6. お茶会4
頭を下げたなずなに、ミオはきょとんとして、次第に力なく表情を緩めた。
リビングにのしかかる重い空気が、なずなの言葉によって徐々に晴れていくようだった。人であるなずなが、あやかしを受け入れてくれる、協力してくれる、あやかしの皆にとってそれは、大きな事だったのかもしれない。皆を見渡せば、ちゃんと顔を上げている。ミオはそっと肩を落とした。
「心強いよ、ありがとう。俺も出来る事はします。皆さんも、なずなさんを見習って下さいよ。あやかしの為に動いてくれる人もいるんですからね」
「そうね、なずちゃんがその気なら、私も一肌脱いで、」
「あなたはほどほどで構いませんから、マリンさんは保護されているのをお忘れなく」
「もう、いけずね…」
「なんとでも。では、そろそろ失礼します。ナオ、仕事に戻ろう」
「はーい」
さて、お開きだと動き出す面々を横目に、ミオはなずなに声を掛けた。
「ハク君は二階ですか?」
「はい、部屋にいると思います」
「ちょっといいですか?行っても」
「はい!お願いします!」
なずなは思わず顔を綻ばせた。ハクはミオに憧れを抱いている、会えばきっと元気が出る筈だ。
ミオはなずなに笑んで、二階に上がった。
「最近のガキんちょは容赦ないよねー」
ミオを見送るなずなの隣で、ナオが言った。
「ミオもさ、苦労して今の地位まで上がってきたんだ。自由になる為にさ。ハクも大変だと思うけど、負けないで欲しいなー」
「お二人は仲良いんですね」
「ふふ、幼なじみなんだー。皆、ミオの翼を白くて不吉って言ってたけど、僕にはミオの翼が天使みたいでキレイだって思ったんだ。僕は猫だからヤタの気持ちは分からないけど、色が違ったって、仲間じゃんって思う。ミオはそれを、自分の力で証明させちゃったんだ、凄いよね」
純粋に無邪気に笑うナオ。彼が隣で笑ってくれるだけで、ミオは十分支えられていたのではないだろうか。なずなもつられるように頬を緩めた。
「素敵な関係ですね」
「はは、ミオにはお世話になってるけどね」
苦笑うナオになずなは微笑み、階段の上を見上げた。ハクが少しでも元気になってくれるよう願って。
*
「ハク君、ちょっといい?」
ミオが部屋をノックして声を掛けると、慌てた様子でドアが開いた。
「ミ、ミオ様!」
その目は赤くなっていて、ミオは困ったように笑ってその髪を撫でた。
「大丈夫かい?」
「…はい」
「無理しなくていいよ、まったく言ってくれるよね。こんなにキレイな色なのに」
しゃがんで目を合わせながら、ぽんと頭を撫でられれば、ハクの瞳からは、ぽろぽろと涙が零れていく。
「大丈夫、俺はハク君の事が大好きだよ、このアパートの皆もだ。皆、ちゃんと分かってる、ハク君の事。ハク君は何も悪くないよ」
大丈夫、大丈夫と繰り返しながら、ミオはハクの涙がおさまるまで、その小さな体を抱き締めていた。




