞼を常に限りなく閉ざして瞳を隠し、全力での活動を行わくとも、彼女は普通にはなれない。


  己の持つ天賦を誇りながらも、疎ましく思うのは尤もであろう。寝子は普通に憧れるのだから。そのためには特別なぞ要らないのだから。


 今の暮らしには満足しているけれど、それでも。どうか、私に普通をお与えくださいと。そう願ってしまうのは、傲慢なのだろうか。

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