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メゾン・ド・モナコ  作者: 茶野森かのこ


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11. それから4


「その、今はまだ、怖いので、」


言いながら、少しだけ震える手に気づき、なずなはそっとその手を握り返した。グローブ越しでもちゃんと気持ちが届けられる事を、フウカに教えて貰ったようだった。このグローブは、壁なんかではない。


「…はい、私はここにいますから、いつだって」


そう顔を上げれば、フウカはほっとした様子で微笑んだ。なずながこのアパートに来た時、なずなはフウカに頼ってばかりいたけど、今は少しでもそのお返しが出来ているのだろうか。

もし、フウカの頼りになれていたら。恋する思いがそっと顔を覗かせるが、なずなはそれを押し込んで、そっと微笑み返した。

フウカが頼ってくれるなら、それだけでとても嬉しい。


「お前ら!いつまでいちゃついてんだよ!」


ナツメの声が飛んできて、二人は慌てて手を離した。


「い、いちゃついてませんから!」

「あらあら、赤くなっちゃって可愛いのね」

「まぁ、フウカ君の不安は、なずな君が引き受けてくれるんだから、良しとしようじゃない」

「ちょっと、春風さん!」

「だって君がいると、フウカ君は安心するみたいじゃない」


そんな勝手な事言ってと、なずなは春風に抗議しかけたが、ふと隣を見れば、赤くなったまま顔を背けるフウカがいる。


「…ま、また人の事をからかって…」


そんな様子を見てしまったら、なずなはまた顔を熱くして、あたふたしてしまった。


そんな二人を見て、ハクが心配になったのか、なずなの元に駆けて来た。


「…なずな、フウカ、具合悪い?」

「え?だ、大丈夫だよ、元気元気!ね、フウカさん!」

「は、はい!心配かけてごめんね、ハク」

「ううん、良かった」


ほっとした様子で笑うハクに、皆の心も自然と和らいでいくようだ。


「ほら、さっさとお前らもこっちに来い」


ギンジの言葉に顔を上げ、ハクに手を引かれながら、フウカは皆の和に戻っていく。




まだ先の事はわからないけれど、ここに来て皆に会えて、無駄な日々なんてない、どんな時もきっと、前を向ける時がくる。そんな事を気づかせてくれた。


ここに来れて良かった。


なずなはそっと心を緩め、それにと、フウカの背中を見上げる。

いつかフウカと、グローブを脱いだ手を繋げる日がくるだろうか。

来たらいいな。


胸の高鳴りをそっと抑え、なずなは再び賑やかな仲間達の話に加わった。




笑顔の咲くメゾン・ド・モナコ、お化け屋敷と呼ばれたこの場所が、その神隠しを解き、町の憩いの場所となるのは、もう少し先のこと。








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