表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/45

今日も寝ている安西さん

「って今日も寝てるじゃん!」


 安西あんざいさんの居酒屋の手伝いをした翌日。無事筋肉痛になり、遅刻ギリギリに登校した俺の隣では今日も安西さんが寝ていた。


「……むにゃむにゃ」


 昨日の親子丼の夢でも見ているんだろう。口もとが小さく動いている。


 あれだけの肉体労働だったんだ。それも毎日、寝ちゃうのは当然だよ。これまでは寝てるくらいにしか思っていなかったけど、昨日の働きぶりを見たからこそ分かる。重たい料理を運んだり、皿やボトルを一度に片付けたり、お会計をしたり、注文を聞いたり、安西さんはあの時間ずっと動き回っていた。


 布団を被せてあげたいけど、学校ではダメだよな。

 それにしても、ほんとに気持ちよさそうに寝てる。


「ふわぁ」


 ヤバい。安西さんを見てたら眠気が。HR始まったばかりだし、あんまり重要なこともないだろう、少しは寝ても問題ないか。昨日の疲れもまだ残ってるし。チャイムが鳴るから先生が来る前には起きれる気がする。


「……おやすみ」


 誰にとは言わない挨拶をして、俺は腕を枕代わりに寝ることした。

 ほんと、何でこのときチャイムで起きられるなんて思っていたんだろう。



 ――斉藤さいとう


「……?」


 誰かに名前を呼ばれた気がする。チャイムはまだ鳴っていないから、そんなに時間は経っていないはずなんだけど。もしかして、授業始まってた? だとしても一限は国語の山口先生なはずだし、寝ていたい。


「――斉藤、起きなさい!」


 あれ? なぜか鷹先の声が聞こえた気が。数学の授業は二限だし、そんなこと――


「……え?」


 少しだけ体を起こして教室を確認したら、クラスメイトが全員こっちを見ていた。

 あれ? 今って国語の時間だよね。そんな一時間も寝てるはずが――


「おはようさん。よく眠れたか?」

「……おはようございます。鷹崎先生」


 そっと隣を確認する。そこには安西さんではなく、鷹先がこっちをずっと睨んでいた。


「寝ていたってことは、黒板の問題分かるよな」

「……えっと」


 ……やってしまった。どうするこの状況。

 黒板にはぎっしりと数式や図形が書かれていて、どの問題なのかすらわからない。机の上には当然、教科書やノートどころか筆箱すら置いていなかった。


 あてずっぽで答えてみるか? いやそんなことできるはずがない。こうなったら隣の子に聞くしか。安西さんは――


「――って、寝てる」


 鷹先の横から少しだけ見えた安西さんは、朝と同じ体勢でぐっすりお休み中だった。この状況で、何で寝ていられるの?


「……えっと」


 ――斉藤も寝てたのかよ。

 ――あいつ一時間目からずっとだぜ。


 そんな笑い声がどこからか聞こえてくる。

 ああもう。どうだってなれ!


「3xの――」


 キーンコーンカーンコーン。


 あれ、チャイムが鳴った?


「よし今日の授業はここでおしまいだ。斉藤、次の授業のときに当てるから、しっかり答えられるようにな」


 そう言って、起立礼の挨拶も行わず、鷹先は教室を出ていった。

 ひとまずは助かったけど、二時間くらい寝てたとは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ