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メゾン・ド・モナコ  作者: 茶野森かのこ


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8. 火の鳥と人魚8


「…婚約者?」

「違うの、勝手に」


「よそ者は早く国から出て行け!」


再び飛んでくる水の矢に、フウカは咄嗟に翼を盾にするが、火の翼は水に焼かれ、翼には爛れたように傷が広がった。思わず呻き声を上げて膝をつけば、テラは咄嗟にを庇うようにフウカの前に出た。


「やめて!傷つけないで!」


まっすぐとシュガを見つめ、テラが叫ぶが、その悲痛な叫びは、シュガの自尊心を傷つけるだけのようだった。


「彼女は洗脳されてる!今すぐに奴から引き剥がすんだ!」


そのシュガの言葉に、躊躇いを見せていた皆は再び勢いを取り戻したようで、テラとフウカを離させようと、矢をつがえた。


「なんで、」

「大丈夫だよ、テラ」


痛みに耐えながら、それでもテラを安心させようと、微笑みを浮かべるフウカに、テラは泣きそうに表情を歪めた。


「頭ごなしに、酷いじゃない。私は、間違った事をしてる?ただ、好きなあやかしと居たいだけなのに」


テラは振り返って、皆を見渡した。その視線がシュガに止まる。


「私は、フウカを傷つけたあなたを許さない!こんな事して、私が帰ると思うの!?」

「うるさい!お前は俺のものだろうが!」


やれ、との合図に、水の玉やら水の矢がフウカ目掛けて飛んでくる。


「フウカ!」


このままでは、側にいるテラにも当たってしまう、フウカは攻撃を受けていられず、かといってテラの手も離せず、彼らに反撃するしかない。火の粉を撒いて、テラを炎でたぎらす翼の内側に招いて。

勢いを増す水の攻撃は四方から振りかかり、フウカは懸命に抵抗を見せていた。後方からも水の矢の気配がして、フウカはそれを燃える腕で凪払った。

そして、目の前の光景に、心臓が止まったかと思った。

そこには、テラがいた。恐らくフウカを守ろうと飛び出したのだろう、だが、彼女が受けたのは水の矢ではなく、フウカの炎だった。


炎はがテラに降りかかり、彼女の美しい顔から左肩にかけてを燃やしてしまった。


「テラ!」


倒れるテラを抱き留めようとするが、燃える腕では彼女の体に触れる事も出来ない。フウカは彼女の体の上で手を払い、どうにか彼女が纏う炎を消させたが、透き通るように美しいテラの肌に、爛れた火傷の痕を残してしまった。


「…テラ、」

「よくも、テラを!」


その声に、フウカははっとして顔を起こす。飛んでくる水の刃に炎の翼は撃ち抜かれ、怒りに満ちたその視線の塊に、攻撃の勢いを強めた人魚達に追いやられ、フウカはその場を飛び立つしか出来なかった。




それ以来、フウカは彼女と会っていない。あれは事故だった、それでもフウカはテラに合わせる顔がなかった。彼女の思いに気づけなかったどころか、大切な彼女を傷つけてしまった、そんな自分が許せず、自分の炎が恐ろしく、もうこんな事を二度と起こさないよう、戒めのようにグローブを身につけるようになったという。




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