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9. 寄り添う星1


***



それからなずなは、気持ちを切り替えて、レストランとイベントの準備に集中して取り組んだ。


どうにか手分けをして庭を更に整え、倉庫内に眠る品物のピックアップや、外でも寛げるようにと、ラグや椅子、テーブルも用意した。それらの物は、倉庫の中に眠っていた物だったり、紫乃(しの)や花屋の店主達が貸してくれた物だ。


倉庫に眠っていたテーブルは、シックなアンティークの物で、表面には細かな傷がついていたが、これが実際レストランで使われていたと思えば感慨深かった。そういえば、曾祖母のヤヱもレストランで働いていた。彼女も、こうやってテーブルを磨き、配膳したのだろうか。

このテーブルや椅子がヤヱと同じ時代の物かは分からないが、なずなの知らない時代とも繋がれるみたいで、なんだか、会った事のないヤヱとも会えたような気がする、不思議な気分だった。




そうして、心踊らせているなずなとは対照的に、久しぶりに見るそれを、春風(はるかぜ)はぼんやりとしたまま、そっとテーブルの表面を撫でた。それから、準備に追われる住人達を振り返る。春風の視線の先には、紫乃とフウカが色鮮やかなテーブルを囲んでいた。


「使い道なくなって、どうしようかと思ってたんだ。これさ、色にこだわって塗装したんだよ」

「そうなんですか、綺麗ですね…使わせて貰って良いんですか?」

「勿論!」


紫乃は、レストランやキッチンカーのメニューの打ち合わせの為に来ていたのだが、使わない椅子やテーブルを持ってきてくれていた。ミントと白の爽やかな色合いは、紫乃のイメージにもぴったりだった。


「そういえば、店長は、店を持とうとは思わないんですか?」

「あー、理想はあるけどな。両方出来ればやりたいかも。店は店、キッチンカーはキッチンカーで限定メニューにして、小さいカフェとかさ、隠れ家的な。絵とか飾ったりして」

「趣味の店っぽくですか?」

「そー、よくあるじゃん、趣味丸出しのカフェ。あーいうのやってみたいな」


話を聞いて頷くフウカに、紫乃は優しく笑う。


「フウカ君は?今回は、とりあえず一日限定なんでしょ?その後は?」

「…俺はそんな」

「共同経営してみる?平日はキッチンカーで、休日だけ店とか。あ、昼間キッチンカーで、夜は店とかもありか」

「え?」


二人のやり取りを側で作業しながら聞いていたなずなは、思わず身を乗り出した。


「それ素敵です!二人の料理を、色んなタイプで食べれるのは嬉しいかも!」

「僕はそんな、人に出せる程の腕では」

「何言ってるの、フウカ君のメニューがあるから、俺は助かってるんだよ」

「…そんな、」

「私もお手伝い出来る事あれば何でもしますから!」

「なずなさんも、まだ決めたわけでは」

「まぁなー、いざやるとなると、色々考えないとな…」


そこへ、皆の話を聞いていた春風は、側に歩み寄り提言した。


「…ここでやったら良いんじゃない?時間や日にちが決まってたら、皆も協力してくれるかも」

「え?」

「…ここは、レストランだったからさ。その方が、この家も喜ぶかもってさ」


そう言う春風は、メゾン・ド・モナコを見上げ、懐かしそうに表情を緩めた。





町内イベントの準備に合わせ、メゾン・ド・モナコでも催しをする、その内容を知らせるチラシをご近所に配る事となった。

チラシには、レストランやキッチンカー、フラワーアレンジメントの出張教室、春風の持っていた本や陶器のラインナップを、ざっくりとだが載せている。


チラシ配りには、ハクとマリンにも手伝って貰った。うっかりマリンに一目惚れするご近所さんが続出したが、彼らの視線を断ち切らせる為、ギンジをボディーガードに引っ張り出した。

マリンと認識されなくても、マリンの美しさはやはり変わらないようだ。ギンジも文句を言いつつも、手伝ってくれるのでほっとする。



果たして人は来てくれるだろうか。そこが一番の悩みどころだ。






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