表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

1

夕焼けの屋上、三永斗亜(みながとあ)は想い人と相対していた。


高校に入って好きになった人と。


斗亜が勇気を出したのか?この機会は斗亜が作ったのか?というと、そうではない。


斗亜は彼女に手紙で呼び出されたのだ。


夕焼けに照らされ、影ができてるせいか、彼女の表情を覗うことはできない。


しかし、彼女の口元が動き出すのは見えて、いよいよかと思ったところ…。




「…良い夢だった。」


斗亜は学園に来るなり、カバンの中のものを机に入れるなどし終えると、ぽ〜っと窓の外を眺めながら、()()()()()()()のことを思い出し、どこか艶っぽいため息を漏らしていた。


それは斗亜にとっての理想のシチュエーション。


こんなことがもし起ころうものならば…と夢想するのはなんとも情けないことなのだが、欲してやまない理想。


それをいつか実現してみせると、ぽ〜っとした頭で思っていた。


すると、斗亜の前に現れるなり、その独り言に求めてもいないような返答を付け加えるような野暮を働く者がいた。


「えっ、斗亜…そんなにエロい夢を見たのか?」


…一言で言って、台無しである。


その言葉で、斗亜は一瞬でこの現実へと戻って来させられた。


もちろん斗亜も男子高校生という、お年頃なのでそんな夢を見ないと言えば嘘になるが、何事にも節度というものがある。


少なくとも、朝っぱらから教室でそんなことを考えるほど倫理観がぶっ壊れてはいない。


朝の開口一番、こんな最低なことを言ってきたのは、(今は百歩譲って)友人の弘道勇。


倫理観の破壊者である。


彼は学園にも平気でエロ本を持ってくるような生徒であり、授業中でもそれを読んで、興奮しているようなド変態だ。噂では風紀委員室に、在学中、彼から押収したエロ本が数百冊もあって、エロ本専用の本棚を作ることになり、ある意味最も校内で神聖であるはずが、風紀が乱れた場所になってしまったというものすらある。


そんなある種の伝導師、または怪異である彼は顔を赤くして、大変興味深そうな顔で斗亜を見ながら、身体をもじもじとさせていた。


ウザいし、正直、純粋にキモかったので…。


「おはよう、イサム。そして、さよなら。」


とりあえず帰宅を促すことにした。


「ちょっ!?ちょっと待ってくれ!用があってきたんだ!!この話を聞いてくれたら、そうしてやるのもやぶさかではない。」


「…なんだ?」


「……で…どんなエロい夢を見たんだって、やめろやめろ!!冗談!冗談だって、本当は…っ!?」


ギーッ!パタン。ガタガタガタ(出ようと暴れる音)。ドンッ!!(蹴り)………ピ〜ッ、ペタ。ピ〜ッ、ペタ。ピ〜ッ、ペタ。


妙な声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。


エロイッサームを掃除ロッカーという名の禁断の箱にガムテープで封印を施すと、斗亜は席に戻る。


すると、大勢の女子生徒たちが掃除ロッカーを囲みだしたが、斗亜は見て見ぬふりをすることにし、バンバンという金属の箱を叩く音に、絶叫という名のBGMを聞き流しながら、窓の外の桜に心を癒してもらっていた。


すると、程なくしてBGMが止み、ふとこんな声が聞こえてきた。


「あっ…。」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ