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5. なずなのミッション6


「…僕、人の子に優しくされたの初めてだった。そのハンカチ返して、お、お礼言いたくて」

「そうだったんだ…でも、狸の姿で会ってたなら、お礼を言うのも難しいですね」

「まず、その子かどうかも確かめないと。確かめたら、僕が返してあげようか?」


フウカの問いに、ハクは少し考えてから、首を振った。


「…自分で、お礼言いたい」


きゅっと手を握りしめながら、しっかりと自分の意思を口にしたハクに、なずなは嬉しそうに表情を綻ばせた。


「じゃあ、今度声かけてみようか。もしかして、僕の狸を助けてくれたのはあなたですか?って」


ハクは、ぱっと表情を明るめてなずなを見上げると、うん、と元気良く頷いた。


「こういう言い方なら…、問題ないですよね」


なずなが少し躊躇いつつもフウカに尋ねると、フウカはどこか表情を曇らせていたが、それでも、そっと表情を緩めてくれた。そこには、先程のような壁は感じられず、いつものように会話が出来ていることに、なずなはほっとした。


「ハクが望むなら、僕は反対しないよ」


ぽん、と頭を撫でられて、ハクは安心した様子で頷くと、パタパタと自室へ駆けて行った。だが、なずなには一つ心配な事があった。


「あの、フウカさん、あの子の友達が、ここをお化けアパートだって言ってて、私もお化け扱いされたので、ハク君が傷つかないか、その心配もあるんですが…」

「まぁ、そうですよね…僕はすっかり慣れてしまいましたが。ここは噂の的ですから」


苦笑うフウカに、なずなは心配になる。


「何か言われたりしましたか?」

「あの人、アパートから出てきたけど普通の人だよね、という疑念の眼差しを」


フウカ自身はどうみても人間だし、素敵な人ねと目で追っていたら、お化けアパートに入って行ったので驚いた、というパターンもありそうだ。近所の人達にとっては、ここの住人よりも、この建物自体が不気味で、お化けのような認識なのかもしれない。


「でも、あながち間違いではないですからね。

僕らが異質なのは本当ですから」


笑って言うフウカに、なずなは何故そんな風に言うのかと、悲しくなる。

確かにフウカ達は人間じゃない、人間から見たらあやかしは異質かもしれない。でも、そう思うのはあやかしを知らないからだ。あやかしを知り、フウカ達を知るなずなには、フウカ達が異質だなんて思えない。

フウカとなずなの違いなんて、人種の違いのようなものだ、なずながそう思いたいだけかもしれないが、それでも。


「フウカさん達は、異質じゃないですよ。あやかしとはいえ、一緒の世界で暮らしてる、人と同じじゃないですか」

「…そうですね」


フウカの言葉が、表情が、またなずなを寂しくさせる。

あなたと僕は違う、そんな風に言われているような気がして、引かれた一線が、越えられない壁のような気がして、なずなはただ悲しかった。





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