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メゾン・ド・モナコ  作者: 茶野森かのこ


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11. それから1


***



町内会のイベントは大成功の内に幕を閉じ、それから数日後、なずなは自身で借りていたアパートを引き払い、正式に、メゾン・ド・モナコの住人となった。仕事内容も変わらず、いつも通りの日々を過ごしている。


ただ、少しだけ変化があったのは、フウカとの関係だろうか。二人並んでキッチンに立つのもそわそわと落ち着かず、たまに腕同士が当たれば、二人して赤くなって慌てている。

明らかに、フウカの気持ちも以前と比べて変化しているようだが、それに気づかないのはなずなだけだ。

マリンと春風(はるかぜ)は、時折その様子を面白がって眺めているが、ギンジとナツメに関しては、そんな事より早く飯を作れと半ば呆れている様子。


ただ、フウカのグローブは、まだはめられたままだ。一度染み込んだ恐怖は、誰が許したって簡単に拭いとれるものではない。それでも、徐々にでも恐怖心を慣らしていく為か、アパート内では時折グローブを外して過ごしているようだ。

だが、それはなずなが側に居ない時の話で、なずなが側にいる時は、すぐにグローブをはめてしまう。

それを見ると、なずなは少し落ち込んでしまう。フウカはアパートにいてほしいと言ってくれたけど、もしかしたら、フウカにとって自分は枷になっているのではと、なずなは少なからず不安を覚えていた。



変化といえば、あのイベント以降、アパートがご近所さんから奇異な目で見られる事は少なくなった。

ハクも純太(じゅんた)とすっかり仲良くなり、たまに、純太の友達も交えて、アパートの庭で遊んでる姿を見かける。まだ外に遊びに行くのは怖いようだが、きっとそれも、徐々に恐怖心を克服出来るかもしれない。ハクには、純太という心強い友達ができたのだから。


ギンジも花屋では、すっかり名物店員となっており、花屋の奥さんがやっているフラワーアレンジメントの教室には、毎回参加しているようだ。…もしかしたら、させられている、の間違いかもしれないが。だが、意外と良い奴かもしれないと、あやかし達の意識にも少しずつ変化が起きているという。


マリンとナツメは、相変わらずな日々だ。マリンはご近所さんを虜にし続けているので、少々心配の種だが、ナツメは、時折なずなの曲を聞いて歌ってくれている。アレンジのアドバイスをくれたりもする。こうしていると、楽しくて音楽を奏でていた日々が甦ってくるみたいだった。

なずなの音楽への夢が終わった事に変わりはないが、今は純粋に音楽を楽しめる気持ちを取り戻している。それは、なずなにとって、日々の活力であり癒しである。



**



そんなある日、なずなは、春風と共に祖母のサキに会いに病院に向かった。

ヤヱの手紙の事を、サキに伝える為だ。


ヤヱの手紙の相手は春風だが、まさか本人だと言うわけにもいかず、手紙の相手の親族として、春風が手紙を受け取った事にした。その話を聞かせると、サキは心から安堵した様子だった。

その際、春風がヤヱの話をしたのだが、「ふふ、まるで母と生きていたみたいな話ぶりね」と、サキが笑うので、二人は一瞬ひやりとしたが、まさかヤヱと春風が同じ時代を生きていたとは、サキも思うまい。どうにか笑って誤魔化す事が出来た。


「これで思い残す事はないわ」

「そんな風に言わないでよ。まだまだ元気でいてもらいたいし」

「そうですよ、サキさんにはなずなさんの働く姿も見てもらいたいですし」

「え?」


春風の言葉に、なずなとサキは揃って声を上げた。


「実は、以前ヤヱさんが暮らしていたご実家で、店を開こうと思っていまして」

「え、」


と、固まるのはなずなだ、そんな話、初耳だった。


「ヤヱさんの夢を引き継いで、なずな君にも是非手伝ってもらいたいと」

「まぁ、それは楽しみだわ。どんなお店になるのかしら…!」

「ヤヱさんの思いを出来るだけ叶えられると良いのですが」

「ふふ、それだけ母を気にかけて下さってるんですもの、きっと母も天から喜んでいるわ」


サキは嬉しそうに「それなら、もう少し長生きしなきゃね」と、朗らかに笑った。その顔を見ていたら、さすがになずなも、この場でどういう事だと問い詰める訳にもいかず、少々ひきつった顔で微笑みを浮かべるのみだった。






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