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メゾン・ド・モナコ  作者: 茶野森かのこ


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7. フウカの思い6


**


それから少しして、メゾン・ド・モナコのリビング、そのソファーの上で、純太(じゅんた)は目を覚ました。はっとして飛び起きた拍子に、頭に乗せていた冷えたタオルが膝に落ちる。純太は咄嗟に辺りを見回すと、傍らで様子を見守っていたなずなとハクの顔を見て、焦った様子で詰め寄った。


「は、早く逃げないと!皆!」

「落ち着いて、純太君!大丈夫だよ」


なずなが声を掛けると、純太は混乱のまま辺りを見回した。部屋の中は、何事もなかったかのように静かで、リビングに集まっている皆からは、焦った様子も見えない、純太はきょとんと目を瞬いた。


「あれ?お姉さん見たよね?なんか変なのに囲まれてるみたいな、ピキピキ割れてくみたいな」

「そ、そんな事あったかな~?もしかしたら夢でも見てたのかも!それより体の具合は大丈夫?私の顔見たら急に倒れちゃったから、ビックリしたよ」


純太が見たものを誤魔化そうと、なずなは頬を引きつらせながら言った。

これは、純太が起きた時に、そう説明しようと皆で決めていた。純太に何が起きていたか話す役目は、その場に一緒に居たなずなが話した方が良い、純太にとってなずなは、恐怖体験を共にしていた仲間だ、そのなずなが違うと言えば、純太が見たものは夢の中の事だったと信じて貰えるかもしれないと。


だが、あまりに白々しい言い方に、ナツメは溜め息を吐き、マリンとハクは思わず心配そうな表情を浮かべていた。これは、なずなが嘘が下手なのか、演技が下手なのか、絶対にバレてはいけないというプレッシャー故なのか。

だが、皆の心配に反し、純太はとても素直で純粋な少年のようだった。純太は、なずなの下手な嘘を信じてくれたようで、はぁと大きく息を吐いて脱力した。


「…うわ、夢かー…焦ったー。俺は大丈夫です」

「良かった…。ね、ハク君。ハク君も心配してたんだよ」


なずなを筆頭に、皆は心の底から安堵した。純太でなければ、なずなの様子を訝しんでいたかもしれない。なずながハクを促すと、ハクは少し躊躇いつつも顔を上げた。


「うん…大丈夫、ですか?」


そんなハクの様子に、純太は申し訳なさそうに頭を垂れた。


「うん。それから、この間はごめんなさい!友達が変なこと言って」


純太が謝るので、ハクは驚き、それから慌てた様子で首を振った。


「ううん!あの、また会えて嬉しいです」

「へへ、俺も会えるかなって思って来たんだ。あのタヌキは元気?」

「げ、元気だよ、助けてくれてありがとう」

「へへ、あいつ居るの?」

「こ、ここには、居ないんだ」

「そうなんだ、あの時は、預かってたって事?」

「う、うん」

「なんだ、もう一度見たかったな…俺んちにはね、犬がいるんだ!あいつみたいに、白くて可愛いんだ!でも、タヌキも可愛いよな!」


それから純太は思い出したように、ハクに身を乗り出した。


「あ、俺は純太、お前は?」

「ぼ、僕はハク」

「なんだ、全然お化けじゃないじゃん!よろしくな!」

「よろしく…!」


仲良くお喋り出来ている様子に、なずな達は顔を見合せ、ほっとした様子だ。

話してみれば、何の障害もない。勿論、正体を秘密にした上でだが、それでも純太は、ハクを見掛けではなく、ちゃんと個人として見てくれた、友達になってくれた。ハクも照れくさそうだが、とても嬉しそうだ。

せっかく良い関係を築けた所で残念だが、もう夜だ、親御さんが心配しているかもしれない。


「純太君は、お家この辺なの?家まで送っていくよ」

「いえ…あ、今何時ですか!?ヤッベー塾すっぽかした!」

「え、送ってくよ、危ないから!」

「平気平気!あ、平気です、えっと、ありがとうございました!ハク、またな!」

「う、うん…!」


そして少年は嵐のように去って行ってしまった。そんな純太に、なずなは不安そうな顔をする。


「送らなくて大丈夫ですかね」

「…こっそりついてく?」


ハクも心配そうだったが、ナツメはくしゃと、そんなハクの頭を撫でた。


「それじゃ不審者だろ、塾に行くっぽいし、多分あいつは大丈夫じゃないか?恐らくあやかしの狙いは、フウカだからな。一度襲って、またすぐにとはならないだろ」


ナツメは人の姿から猫になりながら言う。この方が楽なのだろう。純太がいた手前、人の姿を保っていたようだ。


「それは、フウカさんに力を使わせる為ですか?」

「だろうね、だから、なずなを狙ったんだ」

「どうして?」

「フウカに近くて、一番弱い。それでいて女だから」

「え?」

「ナッちゃん、まだ分からないでしょ」


マリンに窘められ、ナツメは罰が悪そうに、ごめんと呟いた。


「フウカ、大丈夫かな」


なずなを見上げ、ハクは再び心配そうな表情を浮かべた。なずなは、そっと笑んで、ハクの頭を撫でながら頷いた。


「大丈夫だよ、きっと」


しかし、そう言葉にしながら、なずなは落ち着かない気持ちを隠せなかった。





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