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定期考査再び

「一週間後は、期末テストだからな。気持ちを切り替えてテストに臨むように」


体育祭があった3日後、俺たちの学校では期末考査の範囲が発表された。前回よりも範囲と教科が増え、体育祭の熱が冷めていない中での発表だったからだろう。クラスメイトたちは一気に現実に戻されて項垂れていた。


「今回も斉藤は自信ありそうか?」


 HRが終わり、鷹先が教室から出ていく。次の授業の教科書を鞄から出そうとしたところで、前の席の立橋たてはし君が振り返ってきた。


「……いや、今回は俺も無理そう。範囲が多すぎる」


 前回の中間考査は教科書15ページくらいと少なかったが、プリントに書かれてある各教科の範囲はどれも、前回の倍以上。安西さんとの勉強会は続けているけれど、中間考査ほどの高得点は難しいかもしれない。保健体育や家庭科などの教科も増えているから、余計にそう感じてしまう。


「……クラス2位がこうって言ってるなら無理だよな。前回、クラス1位だった天江あまえさんは余裕そうだけど」


 教卓の前では、天江がクラスメイト達の問題に答えだけを返していた。


「あいつは昔から勉強だけは得意だったから、参考にしない方がいいぞ」

「じゃあ、前回の3位か」

「前回の3位って今は――」


きっと寝ているよな。安西さんの中間考査の学年順位は25位。クラスの順位は3位だった。この時間はいつも寝ているから、立橋が参考にできるものなんて少ないはずだ。

 そう思いながら隣を見ると、安西さんは委員長たちに囲まれていた。


『安西さん、ここ教えて!』

「そこは、こっちに代入したらよくって」

『安西さん、こっちの問題が分からないんだけど』

「そこはこっちを公式に当てはめて」


 400メートルリレーで一緒に走った委員長たちとよく話をするようになったのは知ってたけど、まさかこの時間も起きているなんて。今日は朝から寝ているところを見ていないし、どうしたんだろうか。


「眠り姫じゃなくなりつつあるな」

「……そうだな」

「何か知らないのか? 斉藤だったら知ってるもんだと思ってたけど」

「何でそう思うんだよ。……知らないよ」


安西さんと話をするようになって2か月経ったが、居酒屋でバイトしているときも、勉強会をしているときもいつもどおりだ。変わったことなんて――


 キーンコーンカーンコーン。


「悪い、斉藤、話し過ぎた。次の授業の英語って小テストあったよな」

「いや、別にいいよ」

「じゃあ、俺、テスト勉強しないとヤバいから」


 そう言って、立橋君は身体を前に向き直し、鞄から単語帳を取り出していた。

 俺も勉強しないとな。

 鞄から単語帳や教科書を取り出す。その瞬間、ちらっと見えた隣の席では安西さんが机に突っ伏していた。

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