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メゾン・ド・モナコ  作者: 茶野森かのこ


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7. フウカの思い13


***



その夜、ちゃんとアパートに帰ってきたフウカは、皆からのハグやらヘッドロックやらチョークスリーパーやらという、形だけの痛みのない愛ある洗礼を受け、困りながらも安心した様子だった。


「もう、勝手に出て行くなんて!次やったら本当に怒っちゃうわよ」


そう言いながら、マリンが水の手をフウカの首にひやりと触れると、フウカはさすがに頬をひきつらせた。

こればかりは、冗談で済まされない何かがある。


「それじゃ、今日はごちそうだよー!手巻き寿司でーす、みんな各々、好きに巻いちゃってー」


春風の言葉に、ギンジとナツメは嫌そうな顔で、目の前に並ぶの酢飯の入ったおひつと具材を見つめた。


「これ作ったの、こいつだろ?」

「酢飯どんな味に仕上がってんの?」

「ざんねーん、僕が作りましたー」


春風がそう手を上げれば、ギンジとナツメはあからさまに安堵した様子を見せた。


「なら安心だな!めでたい時くらい、安心して食べたいもんな!」


本心を隠そうともしないナツメの発言に、なずなはさすがに怒ったが、いつも窘めてくるフウカが笑うので、なずなも諦めて笑みをこぼした。


「…帰ってきてくれて、良かったです」

「あなたのお陰で勇気がもてたんですよ、ありがとう」


思わぬ優しい微笑みに、なずなは不意を突かれ、顔を赤くしながら、あわあわと顔を俯けた。


「そんな、私は、」

「ほーら、イチャイチャしてると、具がなくなっちゃうわよー」

「つーか、一日帰らないくらいで大袈裟だな」

「あら、ナッちゃんだって、一日家の中うろうろして落ち着かなかったのに」

「う、うるせぇな!別に心配だった訳じゃねぇし!」

「あら、素直じゃないんだから」


途端に騒がしくなる食卓に、なずなは不意打ちのときめきも気が削がれ、フウカと顔を見合せ笑いあった。

騒がしい食卓は、このアパートの日常だ。たった一日フウカがいないだけで、昨夜も今朝も、まるでお通夜のようだった事を思い出す。なずなはそれを伝えながら、改めてフウカに向き直った。


「だから、フウカさんは、このアパートには、なくてはならない人なんですよ」


「あ、あやかしでしたね」と、何でもない事のように笑って言い直すなずなに、その言葉に、フウカは目を瞬いて、それからそっと頬を緩めた。少し目元が赤くなっていたが、なずなは気づいていないようだ。


「はい、フウカ」


トコトコとハクがやって来て、フウカに手巻き寿司を手渡した。少し握りが甘く、中の具材も酢飯も溢れ出しているが、それがハクの気持ちだと思えば、どんな料理も敵わないのではと思う。

フウカは目線を合わせて、それを受け取った。ありがとうと伝えれば、ハクは照れくさそうに微笑んだ。



帰る場所がある、待ってくれる人がいる。それはなんて幸せな事だろう。

フウカは目の前の幸せに目を細め、食卓の輪に加わった。





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