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6. お茶会5



翌日、なずなは皆を集めて、密かに胸に秘めていた、とある提案を持ち出した。



このアパートの住人達が人と交流を持つ為には、自ら出向くのではなく、こちらに引き込む方が手っ取り早いと、なずなは考えた。


ギンジは人の集まる場所には行きたがらないし、ナツメも普段から人目を浴びる仕事をしている為か、プライベートで人への関わり方は消極的だ。ハクは傷つけられたばかりだし、春風(はるかぜ)は面倒くさがりだ。フウカも何か抱えているようだし、ならば、このアパートに人を呼べばどうだろう、マリンは保護対象だとミオが言っていたが、春風の力で安全な場所を作れないだろうか、ここは春風のアパートだ、危険を最小限に抑える事も出来るのではないだろうか。


それに、幸いこのアパートは、以前はレストランだった。なずなはここで、一日限定のレストランを開く提案をした。


日にちは決まっている。一月後の町内イベントだ。そのイベントでは、様々な店舗や民家が参加して、スタンプラリーを行う事になっている。集めたスタンプの数によって、様々な商品が貰えるらしい。豪華な商品はないが、このイベントの醍醐味は、町民達の交流、ご近所付き合いを深める事だ。


スタンプ設置の権利は、販売や催しを披露出来れば、誰でも自由に参加出来る。なずなは早速町内会に出向き、参加店舗として登録してきた。

メゾン・ド・モナコと聞き、町内会の面々は驚きと共に訝しむ表情を浮かべていたが、なずなは笑顔で押しきり、参加権利をもぎ取った。


聞けば、民家で催しを開く人の中には、お手製のお菓子や料理を振る舞う人もいるという。

ただ、場所が住宅街から少し離れているので、人が集まってくれるか心配だが、まずご近所付き合いを目標とするなら、それこそ腕の見せ所だろう。スタンプラリー目的で、ちらっとでも立ち寄ってくれればいい、そうすれば、ここがお化け屋敷じゃない事を分かって貰える筈だ。


「フウカさんの料理があれば、何とかなると思うんです!それに、広い庭があるし、そこでもイベントとか!ほら、春風さんの本も沢山ありますし、販売が無理なら貸出とか、図書館みたいな!昨日みたいに、シートを敷いて読めるようにしたりとか。あ、ギンジさんのお花アレンジ教室とか!」

「は?」

「もし可能なら、ナツメ君の握手会とか!」

「事務所NG」

「でもどうでしょう?これなら、積極的に人と関わろうという姿勢を感じて貰えるんじゃないでしょうか。最悪、一人二人しか来なくても、町内のイベントに参加してるし、努力は認めて貰えると思うんですが…!」


皆を集めたダイニングで、なずなは拳を握りながら熱弁を振るった。ギンジとナツメは早速顔を顰め、キッチンでコーヒーを用意していたフウカとハクは、互いに困惑した表情を浮かべている。

そんな中、なずなに賛同の意思を示してくれたのは、マリンだった。


「ふふ、楽しそうだから、私はやってみたいわ」

「マリリンさん…!」

「待て待て!ここに人を呼ぶんだぞ!?」


なずなが感動して立ち上がれば、同じタイミングでナツメが抗議に立ち上がった。


「一日だけですから!」

「つってもさー…」


ナツメは脱力しながら椅子に戻ったが、すぐさまはっとした様子で顔を上げた。


「てかさ!マリンの事もあるし、危なくねぇの?」

「まぁ…マリン君には、必ず誰かが側にいるって決めておけば、最悪の事にはならないだろうけど…最近落ち着いてるしね」


春風の言葉に、ナツメは頭を抱えた。なずなは、ぐっと拳を握った。


「マジか…俺、猫のままでもいい?参加したくねぇんだけど」

「あ、猫カフェも出来ますね!」

「却下!なんで人間に撫でくり回されなきゃならないんだよ!」

「おや?撫でるとゴロゴロいっちゃうくせにー」

「う、うるせぇ!」


春風の暴露に、ナツメは真っ赤になって、今度こそテーブルに突っ伏した。


「春風さん、あまりからかうのは良くないですよ」


フウカは困った様子ながら、珈琲を配ってくれる。その後ろで、ハクもジュースを持って席に向かった。



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