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メゾン・ド・モナコ  作者: 茶野森かのこ


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6. お茶会1


***


それから数日が過ぎても、火の玉の真犯人はまだ動きを見せなかった。ハクのお礼を伝えよう作戦も未だ決行に至らず、なずなはもどかしい思いを募らせていた。


そんななずなの思いとは裏腹に、今日も良い天気だ。足の傷もほとんど癒え、庭の雑草の除去も済んだ。なずなが見晴らしのよくなった庭を掃除していると、ふと庭の片隅にある、倉庫が目に止まった。倉庫というが、小屋といった方が良いだろうか。

勿論、あるのは知っていたが、生い茂る雑草のおかげで、今まで半分位しか見えていなかったのだ。辺りがすっきりしたお陰で、倉庫の存在感が増したように感じられる。


「そういえば春風(はるかぜ)さん、あれは倉庫なんですよね、何が入ってるんですか?」

「あー、あれは適当に物を詰め込んでるだけだよ」


縁側で寝そべって新聞を広げていた春風は、ふと思い至った様子で、のんびりと起き上がった。


「そうだ、たまには空気の入れ替えをしておかないとね」


倉庫を開けるのかと、好奇心に駈られてついて行くと、ギシギシと錆びた音を響かせ、途中突っかかりながらもガラス戸が開いた。その戸の開く動きに合わせ、埃が風に乗って沸き上がるものだから、なずなは思わず噎せてしまった。


半分涙目になりながら中を覗くと、そこには、本を中心としたあらゆる物が、所狭し、いや、ぎっしりと積め込まれていた。


「わ、凄い本の数…なんですか、コレ」

「僕が一応譲り受けたものなんだけど、なんだか興味なくてねぇ」


手前にあった古い本の山から、一冊手に取ってみた。埃で白くなった表紙を手で払う、小説だろうか、中を見ると全て英語だった。


「外国の本だ…」

「わ!もしかして、これ、ホームズの初版本!?」

「え、そうなんで、」


振り返りつつ返事をして、なずなは驚いた。


「ナオさん!?」


そこには、いつもの鹿討ち帽とホームズルックに身を包んだナオがいた。


「久しぶり、なずな。元気だった?」

「は、はい、びっくりしました」

「やぁ、何か分かったのかい?」


春風の問いかけに、ナオは「うーん」と渋い声を出しながらも、瞳はキラキラと輝かせながら、なずなから本を受け取った。表紙を大事そうに眺めながら、ナオは口を開く。


「この間捕まえた火の玉男は、本当に何も知らなかったみたい。でもね、手掛かりはゼロじゃないよ、火の玉男が受け取った指示書のインク。多分、火鳥(かちょう)の巣のものじゃないかって」

「かちょう?」

「火の鳥の国の事をそう呼ぶんだ」

「え、フウカさんの国?どうして分かるんですか?」

「あの国はね、不思議な火の花からインクを作ってるんだ。特別なインクだから、あやかしの世では有名なんだよ。調べたら、指示書のインクから、火の花と同じ成分が出てきた」

「…そう、」


春風は難しい顔つきで頷いた。ナオは困った様子で眉を下げ、春風を見上げる。


「この事、他の子には内緒にしておいてね。犯人が火鳥の巣の者か分からないし、フウカが気にするといけないもん。それに、わざと火の花のインクを使ってるかもしれないしね」

「だとしたら浅はかだね…フウカ君を犯人に仕立てたいのか」

「もしそうなら、目星もつけやすいんだけどねー。まだ分からないけど、その方向でも調べてるよ。そっちは進展あった?」

「まだないな」

「あ、でも聞いたよ!ひったくり捕まえたんでしょ?お手柄じゃん!他のあやかし達も、アレレ?って顔してたよ」

「おや、良い傾向?」

「良い傾向!この調子でよろしくね!なずなも大変だと思うけど、僕達も頑張るからさ!」

「はい、ありがとうございます」

「うん!あ、ねぇ春風さん、これ見てっても良い?」

「どうぞごゆっくり~」

「ふふ、お茶用意してきましょうか」


春風がのんびりと倉庫の物を出していくと、ナオは嬉しそうに本を眺め、他にも何かお宝はないかと、キョロキョロと倉庫の中を探っている。なずなが倉庫から離れると、ちょうどフウカが帰って来たところだった。


「お帰りなさい!早かったですね」

「はい、今日は店長が、出張調理の仕事があるそうで」

「出張調理?」

「お得意さんのお宅で、パーティーがあるそうなんです。店長、レストランやカフェでも働いてたらしくて、その時お世話になった方だそうですよ。本格的な料理人として呼ばれたみたいです」

「へぇ、だからサンドイッチも、人が並ぶほど美味しいんですね」


フウカは頷きながら、そうだと、なずなに紙袋を差し出した。中央にサンドイッチのイラストがあり、それを円で囲うように“シノさんの店”と書いてある。

なずなは、そのロゴを見てパッと表情を輝かせた。フウカが勤めるキッチンカーの名前だ。


「これは遅くなりましたけど、お土産です」

「わ!サンドイッチ…!ありがとうございます!うわ、いっぱいある…楽しみ…!」

「良かった」


ほっとした様子で微笑むフウカ、そんな二人の様子を、縁側からハクとマリンがこっそり覗いている。


「今、ナオさんも来てるんですよ、皆でおやつに食べましょう!お茶いれてきます」


なずながそう声を掛けると、様子を見ていたマリンとハクも顔を見合せて微笑みあった。




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